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他サイトで330万PV突破! 無能と蔑まれた能力値1の転生した元社畜のオッサンが、地球知識で爆鳴魔法を編み出し、常識を変える!  作者: だい


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第92話:絶対防壁の死角と、災厄の女帝の怒り

 琥珀色の淡い光を放つ『絶対防壁』を纏った数十人の特殊部隊が、無機質な足音を立てて俺とザラに迫ってくる。

 物理攻撃も魔法の現象も一切通さない、超古代のチートアーティファクト。


「……」

 ザラが真剣な顔つきで大剣を構え、重心を落とす。

 だが、俺はその光景を見ながら、ただひどく冷めた目で「フーン」と鼻を鳴らしただけだった。


「旦那?」

 ザラが訝しげにこちらを窺う。

 俺は答える代わりに、視線を特殊部隊の足元、豪奢な絨毯が敷かれた石造りの床へと向けた。

 王たちにも分かるよう、わざと指を鳴らす。

 展開したのは、極限まで圧縮した『指向性爆鳴気』だ。


「フハハッ! 馬鹿め、所詮は大いなる王の御心も判らぬ蛮族よな! 大いなる守りは足元も抜かりないわ!」

 障壁の中で、特殊部隊の指揮官が勝ち誇ったように嗤った。玉座のバリアの中にいる大王も、愚か者を見るような目で俺を嘲笑している。


 ――ドゴォォォォォォォンッ!!


 床面で起爆した爆鳴気が、凄まじい運動エネルギーとなって解放された。

 だが、その熱と衝撃は、指揮官の言葉通り琥珀色の障壁を貫通することはなかった。

 貫通はしなかったが――物理法則が消滅したわけではない。


「なっ……!?」

 指揮官の嗤いが、驚愕の悲鳴に変わる。

 下からの凄まじい爆発の推進力を受けた『琥珀色の絶対防壁』は、中にいる部隊の兵士たちをすっぽりと包み込んだまま、まるで巨大なボールのように謁見の間の遥か高い天井へと打ち上げられた。俺はそこにさらに下から爆鳴気を当てる。


 ドゴォォン!! と天井に激突し、そのままの勢いで床へと落下して、凄まじい音を立てて激突する。

 バウンドして転がった琥珀色の障壁は、確かに傷一つ付いていなかった。だが、その無敵の球体の中で、激しくシェイクされ、天井と床に全身を打ち付けられた兵士たちは、あちこちの骨を複雑骨折し、半数以上が即死して血の海に沈んでいた。


「なるほどなあ」


 俺が感心したように呟くと、ザラがポカンと口を開けた。


「……どういう事だい、旦那?」

「ん? こりゃあ確かに物理や魔法で作った現象は防ぐみたいだけどな、外から強力な衝撃を与えりゃ、こうしてカプセルごと動くんだよ。普通は床面にも障壁が張られて丸くなってるから、物理的に動かされた事がなかったんだろうけど。爆鳴気で床下から吹き飛ばせば、ああなる。何かで押して崖や建物から落とせば普通に死ぬぞ、これ」


 俺は種明かしをしながら、残りの特殊部隊へと視線を向けた。


「それにな。剣や槍、発動した魔法は弾くけど、帝国の魔封じの魔導具と違って、魔力そのものを遮断するわけじゃないみたいだぞ? だから……」


 俺は残ってるいくつかの障壁の中に『座標指定』を行った。

 外から魔法を当てるのではない。障壁の内側に直接、魔力を送り込んで爆鳴気を生成する。


「俺みたいに障壁の向こう側で魔法を作れる奴からすれば、ただのザルだなあ」


 パンッ、パンッ、パンッ!

 乾いた連続音が響き、琥珀色の障壁の内側で、爆鳴気が炸裂した。当然のように、中にいた兵士たちは吹き飛び、障壁の内側が真っ赤な血と脳漿や内臓でドロドロに塗りつぶされた。

 術者である隊長クラスが死んだのか、あるいは魔石の魔力が尽きたのか、特殊部隊の纏っていた琥珀のバリアが消滅する。


(これと帝国の魔封じを組み合わせれば、シャルやクリスたちの守りは大分固くなるな。良いお土産ができた)

 俺がそんな呑気なことを考えている間に、ザラが生き残って呻いている兵士たちに鼻歌交じりでトドメを刺して回っていた。


 特殊部隊が全滅し、残るは大王たちが引きこもる玉座のバリアのみとなった。

 俺とザラは、死体の山を踏み越えてゆっくりと玉座へ向かう。

 ザラは楽しそうに、バリアの表面を大剣でゴン、ゴンと叩きながら、中で震える大王たちを品定めするように見つめている。


「スー、ちょっと聞きたいんだが」


 俺は肩に乗せた妖精に問いかけた。


「もし爆発で手足を丸ごと吹き飛ばしたら、お前の魔法で治せるか?」

「んー? 無理だと思うよー。剣で斬った跡ならくっつけられると思うけど、爆発だとお肉や骨の部品も足りなくなっちゃうし」

「だろうなあ」


 俺はバリアの中にいる大王や王妃、王子や貴族たちに向かっていった。


「よし、聞いたなお前たち。今から二つの選択肢をやる。一つはさっきの奴らみたいに障壁内で爆発されて手足が永遠に無くなる。もう一つは自分たちで障壁を消して出て来い。そうしたら、好きな手か足を綺麗に刃物で斬り落としてやる。それなら妖精の魔法で治してもらえるぞ。好きな方を選べ」


