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他サイトで300万PV突破! 無能と蔑まれた能力値1の転生した元社畜のオッサンが、地球知識で爆鳴魔法を編み出し、常識を変える!  作者: だい


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第34話:身分なき相棒と、もう一つの世界の記憶




 光が収まり、視界が晴れた時。

 俺と第一王子は、見渡す限りの荒野を貫く、見知らぬ街道のど真ん中に放り出されていた。


 周囲に人の気配はない。太陽の位置も、吹き抜ける風の匂いも、俺たちの知るノキア王国のものとは決定的に違っていた。


「……どうやら、とんでもない所まで飛ばされたようだな」

「はい、殿下。しかし、ご無事で何よりです。この場はどうか俺にお任せください。必ずや王都へとお連れいたします」


 俺が片膝をつき、貴族としての完璧な礼を尽くして告げると、第一王子はどこか呆れたような、それでいて少し嬉しそうなため息を吐いた。


「やめてくれ、ヴォルガン男爵。……いや、ケント」

「殿下?」

「今は王城でもなければ、学園でもない。お前は我が身を挺して私を救ってくれた。ここでは王子と臣下ではない、共に死地を切り抜ける『バディ』だ。殿下と呼ぶのはやめて、名前で呼び合おう」


 突然の提案に、俺は少し戸惑った。


「いえ、しかし……いくらなんでも立場が違います。それに、俺はただの平民上がりの――」

「学園において身分は関係ない。私はそう思って学園に通っている。それに、だ」


 王子は俺の言葉を遮り、真っ直ぐに俺の目を見据えた。


「第二王子の派閥を潰してくれたこと、今でも深く感謝している。本当はあの後すぐにでも会ってみたかったし、私の派閥に誘いたかった。だが、あそこで私がケントを誘えば、他の貴族たちからルミナス侯爵の力が強くなりすぎると警戒され、不要な波風を立てることになる。だから、あえて声をかけられずにいたのだ」


 それは、王国の次期トップとしての高度な政治的判断であり、同時に一人の少年としての苦悩の吐露だった。

 俺の活躍を評価しつつも、侯爵家とバルガス家の立場を守るために距離を置いていた。この男、やはりただの飾りの王族ではない。上に立つ者としての器がデカすぎる。


「お前には借りがある上に、命まで救われた。だから、頼む。身分の壁は無しだ。これからは敬語もやめてくれ」

「……分かりました。でも、殿下の本名をそのまま呼んだら、どこで誰に聞かれて貴人だと怪しまれるか分かりませんよ。……『シャルム』殿下」

「なるほど、確かにそうだな。では『シャル』でどうだ? いかにも平民らしい愛称だろう?」


 王子――シャルムが、悪戯っぽく笑う。

 俺もつられて、ふっと口元を緩めた。


「了解。よろしくな、シャル」

「ああ、頼むぞ、ケント」


 こうして、立場も年齢の垣根も越えた、俺とシャルの対等なバディが誕生した。


「さて、どうするシャル。どっちの方向に街があるかも分からんぞ」

「む……あれを見ろ、ケント。向こうから馬車が来る」


 シャルが指差した地平線の彼方から、土煙を上げて一台の馬車が猛スピードで走ってくるのが見えた。

 かなり立派な装飾の馬車だ。だが、その後方からは明らかに殺気を放つ数十騎の盗賊たちが追走している。


「あの馬車の者に聞けば、情報がわかるかもしれないな」

「いや、事情も分からないのに首を突っ込むのは危険だ。シャルはここで待っててくれ。俺が様子を見てくる」


 俺が腰のミスリル剣に手をかけると、シャルはムッとした顔で俺の肩を叩いた。


「何を言っている。もう相棒だろう? 俺も行く」

「ははっ、違いねえ。じゃあ行くか!」


 俺たちは地を蹴り、迫りくる馬車へと向かって駆け出した。

 御者台にいる男が、前方に現れた俺たちを見て必死に手を振っている。盗賊の伏兵だと勘違いしているのか、それとも助けを求めているのか。


「おい! 助けは要るか!?」


 シャルが剣を掲げ、大きな声で叫んだ。

 だが、御者の口から返ってきたのは、ノキア王国はおろか、旧大陸のどの国の言葉でもない、完全に未知の言語だった。


「なっ……何と言っているんだ? 全く聞き取れんぞ!」


 困惑するシャルの横で、俺の心臓はドクンと激しく跳ね上がった。

 聞き取れないはずがない。

 少し訛ってはいるが、それは間違いなく、前世の俺が四十三年間使い続けてきた言語。


『どけぇっ!! 轢き殺されたいのか!!』


 ――日本語だった。

 なぜ、この異世界で日本語が?

