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他サイトで330万PV突破! 無能と蔑まれた能力値1の転生した元社畜のオッサンが、地球知識で爆鳴魔法を編み出し、常識を変える!  作者: だい


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第108話:娯楽の代償と、灰燼に帰す王都

 大広間を満たしていたのは、先ほどまで近衛騎士だったものたちが放つ肉の焼ける異臭と、生き残った者たちの荒い呼吸音だけだった。

 血と灰で汚れた靴底を大理石の床に打ち鳴らし、俺は玉座へと続く赤絨毯の上をゆっくりと歩く。

 玉座の周囲には、豪奢な衣装を身に纏った貴族たちと、顔面を蒼白にして震える王冠を戴く男が固まっていた。


「さて、俺達の身内に手を出したバカな王はどいつだ?」


 俺の極めて平坦な問いかけに対し、沈黙が降りた。恐怖で声も出せないのだろう。

 だが、数秒の後、王の側近らしき初老の貴族が、震える足で一歩前に出た。

「き、貴様、無礼であ……」

 その言葉が最後まで紡がれることはなかった。


 スッ、と。

 俺の隣から踏み込んだセリーナの双剣が、一切の予備動作なく閃いた。

 貴族の首がゴクリと滑り落ち、同時に切断面から青白い炎が噴き上がり、崩れ落ちる胴体を瞬時に消し炭へと変える。

「お前、うるさいよ……」

 セリーナは、冷え切った瞳のまま剣の切っ先に刺さった『燃える首』を、群れる貴族たちの足元へと無造作に放り投げた。

 ボトッ、という鈍い音と共に転がったそれは、恐怖に凍りつく彼らの靴を焦がした。

 広間は再び、水を打ったような静寂に包まれる。


「……おい、おまえさ。俺が『王は誰だ』って聞いたの、聞こえなかったか?」

 俺は首だけになった貴族の残骸を跨ぎ、玉座へと距離を詰める。

 その時、玉座の両脇に控えていた近衛騎士三人が、決死の形相で剣を振り上げ、俺へと斬りかかってきた。

 抜刀すらしない。俺は歩みを止めず、彼らのヘルムの『内側』の座標を指定した。


 ボムッ、ボムッ、ボムッ。


 くぐもった、三つの破裂音。

 鋼鉄のヘルムの隙間から、ドス黒い血と、脳髄と眼球の混ざったペースト状の何かが勢いよく噴き出した。

 頭蓋の内部に直接発生させた高圧の水流と土塊が、彼らの脳を物理的に粉砕したのだ。三人の騎士は振り上げた剣を振り下ろすこともなく、ただの鉄の重りと化して床に沈んだ。


 それでも、玉座の周囲からは返事がない。

 俺はため息をつき、王冠の男の隣でガタガタと震えている、豪奢なドレスを着た中年の女――おそらく王妃だろう――に視線を向けた。

「答えないなら、順番に消すだけだ」

 俺は王妃の子宮周辺に座標を合わせ、極小の指向性爆鳴気を起爆させた。

「ぎゃああああああああっ!!?」

 王妃の下腹部が内側から吹き飛び、ドレスが真っ赤に染まる。彼女は床に転がり、己の破裂した臓腑を掻き毟りながら絶叫した。

「次はアイツな」

 俺が顎でしゃくった先には、失禁して絨毯に水溜まりを作りながら、這いつくばって逃げようとしている十代半ばの少女――王女の姿があった。

 俺の魔力が彼女の頭部に焦準を合わせた瞬間。


「わ、我がシン国王であるッ!!」


 ついに耐えきれなくなった王冠の男が、裏返った悲鳴のような声で叫んだ。

 彼が名乗った途端、俺の横を通り抜けた一陣の風が、玉座へと殺到した。

 セリーナだった。

 彼女は玉座に座る王の胸倉を掴み上げると、右の拳をその顔面へと力任せに叩き込んだ。


 メキャッ!