 そのふざけた二択に、大王たちが信じられないものを見るような目を向けた。


「ま、待て待て! それではどちらにせよ手足を失うか斬られるではないか!」

「ん? 当たり前だろ。俺はお前らに最高にムカついてるんだ。殺されずに生かしてもらうだけありがたく思え」

 

 そして、俺は誰にも聞こえないような小声でボソッと付け足した。


「……まあ、少しの間だけだがな」


 だが、権力のぬるま湯に浸かりきった連中は、自分たちがすでに俎上の鯉であるという現実が受け入れられないらしい。バリアの中で「誰が外に出るか」「貴様が犠牲になれ」と醜い言い争いを始めてしまった。


「あー……めんどくさ」


 俺は待つのをやめ、玉座の足元に特大の指向性爆鳴気を叩き込んだ。

 ドゴォォォンッ!!

 玉座のバリアごと、大王たちが謁見の間の壁へと激突し、そのまま跳ね返ってきて激しくバウンドする。

 大王が天井にしたたかに頭を打って気絶したのか、琥珀の障壁がフッと音を立てて消失した。


「よし、手間が省けた」


 俺は気絶して無防備になった大王の元へ歩み寄り、豪奢な王服をビリビリと乱暴に引き裂いて素っ裸に剥いた。その首から、丁度カード入れのような金属製のケースが下げられているのを発見し、迷わずむしり取る。これが『鍵』のケースだろう。


 その横で、比較的軽傷だった貴族の一人が、這いつくばって逃げようとしていた。

 ザラが大剣を一閃し、その貴族の胴体を真っ二つに両断する。


「ああ、いけないねえ。間違って手足以外を斬っちまったよ、旦那」


 ザラは全く悪びれる様子もなく、カラカラと笑った。


「スー、死んだのは仕方ないが、残りは死なないように適当に治しといてやってくれ」


 俺は妖精に指示を出しつつ、ザラに声をかけた。


「大王にはこのケースの開け方を聞き出さなきゃならないから、俺が貰っとく。あとは全員、約束通り手か足か、希望を聞いてから斬ってやってくれ」


「了解したよ」


 俺が破いた王服の布を使って大王を玉座に縛り付けていると、背後からザラの声が響いた。

 その声のトーンは、いつもの豪快なものとは少し違っていた。ひどく低く、粘り気があり、純粋な殺意が煮詰まったような、獰猛な響きだ。


「……お前ら」


 ザラは血に濡れた大剣を引きずりながら、震え上がる王族や貴族たちを見下ろした。隻眼の奥で、昏い炎が燃え盛っている。


「アタシたちの国を焼いて、奪って、犯して、殺すんだって? アタシらの家を、土足で踏みにじるつもりだったんだって?」


 ザラから漏れ出す尋常ではないプレッシャーに、貴族たちが恐怖で失禁し、声にならない悲鳴を上げる。


「いい度胸だ。……簡単に死ねると思うなよ?」


 地獄の底から響くような宣告。

 ザラはゆっくりと大剣を持ち上げ、冷酷に問いかけた。


「さて、誰から行く? 手か足か、好きな方を選びな」


 当然、誰も答えることなどできない。皆、恐怖のあまり喉が張り付いている。

 返事がないのを見たザラは、「そうかい」と短く呟き、一番近場にいた太った男の右脚の脛を、大剣で唐突に斬り落とした。


「ギャアァァァァァァッ!?」

「スー。こいつら自分の事も決められないバカどもだから、とりあえず逃げないように『全員の脛から下』を落とす。血を流して死にかけた奴だけ、軽く治してやっておくれ」


 その言葉通り、ザラは絶叫が響き渡る中、隣にいた貴族の脛を落とし、さらにその隣の王妃の脛を落とし、次々と流れ作業のように足を切断していく。スーがドン引きしながら、死なない程度の最低限の止血魔法をかけて回る。


 謁見の間は、もはやこの世のものとは思えない阿鼻叫喚の地獄と化した。

 全員の脛を綺麗に落とし終えたザラは、血の海の中で満面の笑みを浮かべ、端で痙攣している男にこう告げた。


「さて、じゃあ手と足、どっちを斬られたい?」


 その場にいた全員の呼吸が止まった。

 大王を縛り終えようとしていた俺も、ザラのあまりセリフに思わず振り向いてしまった。


「えっ……ザラ、今の脛を落としたのは……?」

「だって、さっきのはコイツらが逃げそうだから『仕方なく』切っただけで、本命の手足を落とすのはまだに決まってるだろう? アハハハハッ!」


 ……どうやら、俺の姉御は、俺が思っていた何百倍もブチギレていたらしい。

 愛する者の居場所を脅かされた彼女の怒りは、暴君である俺の理不尽すら軽く凌駕していた。


 背後の惨劇をBGMに、俺は玉座に縛り付けられて、気がついたら目の前で繰り広げられている惨劇を、眼を見開き声もださずに見ていた大王の顔をペチペチと叩いた。

 目の前で繰り広げられる王族や貴族たちの地獄絵図を見て、完全に理性を失い、ヒィヒィと壊れたように泣き出す。


「おい、大王様」


 俺は冷たく微笑みながら、大王の耳元で優しく囁く。


「……なあ。素直にこの鍵のケースの開け方を俺に教えるのと、あっちで楽しそうにしてる『アイツ』に渡されるの……どっちがいい?」


 大いなる王は、もはや尊厳の欠片もない壊れたからくり人形のように、ガクガクと猛烈な勢いで首を縦に振り続けた。

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