表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完結!他サイトで350万PV! 無能と蔑まれた能力値1の転生した元社畜のオッサンが、地球知識で爆鳴魔法を編み出し、常識を変える!  作者: だい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

135/136

第122話:異世界の亡霊と、決別の火葬

 広場に巨大な戦車を出現させ、シンの軍事技術の恐ろしさを突きつけた直後。

 カツナリは顔面を蒼白にしながらも、アマテラスの役人としての務めを果たすべく、震える声で口を開いた。

「し、しかしケント殿。我が国の法律では、いかなる理由であれ奴隷には年季が定められております。一生涯、解放なしというのは……」

 その言葉を聞いた瞬間、俺はひどく冷めた声で吐き捨てた。

「じゃあ、全員殺す」


 室内の温度が、一気に氷点下まで下がったかのように錯覚する。

「別にアマテラスのためにやってやったわけじゃないが、結果的にお前らの国も助かってるのに、ずいぶんとふざけた物言いをする。あと言っておくが、アマテラスで捕虜から技術を抜いたりして自国で利用しようって腹なら、その時はアマテラスも俺の敵だ」

 カツナリの額から、滝のような冷や汗が流れ落ちる。

 俺から放たれる明確な殺気に当てられ、部屋の四隅で護衛に就いていたアマテラスの侍たちが、反射的に腰の刀へと手をかけた。


「へえ」

 その僅かな動きを見逃さず、ザラが獰猛な笑みを浮かべて大剣を肩に担ぎ直す。

「そういや、侍って斬ったことないねえ」

 隣ではセリーナも嬉しそうに微笑みながら、チャキリ、と双剣を鞘から僅かに抜いてみせた。

 一触即発。あと数秒でもあれば、この部屋は肉片と血の海に変わる。


 そんな極限まで張り詰めた空気を、ひどく場違いな、明るい声がぶち壊した。

「そ、そういえばケント殿たちに、いいものを持ってきたんですよ!」

 ノキア王国の精鋭、デックスである。

 彼は慌てた様子で二人の間に割って入ると、収納鞄から黒い『ヘッドセット』のような魔導具を取り出して見せた。

「王家の宝物庫に紛れていた出処不明の品だったんですが、ノキアのオリヴィア女史が使い方を見つけましてね。これを着けるとお互いに話せるようになるんです。壁などがあると聞こえにくくはなりますが、屋外の市街地なら二キロ、見通しが良ければ十キロほど離れていても通話が可能です」


 どうやら、地球で言うところの無線機トランシーバーのような物らしい。

「へー、これがあれば離れていても連携とかしやすいな」

「ええ! 本当はバルゲンでもっと苦戦していると思って、連携用に持ってきたんですが……すっかり終わっていたもので、お渡しするのを忘れておりました」

 苦笑いをして頭を掻くデックスを見つめ、俺はニヤッと口角を上げた。


「そりゃあ、気を遣わせたなあ。……それに、声かけたのも止めようとしてだろ? 相変わらずいい仕事するな、デックス」

「……お恥ずかしい限りで」

 俺が目配せをすると、ザラはつまらなそうに舌打ちをして大剣を下ろし、セリーナも静かに双剣を鞘に収める。

 デックスの機転によって命拾いをしたカツナリたちを冷たく見下ろし、俺は告げた。

「俺が直接アイツらに聞く。収容所を開けろ」

「な、危険ですぞ! 数万の難民が暴動でも起こせば……!」

「危険ねぇ。なんか向かってきた奴等は殺すから大丈夫だろ。さっさと開けてくれ」


 ---


 重い門が開かれ、数万の難民が押し込められた巨大な仮設収容区画へと足を踏み入れる。

 俺は広場の中央に先ほどの戦車を再び顕現させると、その重厚な車体の上に登った。そして、拡声器を出し、区画全体に響き渡る声で告げる。


『全員、外へ出て来い。たとえ寝ていようが叩き起こせ』

 俺の命令に、建物の扉が開き、怯えた顔の難民たちがぞろぞろと広場に集まり始める。

 しかし、すべてが出てきたわけではない。様子見を決め込み、建物の中からこちらの様子を窺っている気配がいくつもあった。

「これで全員か?」

 広場に集まった群衆に問いかけるが、誰一人として返事をしない。


「……では、問題ないな」

 俺は指を鳴らし、広場の端にあった収容棟の一つに座標指定で爆鳴気を生成、起爆した。

 ドガァァァァンッ!!

