13話
完全に寝過ごした。
バスの終点まで行って博康は眼が覚めた。
まだ酒の抜けきらない二日酔いの頭でバスを降りる、そして目的の場所まで行くバスの停留所を探す。
そしてふらふらと歩きながらバス停を見つけ時間を確認する、時間にはまだ少しありバスもまだ来ていない、その時間を利用して近くのコンビニでスポーツドリンクと朝ごはんを買う、しかし二日酔いでお腹が空くどころか気持ち悪い位なので取りあえずバックパックの中に食べ物を詰め込む。
そうしている間にバスは到着しそれに乗り込み席を確保する。
そして今度は眠り込んでも大丈夫なように携帯の目覚ましをセットする。
それによって安心したのかまた眠りそうになるが、さすがに今度はそう簡単に眠るわけにはいかない、そう思いながらコンビニで買ったスポーツドリンクの蓋を開けてゆっくりと飲む。
やがてバスは走り出し博康は心地よいバスの振動に身を任せる。
博康以外に人は乗っておらず、バスの中は少しうるさいエンジンの音と、時折流れる停留所のアナウンスだけだった。
停留所にも止まらず田舎道をひたすら走るバス、その景色を見ながらようやく酔いがさめてきた頭でこれから向かう場所の事を考える博康。
いったいどんな所なのか、そこには何があるのか、もし本当に博康の求めている場所ならついに博康の目的を達せられる事ができる。
しかしこの旅に出ての三日間、博康に微妙な心の変化がある事を博康自身気が付いていた。
最初は瞳に映る景色全てが灰色に見えていた、しかしこの旅で出会った民雄や綾芽、この二人に出会った事で博康に見える景色は少しずつ彩りを増していったのは確かだ。
例えば今バスの外を流れる景色も、三日前旅に出た時と同じ心境なら恐らく博康には灰色に映っていたことだろう。
だが今は違う、夏の空の色の鮮やかさ、色濃く萌えるような緑の美しさ、窓から差し込む太陽の凶暴なまでの日差し、そんな物すべてに心は反応しだしてきている事実を、博康は感じている。
たった三日間、だがそれだけの時間でも十分に人は変われる事が出来るのかもしれない。
もしかすると僕はまだ死にたいなんて思っていないのかもしれない。
そう少しは考える事も出来るようになってきていた。
しかし、博康はまだその自分の心境の変化を認められず、自分の人生の終幕を願う心がまだ根強く残っていた。
そう、博康は今岐路に立っているのだろう、このまま何の意味も見出せずに生き続けるか、若しくはこのままその最後迎えるかもしれない場所に行くかの。
そしてバスは博康に選択を迫るように目的地のアナウンスを流した。
もう時間は残されていない。
このままバスに乗り続けるか、それともバスを降りて人生の終幕を迎えるための本当の最後の旅を始めるか。
今の博康には第三の選択肢はなかった、そしてバスは博康に決断を迫った……




