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【戦国時代 ー人の難 衆の狂ー】  作者: ヒデキ


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【おおまか経済三 遣明使のからくり】

かくして、日本使節団と明の景泰帝の貿易交渉も無地終了したので、あらためて第十一回遣明使の収益を“精査”してみよう。


●船の収入:①明皇帝への売上②乗船賃③荷駄費④その他雑収入(追加船賃・食事代など)

①は9万4,908貫と破格である。これは【明へ行こう8―日明交渉―】で触れた。

一方、②~④は微々たるものに見える。ところが、さにあらず。

『船に乗る者は一人別に二十貫文を償ふ』(鹿苑日録)

“船に乗る人は、一人二十貫文”

船団には、商人・僧約867名が乗ったと推計される。後年、使節団に同乗していた楠葉西忍(九十歳)が文明十七年八月三日、興福寺大乗院の尋尊を訪ね、口にしている。

『三百貫 船賃 三百貫 船作事 四百貫 船方四十人別十貫、五十貫 船トウ・カチトリ』(大乗院寺社雑事記)

“(あの時は、船一隻ごとに)チャーター代・改造代と船員40名・船長・舵取りの人件費で1,050貫掛かりました”

『六十貫 通事二人給分』

“通訳は二人が乗り60貫でした”

つまり、こういう意味になる。

<船一隻のスタッフ>=船長1名+舵取り1名+船員40名+通訳2名

第十一回遣明使では、船団は9隻であるが。内訳は「7隻+枝船2隻」である。「枝船」とは荷の積み下ろしや乗客の乗り降りを専門とする小船で、“通常船0.25隻”に該当する。すなわち、第十一回遣明使の構成は、「通常船7.5隻」に該当する。したがって、推計しよう。

<第十一回遣明使のスタッフ>=船長9名+舵取り9名+船員300名(40×7.5隻)+通訳15名(2名×7.5隻)=約333名

これによって、乗客の数も算出できる。

<第十一回遣明使の乗客(商人・僧)>=1200名-333名=約867名

かくして、②乗船賃も算出できる。

●<②乗船賃>:1万7,340貫(=867名×一人20貫)


次に、③荷駄費を考えよう。

『荷物は一駄十二貫なり。昔は八貫文を償ふ』(鹿苑日録)

“荷物は一駄(135㎏)で十二貫である。昔(宝徳・応仁の頃)は八貫文だった”

問題は次である。『鹿苑日録』は、明応八年八月六日の記録だが、その頃。

『十駄を持つの商人は乗賃二十貫文を出ださざるなり。而して己が外に又た一員を乗する』

“荷物を十駄乗せた商人は、一人分の船賃を無料にし、”

『二十駄の人は己が外に二人を乗するなり』

“二十駄乗せた人は、二人分を無料としている”

何だ、そんなに荷を積みたいのかと思えるが。意味を考えよう。一四六八年の『戊子入明記』によると、遣明船は700~1700石の超大型船である(中央値1200石)。1石=180.39ℓ(㎏)であり、1駄=135㎏であるから、荷駄賃は以下である。

<1200石船の荷駄賃>:1200石=21万6,468㎏が積載可能=1万2,827貫

第十一回使節団は九隻で、うち二隻は枝船(荷物積卸し・乗客移送用)なので無視すると、荷駄賃を得られるのは七隻である。

●<③荷駄賃>:1200石×7隻=8400石=151万5,276㎏=1万1,224駄=8万9,792貫

実は、商人・僧達867名が乗る船団の荷駄賃収入は「8万9,792貫」に及んだのである。

さて、ここで「遣明船」のからくりが明らかとなる。

『ユワウ五万斤 此内三百貫ハユワウ、百貫ハ船チン』(大乗院寺社雑事記)

“(明皇帝への)硫黄の仕入代300貫・「輸送費100貫」”

「硫黄の他の皇帝への品」も加算するとして、現代の研究で「一般的遣明船に乗せる朝貢品の仕入代は600貫」と分析されているので、「皇帝への品の輸送費は200貫」に過ぎない。

●輸送費からみた遣明船の実体=皇帝向け品(200貫):便乗商人の荷(1万2,627貫)

“遣明船の収入の過半は、②乗船賃と③荷駄費だった”のである。


 更に、④その他雑収入(追加船賃・食事代など)を考えよう。『大乗院寺社雑事記』によれば、乗客一人当たり「米代1貫」で、通常船1隻当たり「追加船賃100貫・雑費(炭・木・塩・油・ろうそく・茶・味噌など)100貫」を徴収しているので、

●<④その他雑収入>:米代(1貫×867名)+追加船賃700貫(7隻)+雑費700貫(7隻)=2,267貫程度


よって、第十一回遣明使の“本当の収益”は、以下である。

●収入=①9万4,908貫+②1万7,340貫+③8万9,792貫+④2,267貫=20万4,307貫

●費用=約1万4,550貫(船のチャーター代・改造代・船員7950貫+通訳450貫+朝貢品調達費4200貫+米代1200貫+雑費750貫)

⇒収益=20万4,307貫-1万4,550貫=18万9,757貫(189億~376億円)・利益率92.8%

明に価格を43.5%に値切られた使節団ではあったが、十分な利益をあげていたのである。帰国後、「乗船賃+荷駄賃=10万7132貫(107~214億円)」は、各地の商人(仲介業者や仲介寺社や船業者)の間で、山分けされたと思われる。

 更に、寺社・守護に対しても利益は分配された。

●寺社・守護への「抽分銭」(御礼金、7.5隻):2万2500~3万7500貫(22~75億円)

寺社・守護は、更にこのお金から、将軍義政に勘合礼銭(礼金)を納めた。


 遣明船では、とかく将軍・大名・寺社に目が向くが、商人の存在を無視してはならない。

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