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他サイトで330万PV突破! 無能と蔑まれた能力値1の転生した元社畜のオッサンが、地球知識で爆鳴魔法を編み出し、常識を変える!  作者: だい


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第46話:結界の境界と対魔法具攻略法

 ひどい揺れと、血と薬草の混ざった饐えた匂いで目が覚めた。

 視界がぼやけている。見慣れない幌の天井だ。腹部には焼け付くような痛みがあるが、自分の内臓がこぼれ落ちていないことだけは感覚でわかった。


「……ケント! 気がついたかい?!」


 すぐ横から、シャルの焦ったような声が降ってきた。

 首だけを動かして見ると、目の下に隈を作ったシャルと、御者台から顔を覗き込む朧の姿があった。馬車の中らしい。


「……ここは? どのくらい寝てた」

「丸二日だよ。もう帝国の追手は振り切って、マセック国の国境を越えたところだ。もう少しでノキアの領土に入るところさ」


 二日か。俺は腹の傷口を探る。分厚い包帯が巻かれ、何かの薬草が塗り込まれていた。


「アタシが持ってた最高級の傷薬と、シャルの坊やの応急処置のおかげだよ。……と言いたいところだけどね、あんたのそのデタラメな治癒力は何だい。意識を失った後も、ずっと体の中で魔力が循環して、傷口を無理やり塞いで血を止めてたんだよ?今じゃアタシの方が重症になっちまったねえ」


 朧が呆れたように言う。無意識下でも『インナーバフ』が生命維持のために働き続けていたのか…。便利な体になったな。

 俺は痛みに顔を顰めながら、ゆっくりと上体を起こす。


「シャル、起きていきなりなんだがな、あの『魔法封じの魔道具』、厄介すぎるぞ」

「うん……」


 シャルの表情が暗く沈む。


「お互い魔法が届かない状態でも、帝国は火薬兵器使って、一方的に撃ち込まれれば、ノキアの防壁部隊も火魔法部隊も手も足も出ない。十万の軍勢がアレを持っていたら、ノキアはヤバイ」


 絶望的な戦力差。帝国は完全にノキアの弱点を突き、必勝の布陣を敷いている。

 だが、俺は腹の傷を押さえながら、口角を吊り上げた。


「でも、そう悲観したもんでもないさ。気を失う前に、ちょっと考えてたんだよ」

「対抗策があるのかい?」

 朧が目を丸くする。俺は頷いた。


「あの魔道具の結界は、俺の推測が正しければ半径約百メートルだ。その範囲に入った『魔法』を無効化し、霧散させる力がある。ここまではいいな?」

「ああ。だからこちらの魔法攻撃は一切届かない」

「なら、魔法を直接撃ち込まなきゃいい。一つ目は『慣性の法則』だ」


 俺は手の中に小さな石ころを出して放ってみる。


「結界の外、例えば二百メートル先から、風魔法や爆鳴気の爆発力を使って巨大な岩や、無数の鉄くずを撃ち出す。百メートルの境界線を越えた瞬間、推進力だった魔法は消滅するだろう。でもな、すでに速度が乗った岩や鉄くずの重さや速さは、魔法が消えても止まらない。魔法の力を失ったただの物理現象として、そのまま帝国軍の頭上に降り注ぐ」


 シャルの目が、ハッと見開かれた。

「なるほど……魔法そのものではなく、魔法で加速させた物体をぶつけるのか」


「二つ目は、爆鳴気の投射と物理的な着火だ。圧縮した爆鳴気の塊を、魔法の膜で包んで撃ち出す。結界に入った瞬間、圧縮を維持していた魔法の膜は消えるが、高圧のガスは慣性で飛びながら急激に拡散していく。そこへ、結界の外から火矢でも射ち込んでやれば、結界のど真ん中で大爆発を起こせるだろ?」


「そうだよね、ガスだけを奥に放り込んで、火種は外から投げ込めばいいんだ!、敵も火種持ってるだろうしね!」


「そこで三つ目だ。魔道具の効果範囲外からの攻撃法だ。俺のいた世界には目に見えない波を飛ばす機材があったが、分厚い壁や地中では効果が届きにくくなる。あの魔道具が設置された場所からドーム状に魔法を打ち消す結界を作っているなら、地中にはその結界が届きにくいか遮断されるはずだろ?」


 俺は痛む腹を押さえながら、悪どく笑った。


「地中なら魔法が使えるなら、結界の外から敵の地下に爆鳴気を大量に仕込んで、じわじわと浸透させてやる。あとは、魔法が使える『結界の手前』で、導火線みたいに伸ばした爆鳴気に俺が断熱圧縮で点火したら、連鎖的に大爆発を起こすだろ?」