 鼻骨が砕ける生々しい音が響く。

「あがっ!?」

 悲鳴を上げる王の両腕を、セリーナは迷いなく逆関節にへし折った。

 バキィッ、ゴキッという硬質な音が連鎖し、両腕がだらりと垂れ下がる。

 そこから先は、魔法すら使わない、純粋な暴力だった。セリーナは王を玉座に縛り付けるように押さえ込み、血に染まった拳で、何度も、何度も、何度も顔面を殴り続けた。

「アタシの……! 娘を……!!」

 肉を潰し、骨を砕く音が広間に響き続ける。

 王の顔面はすでに原型を留めておらず、呼吸すらおぼつかなくなっていた。


「ストップ。セリーナ、少し待て」

 死にかける王を見て、俺はセリーナの肩を掴んで引き剥がした。

 セリーナは荒い息を吐きながら、血走った目で俺を泣きそうに睨みつける。

「邪魔しないで……ッ!」

「殺すなとは言ってない。まだだ。誰がどこまで知っててやったのか、情報を引き出してから殺そう」

 俺の極めて事務的な声に、セリーナはギリッと歯を食い縛り、一歩だけ後ろへ下がった。


 俺は、恐怖で壁際に固まっている貴族たちの方を向いた。

「おい、お前らの王様が死にそうだぞ。治療してやれ。情報が聞けなくなる」

 俺の命令に、ひと際偉そうな服を着た初老の貴族が、慌てて文官らしき男に指示を飛ばした。

 文官が震える手で医療鞄を持ち出し、玉座で痙攣する王の治療を始める。


「治療の間に、少し話をしようか」

 俺は指示を出したその偉そうな貴族――王の弟であり、公爵の地位にあるという男の前に立った。

「なぜハーン国を、ギーク人を使って襲わせた。あんな砂漠の奥地に、本国が今さら何の用があったんだ?」

 俺の問いに、王弟公爵は顔面を蒼白にしながらも、必死に言葉を紡いだ。

「ほ、本当なのです! もはやシン国において、ニューヴェ大陸や、古きヴェレツケールに執着を持つ人間など、軍部にも我々の中にも一握りしかおりません! しかし……あそこは自分たちの始まりの地であると主張する派閥を全否定するわけにもいかず、一部の貴族を駐留させ、『時期尚早』とお茶を濁すのがここ何百年の流れだったのです……っ」

「じゃあなぜ、今回に限ってあんな大規模な軍を動かした」

「の、ノキアという未知の軍勢がハーン国と交戦し、双方の国力が著しく低下したと、駐留部隊から報告を受けたからです! ノキアとハーンが親密な同盟関係を築いたなどという報告は……攻撃を仕掛けた後に初めて知ったのです!」

 なるほど、内通者であったダーマー子爵が最後に流した『偽情報』が、見事にこのバカどもの欲を刺激したというわけか。


「じゃあ、狙撃の件はどうだ。魔力を遮断する銃で、遠距離から俺たちを狙ったのは偶然か?」

「そ、それは……『ノキアにいる最高戦力を物理的に排除する計画がある』と、軍部から聞いておりました。それ以上は、本当に……!」

 公爵の言葉に、俺は一つ息を吐いた。

「一つ聞くが、シンの一般市民は、この『奪還作戦』についてどの程度知ってたんだ?」

「し、市民ですか? ……いまニューヴェ大陸で、栄光ある奪還作戦が進行中であると、数日前から新聞等で大々的に報じられております。ですが、彼らにとってハーン国など、遠い御伽話のようなもので……本日の朝刊で『作戦は失敗に終わった』と報じられましたが、市民にとっては、ただの娯楽記事の一つでしか……」


「……そうか」

 俺は小さく呟いた。

 遠い異国の戦争を、血の流れない安全圏から新聞を読みながら娯楽として消費する市民。

 シーナの腹に開いた風穴は、こいつらの『娯楽』の延長線上で引き起こされたものだったのだ。


 その時、王の治療が終わったようだった。

 文官が使っていたのは、試験管のような形状の魔道具だった。対象の身体に押し付けながら魔力を流し込むだけで、超高位の治癒魔法が自動的に発動する仕組みらしい。砕かれた王の顔面が、ある程度まで修復されていた。

「それ、良いな。あるだけよこせ」

 俺は文官の手から魔道具をひったくり、医療鞄の中にあった予備の試験管も含めて、すべて空間魔法の魔導具へと放り込んだ。

 これより強力な治癒魔法を持つ妖精のスーがシーナについている以上、家族の治療に関しては完全に任せてある。これはあくまで、これから俺とセリーナがこの大陸の人間を根絶やしにする過程で、俺たち自身が負傷した時のための「継戦用アイテム」だ。

