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完結!他サイトで350万PV! 無能と蔑まれた能力値1の転生した元社畜のオッサンが、地球知識で爆鳴魔法を編み出し、常識を変える!  作者: だい


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第121話:国家の火葬と、魔王たちの凱旋

 シン帝国の東端に位置する要塞港湾都市バルゲン。

 数十メートルの高さを誇る堅牢な防壁に囲まれたその巨大都市は、押し寄せた数万の難民と敗残兵を飲み込み、不気味なほどの沈黙を保っていた。


 その巨大な城壁を目指し、俺、セリーナ、ザラ、そして妖精のスーは、血に染まった荒野をゆっくりと歩みを進めている。

 距離が八百メートル、七百メートルと縮まる中、バルゲンからは一切の警告も射撃もない。まるで死に絶えた無人都市のようにも見えるが、俺の索敵魔法は城壁の向こう側で蠢く数万の命の気配を正確に捉えている。


 そして、要塞までの距離がぴったり五百メートルを切った、その瞬間だった。

 沈黙していた巨大な城壁の各所が、一斉に火を噴いた。

「来るぞッ!」

 俺の叫びと同時、空気を引き裂くような凄まじい砲撃音が周囲の空間を埋め尽くす。

 数百の大筒による一斉射撃に留まらず、見たこともない形状の多連装ランチャーから放たれるロケット弾、そして雨霰と降り注ぐ重機関砲の掃射。それらが一寸の狂いもなく、俺たち三人の頭上へと殺到してきた。


「甘いね!」

 ザラが即座に最大出力の絶対障壁を展開し、俺とセリーナもそれに続く。

 だが、着弾の瞬間、俺は背筋に走った悪寒に従い、咄嗟に声を張り上げた。

「ザラ、インナーバフを全開にして踏ん張れ!」

 直後、障壁の表面に直撃した特殊な砲弾が、ベチャリと張り付くように潰れてから起爆した。

 ドゴォォォォォォッ!!

 爆発の炎や破片は障壁で完全に防げている。しかし、その『粘着榴弾』が生み出した強烈な衝撃波だけは、障壁という硬い殻を伝わって内側の空間へと容赦なく響いてきた。


「が、はッ……!?」

「くっ……!」

 インナーバフで肉体を強化していなければ、内臓が破裂して口から撒き散らしていたかもしれない。物理的な盾を透過してダメージを与えてくる対装甲用の近代兵器の前に、俺たちの足が完全に止められてしまう。

 このまま足止めされれば、いずれ魔力が尽きてミンチにされるのは火を見るよりも明らかだ。


「面倒ね、全部吹き飛ばしちゃおっか!」

 セリーナが障壁の中から魔法を放とうとするが、俺は彼女の手を制した。

「待て。障壁に張り付いた榴弾の爆発にタイミングを合わせるぞ。下だ!」

 俺は自分たちの足元――障壁の下の地面に向けて、極大の爆鳴気を生成して起爆させた。

 轟音と共に大地がすり鉢状に吹き飛び、巨大な塹壕が出来上がる。固定する地面を失った俺たちの障壁は、土砂と共にその深い大穴の底へと落下していった。

 上空を凄まじい数の砲弾が飛び交い、地上に着弾しては爆発を繰り返す。しかし、深い穴の底に隠れたことで周囲の土壁が衝撃波を吸収し、障壁の中へと伝わるダメージは完全にシャットアウトされた。


「ふう……危ないところだったな」

 穴の底で土埃を払いながら、俺は深い溜め息をつく。

 ザラは呆れたように上空の爆音を見上げた。

「……アンタ、本当に頭のネジが飛んでるね。自分の足元を吹き飛ばして穴に落ちて避けるなんて、普通の人間は思いつかないよ」

「普通に防いでたら、内臓を揺らされて死んでただろうからな」


 俺は塹壕の縁から僅かに顔を出し、弾幕を張り続ける要塞を冷たい目で見据えた。

「ザラ。これこそが、俺がシン帝国を心の底から怖いと思う所なんだよ」

「……怖い? 何言ってんのさ。たった二人で、この国をここまでボロボロにしておいて」

「ああ、怖いさ。俺たちの奇襲で王都や基地を落とし、指揮系統も混乱の極みにあるはずなのに、こうして俺たちに効果的な反撃ができる兵器と、統率された兵士がまだ残っている」


 頭上を通り過ぎる機関砲の音を聞きながら、俺は言葉を続ける。

「ここへ来る道中にも見ただろ。馬の倍以上の速度で、疲れも知らずに走り続ける鉄の車。普通の魔法や銃弾を弾き返す装甲。そして、一分間に何百発も弾を吐き出す銃。もし、あんな完全武装したシンの正規兵が一万人でもノキアやウルに攻め込んできたら、俺たちの国は簡単に負ける」

