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他サイトで330万PV突破! 無能と蔑まれた能力値1の転生した元社畜のオッサンが、地球知識で爆鳴魔法を編み出し、常識を変える!  作者: だい


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第91話:目覚める王女と琥珀の絶対防壁

「俺達の国に喧嘩を売ろうとしたバカの親玉は、てめえで間違いないな?」


 静まり返った謁見の間に、俺の冷たい声が響き渡った。

 玉座にふんぞり返っていた大王は、最初俺が何を言っているのか理解できなかったらしい。呆けたように目を瞬かせた後、その顔を醜く歪め、玉座の肘掛けを強く叩いた。


「無礼者! 大いなる王たる余に向かって何たる口の利き方だ! 近衛兵、その薄汚い平民の首を刎ねよ!」


 大王の号令を受け、謁見の間の壁際に控えていた重装の近衛兵たちが一斉に槍を構え、俺たちを取り囲もうと動く。

 だが、その殺気立った兵士たちの動きを制止したのは、他でもない、俺たちの後ろで震えていたルダだった。


「お、お待ちください父上! その方々に手を出してはなりません!」

 ルダは悲鳴のような声を上げ、両手を広げて俺たちの前に立ち塞がろうとした。

 大王は不愉快そうに鼻を鳴らす。


「ルダよ。ヤーマンの残党相手に恐れをなして気が触れたか? そのような腰抜けのままでは、間近に迫ったヴェレツケールへの行幸――否、輝かしき再征服には連れて行けぬぞ。余の偉大なる覇業を見届ける栄誉を捨てたいと申すか」


 大王のその言葉に、ルダの肩がビクッと跳ねた。

 彼女はこれまで、俺たちの理不尽な暴力を目の当たりにして、ただ恐怖に怯え、精神をすり減らすだけの存在だった。だが、彼女はバカではあっても、悪人ではなかったらしい。

 自国の防衛部隊が一瞬で肉片にされ、近衛兵たちが消し飛ぶ地獄を間近で見てきた彼女だからこそ、ノキアという国がどれほど触れてはならない逆鱗であるかを、そしてノキアにも民がいて国や民に心を砕く王や貴族もいるのだと、この王宮の誰よりも骨の髄まで理解していた。


「父上……ヴェレツケールには、今は別の国が、そこに生きる民がいるのです! 過去の伝承を頼りに交流を求めるならともかく、彼らを武力で一方的に支配するなど……そのような暴挙は絶対に許されません! 我が国は、取り返しのつかない破滅を迎えます!」


 ルダは蒼白な顔のまま、しかし確かな意志を持って、父親である大王に向かって叫んだ。

 その言葉には、これまで彼女が見せたことのない切実さと、国を憂う純粋な響きがあった。


「ほう……」


 俺は少しだけ目を細め、ザラと顔を見合わせた。

 ただ怯えるだけのバカ姫だと思っていたが、どうやら土壇場で少しはマトモな思考回路が繋がったらしい。横に立つデックスも、ルダの予想外の反論に驚愕で目を見開いている。


 だが、そのマトモな言葉は、権力欲と妄想に塗れた愚王の耳には届かなかった。


「おのれ、貴様……大いなる王たるこの余に向かって、そのような戯言を抜かすか!」


 大王の顔が怒りで赤黒く染まり、口角から泡を飛ばして激昂する。


「ヴェレツケールなぞ、我々の偉大なる祖先が一時的に放っておいただけの、ただの収穫地に過ぎん! あそこにある富も、女も、すべては我が王国の正当なる所有物よ! 今こそ全軍を以て乗り込み、王国の為に刈り取り、奪い、犯し尽くしてやるわ!!」


 ……あぁ、そうか。

 俺の中で、何かが完全に冷え切って固まる音がした。

 交渉の余地など、最初から一ミリも存在しなかったのだ。こいつらは、俺の帰る場所を、愛する家族を、ただの略奪の対象としか見ていない。


 俺はゆっくりと息を吐き出し、右手に剣を握り直した。

 隣では、ザラが肩から大剣を下ろし、獲物を前にした獣のように、ギリィッと歯を鳴らして笑っていた。


「……おい、デックス」


 俺は振り返らずに、後ろに立つ百人長に声をかけた。


「そのバカ王女、少しは見所があるらしいから殺さないでおいてやる。お前が責任持って守って、部屋の端で隠れてろ。流れ弾で死んでも文句は聞かんぞ」


 デックスはヤモメで、これまで軍の仕事ばかりで苦労してきたと聞いている。このバカ姫も、デックスの尻に敷かれて少しは世間を学べば、マトモな女になるかもしれない。せいぜい生き残って、こいつの嫁にでもなればいい。


「は、はいっ!! ルダ殿下、こちらへ!」


 デックスは俺の意図を察したのか、即座にルダの腕を掴み、謁見の間の隅の太い柱の陰へと全力で駆け込んだ。


 それを見届けた瞬間。

 俺とザラは、同時に地面を蹴った。


「ハハハハハァッ! 奪い犯し尽くすだって!? やれるもんならやってみな、この毒虫どもがァッ!!」


 ザラの高笑いが豪奢な天井に反響する。

 大剣を真横に薙ぎ払った一撃が、先陣を切って飛び出してきた近衛兵三人を、分厚い鋼の鎧ごと真っぷたつに両断した。内臓と鮮血が赤い弧を描き、純白の絨毯を瞬時に染め上げる。