 これから巨大な街を探しては潰し、軍とも真っ向から衝突する。予備の回復手段はいくらあっても困らない。


「さてと。セリーナ、いいぞ」

 俺が一歩下がると、セリーナは待っていたとばかりに玉座へと歩み寄った。

 顔面の傷が癒え、恐怖で逃げ出そうと床を這う王。

 セリーナの冷たい刃が一閃し、王の左腕が肩から切り落とされた。

「ぎゃあああああっ!!」

 セリーナは王の絶叫を無視し、右足、左足の順に、流れるような動作で切断していく。ダルマと化した王の右手に剣を突き立て、大理石の床に完全に縫い付けた。

 切り口から噴き出す血を、火魔法でジュッと焼き止める。出血死させないための、残酷な止血処理。


「……シーナはね、とってもいい子なんだ」

 セリーナは、床に張り付けられた王の顔を上から覗き込みながら、優しく語りかけた。

 ボクンッ。

 彼女の拳が王の左目を殴り潰し、眼球が破裂する。

「小さなころから優しくて」

 ゴキンッ。

 右の頬骨が陥没し、顔の形が歪む。

「自慢の娘なんだ」

 グチャッ。

 顎の骨が粉砕され、歯が何本も床に飛び散る。

「それが、お前らの国の娯楽のために撃たれた?」

 ドチュッ。

 何度も、何度も。擬音と共に王の頭部がひしゃげていく。

「お前ら指導層だけ殺してやろうと、最初は思ったけどな」

 ベチャッ。

 最後に振り下ろされた両手の一撃で、王の頭蓋骨が完全に砕け散った。

「シンの人間は、皆殺しだ」


 セリーナが立ち上がった時、床に縫い付けられた王の首から上は、潰れたザクロのように原型を失い、完全に無くなっていた。

 返り血で真っ赤に染まった彼女の姿は、まさに復讐の戦女神だった。


「俺も賛成だな」

 目を瞑っていた俺は、ゆっくりと目を開いて口を開いた。

「一般市民には罪がないとか、少しでも思った俺がバカだったよ。新聞見て、人の生き死にを娯楽としてるような奴等は死んでいいだろ」

 俺の言葉に、壁際の貴族たちが絶望に顔を歪めた。

「ま、待て! 我々は――」

「じゃあな」

 俺の冷酷な別れの言葉と同時に、セリーナの極大の火魔法が大広間全体を包み込んだ。

 数十人の貴族たちは、命乞いの言葉を最後まで紡ぐことも許されず、紅蓮の炎に焼かれて炭と化した。


 玉座の間には、もはや生きている者は誰もいない。

 俺とセリーナは、城内に残る目に付いた人間をすべて物理的、あるいは魔法的に「処理」しながら、王城の正面へと歩を進めた。

 王城を出た後も、立ち塞がる兵士を殺し、目に付いた軍事施設や建物を焼き、爆破しながら、俺たちは首都の外縁部へと抜け出した。


 王都を一望できる、切り立った岩山の上。

 眼下には、石造りの立派な建築物が立ち並ぶ、シン国の巨大な首都が広がっている。

 俺は息を吸い込み、自身の魔力の底を確認した。

 幼少期からの修行により、俺の魔力値はすでに一万を優に超えている。そして魔力の自然回復量は、およそ十秒につき10。

 つまり、出力「1」である俺の魔法――極限まで圧縮した指向性爆鳴気(前世の知識で言えば、203ミリ榴弾砲クラスの破壊力を持つ)を、一秒につき10発、魔力切れを起こすことなく『永遠に』撃ち続けることができる。


「始めるぞ」

 俺は眼下の王都の端に座標を指定し、爆鳴気を構築し始めた。

 ズン、ズン、ズン、ズン……!

 一秒間に十発の爆発が、精密な絨毯爆撃となって都市を削り取っていく。

 石の家屋が崩れ、通りが吹き飛び、逃げ惑う人々の姿が爆炎の中に消えていく。

 能力値1の極小の魔法を、極限の圧縮と無限の魔力で連射する、歩く戦略兵器の蹂躙。

 俺はただの作業のように、街の端から端へと照準をスライドさせ、爆鳴気を撃ち込み続けた。


 セリーナは俺の横に立ち、燃え盛る王都を静かな瞳で見下ろしている。


 十分後。

 眼下に広がっていたシン大陸の誇る王都は、すべてが粉砕され、火災と煙が立ち上るだけの完全な瓦礫の山――ただの更地へと変貌していた。

 指導層が全滅し、首都という心臓を完全に破壊されたシン国は、今後間違いなく致命的な混乱に陥るだろう。統治システムは崩壊し、市民の生活は困窮し、治安は最悪の底へと落ちていくはずだ。

 だが、安心しろ。

 遠くから他人の生き死にを楽しんでる奴等は、飢えや暴動で苦しめない。首輪の外れた狂犬と復讐の戦女神が、その前に一匹残らず殺してやる。


「行くぞ、セリーナ。次はどこの街だ?」

「さあね。目に付いたデカい街から順番に、地図から消してやりましょう」

 シーナはデックスやスーたちに完全に任せてある。だからこそ、今の俺たちを縛るものは何一つない。

 軍が立ち塞がろうが、どれだけ巨大な街であろうが関係ない。シン大陸の人間を根絶やしにするまで、俺たちの戦いは終わらない。


 赤く染まる空の下、崩壊した王都の焦げた匂いを肺に吸い込みながら。

 俺たちは一切の後ろ髪を引かれることなく、次なる獲物と殺戮の地を求め、血塗られた荒野へと足を踏み出した。

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