 鼓膜を破る爆音と共に、巨大な建物が一瞬にして木っ端微塵に吹き飛ぶ。当然、その中に隠れていた数十の『人間だったもの』も、瓦礫と共に赤い飛沫となって空を舞った。


「ぎゃあああああっ!」

「ひ、ひぃぃぃっ!」

 悲鳴と怒号が飛び交う中、俺は拡声器越しに冷酷に言い放つ。

『うるせえな。何なら面倒くせえから、このまま全員殺してやろうか?』

 その一言で、数万の難民が水を打ったように静まり返った。


『なんか勘違いしているようだが、俺は「奴隷なら生かしてやる」と言ったはずだ。出て来いっていう命令すら聞けねえ奴隷は、いらないんだよ』

 俺は足元の戦車をトントンと踵で叩く。

『この中に、技術者やシンの軍属がいたら前に出て来い。もし隠れたり、それを周囲が匿ったりしたら、周りの連中ごとまとめて吹き飛ばす。隣の奴が隠れていたら、ちゃんと「ここに居ます」って教えろよ?』

 俺は、懐中時計を取り出した。

『十分やる。出てこない奴は殺す。隠した奴も殺す。教えた奴は、楽な仕事に配置されるように口を利いてやる』


 その宣言が終わるや否や、難民たちの間で壮絶な身内の売り飛ばし合いが始まった。

「お前、第4部隊の軍属だっただろ!」

「やめて! 主人を突き出さないで!」

「俺はただの街の修理屋だ、技術者なんておこがましい!」

 あちこちで怒号が飛び交い、殴り合いの暴動が起きる。俺は戦車の上でしゃがみ込み、頬杖をつきながらその醜い争いを退屈そうに眺めていた。

 そこへ、ザラとセリーナが歩み寄ってくる。彼女たちの視線の先では、難民に突き出されそうになった軍服の男たちが、逆上して市民を殴りつけていた。


「……せめて往生際くらいは、良くできないもんかねえ」

 呆れたように肩をすくめるザラ。

「上官や国家が無くなった軍人なんて、そんなものよ」

 冷たく言い捨てるセリーナ。


 やがて、十分が経過した。

「さあ、時間だ」

 立ち上がった俺の前には、怯えきった百人弱の技術者や軍属が引きずり出されていた。しかし、群衆の奥ではいまだに小競り合いが続いている。出たくない軍属と、巻き添えを恐れて出て行って欲しい周囲の市民たちとの醜い争いだ。

「さて。前にいる連中以外に、もう居ないって事で良いか?」

 俺が問いかけると、セリーナが無言で歩み出た。彼女が向かったのは、市民と争っている軍服を着た集団である。


「あ、アンタは……!?」

 男たちが悲鳴のような声を上げた。どうやら彼らは、俺たちが五万の正規軍を挽肉にした際、いち早く逃げ出した敗残兵のようだ。

「貴方達も、潔く出来ないの?」

 セリーナが双剣を抜く。

「ま、待ってくれ……ッ!」

 言い訳を聞く耳など、彼女は持ち合わせていない。美しい銀の軌跡が閃き、軍服を着た男たちの首が次々と空を舞う。

「ひ、ひぃぃっ! 逃げろ!」

 蜘蛛の子を散らすように逃げ出した彼らの前に、今度は大剣を持ったザラが立ち塞がった。

「遅いよ」

 重厚な刃が一閃し、真っ二つに両断された死体が広場に転がる。

 それだけではない。二人は小競り合いをしている場所へ次々と突入し、軍服を着ている人間をことごとく殺害していく。さらには、明らかに軍服を着ている者が横に居たのに、黙って隠蔽しようとした周囲の市民たちすらも、まるで雑草を刈り取るようにまとめて細切れにしていった。


 数分後。千人以上の「処理」が完了し、広場には血の海が広がっていた。

「さっさと出てくれば、殺さなかったし周りにも迷惑かけなかったのにな」

 俺は拡声器を下ろし、肉片に塗れた群衆へともう一度問いかける。

「もう居ないか? 次に残ってたら、全員殺すが?」


 静寂の中。

 群衆の奥から、一人の女性がふらりと立ち上がった。

「先生! ダメです!」

「教授、行かないでください!」

 周囲の者たちが必死に止めるのを振り払い、眼鏡をかけた白衣の女性が真っ直ぐにこちらへ歩いてくる。


「アンタは?」

 俺が問うと、彼女は恐れる様子もなく名乗った。

「シン帝国技術省・第二開発部長、ヒロミ・ナガノ」

 ナガノヒロミ。

 その明らかな日本人の響きに、俺の目が僅かに細められる。

 