 俺の言葉に、ザラも真剣な表情になって黙り込んだ。

「俺やお前だって、今こうして正面切って戦えば、手痛い足止めを食らっている。しかも、これが十年後ならどうだ? 銃も大砲も、あるいは魔法障壁の技術すらも改良されて、俺たちですら太刀打ちできない化け物国家になってる可能性が高い。……だから」


 俺は、立ち上がって手のひらを上空へと向けた。

「今のうちに、勝ち逃げさせてもらう。二度と、立ち上がれないようにな」

 俺が生成するのは、一点につき能力値1の水魔法で生み出せる爆鳴気。

 それを、塹壕の中から空高く打ち上げ、要塞都市バルゲンの真上へと次々に座標指定して落としていく。

 百、五百、千、三千……。一秒間に十回復する魔力に任せて、限界まで圧縮した爆鳴気を上空から雨のように降らせていく。


 そして、放り込んだ爆鳴気の数が六千個を超えた時。

 俺が起爆の合図をするまでもなく、密集しすぎた可燃性ガスの圧力と熱が限界を突破し、自然発火を引き起こした。


 ――世界から、音が消えた。


 圧倒的な純白の閃光。

 遅れて叩きつけられたのは、太陽が落ちてきたかのような超高温と、都市そのものをすり潰す異常な気圧の変化。

 六千個の圧縮爆鳴気が連鎖爆発を起こしたことで生み出された破壊力は、もはや戦略兵器の域に達していた。


 数十メートルの厚みを持つバルゲンの防壁は、まるでビスケットのように砕け散る。

 城壁には、攻撃と防御を交互に行うため、障壁を展開している銃座と、攻撃のために障壁を解除している銃座がペアで配置されていた。

 障壁を解除して発射準備をしていた兵士たちは、数千度の高温と爆風を直接浴びて即死。肉片すら残らず蒸発していく。

 一方、障壁を展開して身を守っていた兵士たちも無事では済まない。障壁そのものは爆炎を防いだものの、絶対の盾ごと凄まじい爆風によって城壁から引き剥がされ、宙を舞う。そして、障壁の内側で暴れ狂う機関砲や大筒の鉄塊に押し潰され、全員が挽肉となって絶命した。


 防壁内にいた一部の兵士たちは、海に面した開口部から爆風と圧力が逃げたことで、辛うじて一命を取り留めた者もいる。

 だが、その海へ向けて噴き出した超高温の爆風が、障壁を持たない民間人たちを容赦なく飲み込んだ。

 船に乗り込もうと港に殺到していた数万の難民、海上に逃げ出していた船団。そのすべてが、逃げ場のない開口部から射出された死の息吹によって、一瞬にして炭化し、煮え滾る海へと沈んでいったのだ。


「……こりゃあ、すげえや」

 土煙が晴れた後、崩壊した都市の惨状を初めて目の当たりにしたザラが、大剣を肩に担ぎながら呟く。

 さらに後方の丘から、望遠鏡でこの光景を見つめていたデックスたちも、蒼白な顔で漏らしていた。

「……彼らと友好関係を築けたハーンは、本当についていたな」と。


 ---


「さあ、行こうか」

 俺の合図で、セリーナとザラが追従する。

 瓦礫の山と化したバルゲン要塞に足を踏み入れると、そこは文字通りの地獄だった。

 全身を焼かれながら微かに息をしている兵士がいれば、俺達が歩きながら首を刎ねて介錯してやる。

 生き残り、未だに障壁を解かずに震えている部隊を見つければ、セリーナとザラが障壁の内側へ『座標指定』で炎と風を発生させ、炙り出す。耐えきれずに障壁から飛び出してきた所を、双剣と大剣が容赦なく細切れにしていった。


 そんな一方的な殺戮の最中。

 炎上する市街地の奥から、こちらへ向かって真っ直ぐに歩いてくる一人の男がいた。

 軍服は焼け焦げ、頭部から血を流しながらも、その足取りはしっかりとしている。片手には、美しい装飾が施された軍刀サーベルが握られていた。


「……悪魔め。貴様、これで満足か!」

 都市防衛司令官であるゼブ大佐は、血を吐くような声で叫んだ。

 彼がサーベルの切っ先で示した先には、炭化した市民の死体が折り重なっている。中には、逃げ遅れた老人や、自らの体を盾にして子供を庇いながら焼かれた母親の残骸もあった。

「我ら軍人が殺されるのは戦の習い。だが、彼らに何の責があったと言うのだ! 答えろ、悪魔!」


 悲痛な叫びに対し、俺はただ冷めた目で司令官を見つめ返した。

「……なあ。いつかお前らがノキアや他国と戦争になった時、前線で戦うのはお前ら軍人だろ?」

「それがどうした!」

「でな。そのお前らが撃つ弾や、食べる糧食。着る服を作り、各地の戦線へと運ぶのは誰だ?」


 俺の問いに、ゼブ大佐がハッとして息を呑む。

「お前……まさか、それが理由か……ッ」

「ムカついたのは事実だ。でもな、お前らみたいな小国は、後方で支える人間が死んだらそれで終わりなんだよ。だから、市民だろうが子供だろうが、シンの人間なら皆殺しにする」