 混乱する思考を強引に押さえつけ、俺は咄嗟に日本語で叫び返した。


『おい! 助けは要るか!?』

『えっ!? あ、ああ!! 助けてくれ!!』


 言葉が通じたことに御者が驚きつつも、悲痛な声で叫び返す。


「シャル! あいつら助けを求めてるぞ! 迎撃だ!」

「言葉が通じたのか!? ……よし、行くぞ!」


 シャルのその言葉を合図に、俺たちは街道の真ん中で、猛スピードで迫りくる盗賊の集団と激突した。

 だが、刃を交えた瞬間に、俺は強烈な違和感を覚えた。


「なっ……こいつら、魔法を飛ばしてきやがる!?」


 シャルが驚愕の声を上げる。

 ノキア王国では火魔法以外は体から離して使えない、というのが魔法学の常識だ。だが、この盗賊たちは風魔法の刃や土魔法の弾丸を、当たり前のように後方から撃ち出してくる。

 さらに、前衛の盗賊たちは明らかに『身体魔法(身体強化)』を使っており、常人を遥かに超える速度とパワーで斬りかかってきた。


「くっ……!」


 俺は座標指定のチートに慣れているから難なく躱せるが、旧大陸の常識で戦ってきたシャルは、予期せぬ遠距離攻撃と強化された身体能力に虚を突かれ、完全にパニックに陥っていた。王族としての基礎能力は高いが、未知の戦法に対する経験値が圧倒的に足りない。


「シャル! 相手は未知の戦法だ、手を抜いてる場合じゃない! 魔法を出し惜しみしないで射出して、火魔法で派手に焼き殺しちゃってくれ!」


 俺は剣を振るい、迫りくる身体強化された盗賊の攻撃を弾きながら叫んだ。


「……分かった!」


 シャルが剣を掲げ、規格外の魔力を込めて火魔法を発動させる。

 圧縮された爆鳴気などではない。王族としての圧倒的な魔力量による、純粋で強力な火の奔流。

 巨大な火球が盗賊の集団の中央に撃ち込まれた。


 ドゴォォォォォンッ!!


 大気を震わす轟音と共に、盗賊の集団の一部が巨大な爆炎に飲み込まれ、消し炭となった。

 王族が放つ純粋な火魔法の威力は、想像を絶していた。盗賊たちが「なんだあの威力は!?」とパニックに陥った隙を、俺が見逃すはずがない。

 俺は視線だけで座標を固定し、殺戮の魔法を展開した。


 迫りくる盗賊の『口の中』に土を生成して呼吸を封じ、『肺の中』に水を満たして陸上で溺死させる。

14歳の少年の姿をした悪魔が、視線一つで相手を合理的に、そして惨たらしく殺していく。さらに、後衛で杖を構える盗賊たちの頭部には直接【極小爆鳴気】を撃ち込み、スイカ割りのように内側から吹き飛ばしていく。


「あ、がっ……!?」

「ひぃっ、頭が破裂……ッ!」


 ものの数分で、数十人いた盗賊たちは、誰一人逃げる間もなく全滅した。

 凄惨な死体の山を前に、俺は剣についた血を払い、ふう、と息を吐き出した。


「よし、片付いたな。……って、あれ?」



 俺が振り返ると、そこにいるはずの馬車の姿はどこにもなかった。

 遠くの地平線に向かって、猛スピードで走り去っていく土煙だけが虚しく見えている。


「……逃げられたな」

「ははっ、見事なまでに置き去りだな。あれだけ派手な魔法を使えば、盗賊よりも危険だと思われても仕方ないだろう」


 呆れ顔で苦笑するシャルに、俺もやれやれと肩をすくめた。

 助けた相手に恐怖されて逃げられる。俺たちらしいと言えば、らしいオチだ。


「まあ、馬車があっちへ走って行ったってことは、そっちに街があるってことだ。とりあえず歩くか」

「そうだな」


 俺たちは剣を鞘に収め、再び荒野の街道を歩き始めた。

 しばらくの無言の後、隣を歩くシャルが、どこか探るような視線を俺に向けてきた。

 戦う前にかわした『相棒』としての会話が、彼の胸の内にあるのだろう。


「……なあ、ケント。さっきの言葉のことなんだけどさ」

 荒野の街道を歩きながら、シャルが不思議そうに問いかけてきた。


 彼は収納から、不思議な文様が刻まれた腕輪を取り出した。

「これ、王家の家宝として伝わる『翻訳のアーティファクト』なんだ。最初から着けておけばよかったんだけど、転移のドタバタですっかり忘れてたよ」


 シャルがカチリと腕輪をはめ、やれやれと肩をすくめる。

「俺はこれがあるから、この地の言葉も理解できるし喋れるようになる。……でもさ、ケントは何も着けてないのに、当たり前みたいに彼らと会話してたよな? 全く聞いたこともない言葉だったけど、なんで話せるんだ?」


 隠し通せる相手じゃない。俺は、どこまでも続く見知らぬ空を見上げながら、静かに告げた。


「……シャル。実は俺、この世界とは別の、『他の世界』で生きていた記憶があるんだ。さっきの連中が喋っていたのは、その世界の言葉なんだよ」

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