 俺の言葉の先を想像したのか、シャルがゴクリと唾を飲み込んだ。

 魔法を封じられたからといって、ノキアが詰んだわけではない。やりようはいくらでもある。


「……最高だね、ケント。それなら、あいつらの無敵の陣形を正面からも足元からも粉砕できる」

「ああ。だが、実際に試してみないと使い物になるかわからん。……都合のいい実験台がいればいいんだがな」


 馬車が森を抜け、視界が開けた。

 そこは、マセックとノキアの国境線だった。本来ならノキアの兵士が詰めているはずの関所と小さな砦には、すでに黒い軍服を着た帝国軍の先遣隊が陣取っていた。砦の中央の櫓には、周囲の空間を歪ませるような不気味な黒い石――例の魔道具が設置されているのが遠目にも確認できた。


「……誂え向きの実験台がいるな」


 俺は痛む腹を庇いながら馬車を降りた。シャルも弓矢を手に取り、俺の隣に並ぶ。

 砦からおよそ百五十メートルの距離。森の木陰に身を潜め、検証を開始する。


 まずは一つ目、『慣性攻撃』のテストだ。

 能力値1の俺より風魔法の能力値が高いシャルに行って貰う。

 周りから手頃な石収納してもらう。排出と同時に風魔法で砲身の様に石を支えてから後方に極小の爆鳴気を配置し、砲弾の様に砦の壁へ向けて一斉に撃ち出した。


 ヒュンッ!!


 空気を裂く音と共に飛んでいった石の弾は、魔道具の結界(半径百メートル)を越えた瞬間に、纏っていた魔力の光を失った。だが、加速された石はそのままの速度と運動エネルギーを維持し、砦の強固な木壁にバキバキと音を立てて風穴を開けた。

 見張りの帝国兵たちが何事かと騒ぎ始める。


「よし。質量は通るな」


 次は二つ目、『爆鳴気の投射と物理着火』だ。

 両手の間に、爆発しない程度に圧縮した爆鳴気を作り出し、風魔法で砦の上空へと撃ち出した。


 魔法の膜で包まれた高圧ガス弾は、結界に突入した瞬間に膜を失った。

 タガが外れた超高圧のガスは、慣性で飛びながら一気に体積を膨張させ、砦の上空を覆うほどの広範囲に拡散する。


「シャル、今だ!」


 俺の合図と同時に、シャルが先端に火をつけた矢を放つ。

 放物線を描いて結界をすり抜けた火矢は、砦の上空に充満したガス雲のど真ん中に突き刺さった。


 カッ……!!!


 閃光と轟音。上空で強烈な気化爆弾が炸裂し、砦の櫓の上半分が爆炎に包まれて吹き飛んだ。


「上出来だ。……最後は三つ目、『地中浸透からの誘爆』だ」


 俺は地面に両手をつき、土魔法の魔力を地中へと潜らせた。

 表面近くは魔道具の干渉で魔力が散らされる感覚があったが、1メートルを超えた辺りで完全に干渉波が途絶えた。俺の魔力は、安全な地中深くを通って砦の真下まで到達する。


 砦の真下の地中で爆鳴気を大量に生成する。

 上空の爆発にパニックを起こしている帝国兵たちの足元の地面は、すでに爆発性のガスをたっぷりと含んだ状態になっている。


「着火するぞ」


 俺は魔法が使える結界の手前――砦から百メートル強離れた地面の表層で、極小の断熱圧縮を起こして火種を作った。

 バチッ、という小さな発火。

 だがそれは、地中を通じて砦の真下まで繋がった広大な『導火線』への着火だった。


 ズドォォォォォォォンッ!!!!!


 天地を裏返すような、桁違いの大爆発が起きた。

 砦の土台そのものが内側から弾け飛び、強固な防壁も、中にいた帝国軍の先遣隊も、そしてあの厄介な『魔法封じの魔道具』も、すべてが原型を留めない土塊と化して宙を舞った。


 熱風が森の木々を揺らし、俺たちの前髪を吹き上げる。

 跡に残ったのは、黒こげになった巨大なクレーターと、パラパラと降り注ぐ土砂の音だけだった。


「……出来るとは思ってたけど、ちょっと引くな」


 俺は口に入った土埃をペッと吐き出しながら、腹の傷を押さえて立ち上がった。

 十万の軍勢がどれだけ必勝の布陣を敷こうが、抜け道は必ずある。


「すごいよ……本当に、砦が一つ吹き飛んだ」

「何言ってんだ、お前もできるぞ?お前もやれよなシャル」

 

 シャルが信じられないというように呟き、そして、吹っ切れたような笑い声を上げた。


「これなら勝てる。僕たちの国を、取り戻せる!」

「ああ。さっさと帰るぞ。帝国の馬鹿どもに、ふざけた真似したツケを払わせてやらなきゃな」


 俺は低く笑い、シャルと共に馬車へと歩き出した。

 目指すは、戦火の立ち込める祖国ノキア。十万の敵軍が待つ、死地である。

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