 さらにザラは、両断されて崩れ落ちる上半身を蹴り飛ばし、背後にいた兵士たちの集団に向けて左手を突き出した。


「削れちまいな!」


 不可視の真空刃が暴風となって吹き荒れ、兵士たちの顔面や鎧の隙間をヤスリのように削り取る。凄惨な悲鳴が上がる間もなく、そこへ火魔法が叩き込まれ、さらに風魔法で爆炎の刃が謁見の間の半分を業火で包み込んだ。

 ザラは炎の中から飛び出してきた騎士の顔面を無造作に片手で掴み上げると、そのまま風魔法を零距離で発動し、頭部そのものをミンチにして吹き飛ばして嗤っている。


「どけ」


 俺もまた、風魔法で滑るように敵陣へと潜り込んでいた。

 右手で剣を一閃し、すれ違いざまに近衛兵の首を狩る。首を失った胴体が血の噴水を上げる中、俺は爆鳴気を槍兵の部隊の真中に作成し間髪入れず爆破する。

 ドゴォォォォォンッ!!

 謁見の間の窓ガラスがすべて粉々に吹き飛び、兵士たちの肉体が四肢をバラバラにされて宙を舞う。

 さらに、背後から斬りかかってきた重装騎士の剣を素手で弾き、その胸板に掌底を叩き込んだ。触れた瞬間にインナーバフの魔力を爆発させ、騎士の胴体に巨大な風穴を開ける。


 王城の最も神聖な場所が、たった二人の暴力によって、ほんの数十秒で血の海と肉片の散乱する屠殺場へと変わった。

 生き残った貴族たちは絶叫して逃げ惑い、次々とザラの魔法の余波で黒焦げになっていく。


「ひぃっ、ば、化け物……っ! なにをしている、貴様ら、防げ! 奴らを近づけるな!!」


 玉座の上で、大王が情けない声を上げて後ずさる。

 俺は邪魔な死体を蹴り除け、血に濡れた剣を提げたまま、ゆっくりと大王が座る玉座の階段へと歩み寄った。


「さて、刈り取るんだろ? ほら、首を差し出せよ」


 俺が玉座へと踏み込んだ、その瞬間だった。

 ――キィィィィンッ!

 耳障りな高周波の音と共に、玉座を中心とした半径十メートルほどの空間に、琥珀色の半透明な障壁がドーム状に展開された。

 大王と、その周囲に逃げ込んでいた数名の王妃や高位貴族たちが、その琥珀色の光の中にすっぽりと包み込まれる。


「チッ、なんだこりゃ」


 後れて飛び込んできたザラが、大剣を全力で振り下ろした。

 鋼鉄をも豆腐のように両断する彼女の一撃が、琥珀色の障壁に激突する。だが、甲高い金属音が響いただけで、大剣は完全に弾き返され、障壁には傷一つ、波紋一つ浮かばなかった。


「効かないねぇ。旦那、魔法はどうだい?」


 ザラの言葉に応じ、俺は左手に高密度の爆鳴気を生成し、障壁の表面に直接叩き込んで起爆させた。

 轟音と爆風が周囲の絨毯を焦がすが、煙が晴れた後には、やはり無傷の琥珀の障壁が展開されたままだった。魔法の威力を減衰させているのではなく、現象そのものを完全に遮断する『完全障壁』だ。


「こりゃ……厄介な『バリア』だなあ」


 俺が舌打ちをすると、障壁の内側で震えていた大王が、攻撃が通じないと理解した途端に卑劣な笑みを浮かべた。


「フハハハッ! 馬鹿め! 古代の遺物たるこの『絶対防壁』の前に、いかなる力も無意味と知れ! 貴様らのような野蛮人に、王の体に触れることなど永遠に叶わぬわ!」


 大王の言葉通り、このバリアはおそらく遺跡から発掘されたアーティファクトの力だ。

 ノキアへ渡るための『鍵』はただの起動キーに過ぎないが、この国には防衛用の遺物がまだ残されていたらしい。ヤーマン族が最大戦力を持ちながらも王都を落とせなかった理由、そして大王がこれほどまでに強気でノキア侵攻を企てられた最大の理由が、この無敵のアーティファクトの存在だったのだ。


「ハッ、籠城して喚くことしかできない臆病者が、よく言うよ」


 ザラが障壁をドンドンと叩いて挑発するが、大王は余裕の笑みを崩さない。


「臆病者だと? 愚か者め、この絶対防壁を備えているのは、余だけではないわ!」


 大王が手を掲げた直後、謁見の間の奥にある隠し扉が一斉に開かれた。

 そこから現れたのは、通常の近衛兵とは異なる、全身を琥珀色の淡い光――玉座のものと同じバリアを纏った、数十人の特殊部隊だった。

 一人ひとりが遺物の恩恵を受け、物理攻撃も魔法も一切通じない「無敵の兵士」たちが、無機質な足音を立てて俺たちを取り囲んでいく。


「さあ、なぶり殺しにしてくれるわ! 抵抗もできずに無様に死んでゆけ!」


 大王の狂った笑い声が響く中、無敵の障壁に守られた刃が、何十と俺とザラに向けられていた。

おしらせ:唐突に新連載始めました!


いつも本作を応援いただき、本当にありがとうございます!

このたび、箸休めな新作を立ち上げてしまいました!


『おっさん、異世界で魔法を覚える。そして嫁連れて帰ってきちゃった。昭和に…』

https://ncode.syosetu.com/n5921mi/


100年分の魔法と最愛の嫁を抱えたおっさんが、1980年代の日本や世界をのんびり(時に過激に)謳歌する、気ままな逆転帰還ファンタジーです!

本作の更新の合間に、ぜひこちらの夫婦漫才も覗きに来てやってください!

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