 俺は腰の剣をゆっくりと抜き放ち、彼へ切っ先を向けた。

「自国の子供が一人死ぬくらいなら、俺はこの国の子供を全員殺す。それが、俺の覚悟だ」


「狂っているな、小僧」

 ゼブ大佐の目に、決死の闘志が宿る。

 彼はサーベルを正眼に構え、残された命のすべてを燃やすように踏み込もうとした。

 だが、俺とゼブの間に、ザラがスッと割って入った。


「ザラ」

「ケント。アタシはアンタほど難しい物は考えちゃいないのさ」

 ザラは肩に担いでいた大剣を下ろし、獰猛な笑みを浮かべる。

「ただね、決めてんだよ。旦那の決めたことには、どこまでも付いて行くってね。……ウチの旦那に剣を向けるなら、アタシが黙ってないのさ。来な」


 ゼブ大佐は両手でサーベルの柄を握り込み、地を蹴った。

 軍人としての誇りを懸けた、神速の踏み込み。

 迎え撃つザラは、大剣を上段から躊躇なく振り下ろす。まともに受ければ、サーベルごと体が両断されるであろう一撃。

 しかし、ゼブ大佐は半身を開き、ザラの大剣の『腹』にサーベルの刃を滑らせるように当てて、その暴力的な軌道を完璧に受け流してみせた。


 ガァンッ!

 ザラの大剣が空を切り、石畳を深く穿つ。

 その隙を見逃さず、ゼブ大佐のサーベルがザラの首筋を正確に狙って閃いた。

 見ていた俺とセリーナが、思わず目を見張るほどの見事な技の冴えである。


 ――だが、次の瞬間。

 大地に突き刺さっていたザラの大剣は、刃を返すことも引き抜かれることもなく。

 そのまま、横方向へと『野球のスイング』のように強引に振り抜かれた。


「な……ッ!?」

 刃を返して斬り上げるのでは、到底間に合わない。だからザラは、インナーバフで極限まで強化した筋力に任せ、刺さった大剣を岩盤ごと強引に薙ぎ払ったのだ。

 巨大な鉄塊の腹が、ゼブ大佐の胴体にまともに直撃する。

 ゴシャァッ! という骨が砕ける生々しい音と共に、ゼブ大佐の体は紙屑のように吹き飛ばされ、崩れたレンガの壁に叩きつけられた。


「……ザラの方が、脳筋よねえ」

 セリーナが、呆れたようにぼそっと呟く。

 受け流す技など関係ない。純粋な質量の暴力を前に、ゼブ大佐は受けた方の腕と背骨を完全に砕かれ、口から大量の血を吐いて崩れ落ちた。


 ザラはゆっくりと近づき、動けなくなった彼の首筋に大剣の切っ先を突きつける。

「遺言は?」

 冷酷な問いに、ゼブ大佐は血塗れの口元を歪め、最後の意地を見せるように笑った。

「……お前たちの行先は、地獄だろう。ざまあ見ろ」


 痛烈な呪詛。しかし、ザラはやれやれという顔で肩をすくめた。

「あー、アタシ達の行先なんて、どうでも良いんだよ」

 ザラは背後で並んで立つ俺とセリーナを振り返り、悪党のように嗤う。

「それまで、一緒にいれりゃ上等さ」

「じゃあね」

 短い別れの言葉と共に大剣が一閃し、シン帝国最後の将の首が転がり落ちた。


 ---


 静寂が戻ったバルゲンの廃墟で、俺たち三人は顔を見合わせる。

 そこに、妖精のスーがパタパタと飛んできて、呆れたように告げた。

『……なんか言うのはもう諦めたけどさ。この膨大な数の死体、このままにしとくのは流石にマズくない? 疫病が広がるよ』


「確かにそうだな」

 俺は頷き、愛する妻を振り返る。

「じゃあセリーナ、火災旋風で全部焼いてくれ。あ、ついでにザラにもやり方を教えてやって」

「そうね! じゃあザラ、こっち行きましょう」

「おっ、アタシにもあの大花火ができるのかい?」

 キャッキャと嬉しそうに笑い合いながら、災厄の女帝と狂女神の二人が、廃墟の四方に散っていく。


 やがて、バルゲンの四隅から天を焦がす巨大な炎の竜巻が巻き起こった。

 轟音を立てて空気を吸い込みながら、死体も、瓦礫も、この国が築き上げてきた歴史のすべても、容赦なく灰へと変えていく。

 離れた丘から見守るデックスたちも含め、俺たちは壮絶な火葬をただ静かに見つめ続けていた、翌朝の陽が昇るまで。

 それはシンという国家の完全なる終焉を告げていたのだ。

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