 俺は、ヒロミと一緒にいた連中を見た。

「お前ら、舐めてんのか? 死ねよ」

 連中を極小の爆鳴気を作って起爆させて四散させた。

 ヒロミは何の感情も無い目でそれを見る。


 俺は彼女に問いかけた。

「……お前は、何を開発したんだ?」

「機銃や戦車。主に軍の近代装備だね」

「お前は、アレがどんな戦場を生み、どれだけの戦死者を出すか理解して作っていたのか?」

「見えない戦場の事まで責任なんて取れないし、そもそもこんな世界はどうでもいい」

 ヒロミは、吐き捨てるように嘲笑った。

「文句があるなら、私を女の体にした上に、こんなクソみたいな世界に飛ばした神様に言うべきだね」


「神、だと?」

「なんでもない。とりあえず、私は役に立つ人間だ」

 彼女は得意げに胸を張り、商談でも持ちかけるように言った。

「どうせなら、ノキアで私に研究させてもらえたら、もっと良い物を作るが? 空を飛べる機械や……君たちみたいな化け物が居なくとも、一発で国を滅ぼせる爆弾とかな。面白いだろ? それを持っていれば、ウルやマセックに気を遣う事も無くなるぞ」


 一発で国を滅ぼす爆弾。

「……飛行機はまだしも、この世界に核兵器はいらん」

 俺の極めて静かな言葉に、ヒロミの表情が凍りついた。

「なッ……!? 君はなぜ、核兵器を知ってい……!」


 言葉を最後まで紡がせる前に、俺は飛び降りる勢いそのままに剣を振り抜き、彼女の胸を深々と貫いていた。

「ガァッ……! な、なぜだ……。私達は、同じじゃないか……ッ」

 口から血を溢れさせ、信じられないという目で俺を見上げるヒロミ。

 俺は彼女の耳元に顔を寄せ、冷酷に、しかし確かな未練を断ち切るように囁いた。


「俺は、日本では松本賢人って名前だった。……だが、今の俺は『ケント』として、この世界で生きていくって決めてる」

 剣を、さらに深くねじ込む。

「お前みたいに、他の世界だからって命をオモチャにして好き勝手する奴は、俺の仲間じゃねえよ」

「あ……う、ぁ……」

 彼女の瞳から急速に光が失われ、その体が力なく崩れ落ちた。


「ケント……」

 一部始終を聞いていたザラとセリーナが、心配そうに俺を見つめている。

 同郷の人間を手にかけても、俺の心は驚くほど凪いでいた。俺の居場所は、日本ではなく、愛する家族のいるこのノキア王国なのだから。

「セリーナ。こいつを燃やしてくれないか」

 俺は背を向けながら、妻にお願いをした。

「俺の居た国じゃ、弔いは火葬だったからな。……クソ野郎だったが、せめて焼いてやってくれ」

「わかったわ」

 セリーナが指先から放った炎が、異世界からの亡霊を優しく包み込み、灰へと変えていく。


 その炎を背にしながら、俺は腰を抜かしているカツナリへ最後の指示を下した。

「じゃあ、前に出た残りの奴らは、くれぐれも他の捕虜と隔離してな。死ぬまで、ただ陽の当たらない場所で肉体労働だけさせておいてくれ」

「は、はい……ッ!」


 アマテラスでのすべての用事を終え、俺たちは踵を返す。

 俺の決意と過去を知っても、何も聞かずに隣を歩いてくれる彼女たち。

 彼女たちと共に、俺たちはついに、シーナが待つノキアへの帰還の途に就いたのだった。

『嘘告のおかげで、最期に彼氏ができました。』夏休み明けに死ぬ予定の私と、嘘だったと泣き崩れる君~さよならのためのアオハルを、君と。

https://ncode.syosetu.com/n6784mp/


今までの作品と毛色が違うのですが、

魔法も無いチートも無い現実の高校生の切ない夏を書いてみました

作者初の恋愛ものです

良ければ読んでやってください

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