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「消えたいの」
目の前で微笑んでいた悪魔が、今はただ宙を掴むように温度をなくした瞳でいた。
上がっている口角は緻密で、けれど作り物なのだと感じさせるなにかがあった。
「……悪魔の僕にも、ようやくお友達ができると思ったのになあ」
笑っていた。笑っているだけ、という感じがした。目がひどく冷えていた。
奥にあるものを、まだ感じ取れないでいる。
「私を殺したら、貴方は私の天使なのに」
そこで初めて悪魔の表情が消えた。は、と唇が震えていた。
「……わ、……わかった」
二ヶ月、と突如言われた。
「二ヶ月待って。その間僕といてよ」
何故こんなに幼い表情をしているのだろう、この人は。人?悪魔なのを忘れるくらいには人懐っこい笑みをしていた。
あ、とこの悪魔の琴線に何かが触れたのを理解した。
「…ふふ、悪魔って言って皆お友達になってくれなかったから嬉しいなあ」
友達とは誰も言っていないけど、と言いかけたのを飲み込む。友達。
悪魔でなくても、私にとっても初めての響きだった。
だから、どうしても咀嚼するのに時間がかかってしまったのだと思う。




