上司が家に来た!
「失礼します。防衛省・魔法少女部、作戦参謀のアルフレッド・ラピスラズリです。本日はお時間をいただき、ありがとうございます。こちらは心ばかりの品ですが…」
「おう、いつもユーミリアがお世話になってるな。統括司令官のアーサー・ラピスラズリだ。よろしくな」
日曜日。
ユーミリアの実家の玄関に、とんでもないイケメン二人が並んでいた。
アルフレッドは仕立ての良い高級ブランドのスーツを着こなし、最高級の和菓子を差し出している。
アーサーはラフなジャケットスタイルだが、その圧倒的なカリスマは隠しきれていない。
そして二人とも、とにかく顔がいい。
ユーミリアはまさかの実家訪問に、緊張でどうにかなりそうだった。
「お噂はかねがね…いつも娘がお世話になっております!さあ、狭い家ですが奥へどうぞ」
ユーミリアの母は完全にイケメン二人に魅了されており、ユーミリアの父は本物の「英雄」の登場に完全に威圧されてピシッと直立不動になっている。
リビングのテーブルを囲みユーミリアがお茶を淹れてくる。
そのタイミングでアルフレッドが口を開いた。
「お父様、お母様。本日はユーミリアさんが魔法少女部という危険を伴う職場に就職されたことについて、親御様のご不安を少しでも解消したく不躾ながら伺わせていただきました」
「あ、いえいえ!前回の配信のアーカイブで、お二人がうちの娘を守ってくださるのは理解したつもりです…!」
ユーミリアの母が恐縮していると、アーサーはニヤリと獰猛に笑った。
「当たり前だ。このちんちくりんは俺たちの部下の中で一番優秀で、一番可愛い稼ぎ頭だからな。国益をこれだけ生み出すんだ、外界の敵風情に触らせてたまるかよ。ユーミリアが傷物になるなんて許さねえ」
「兄さんの言う通りです。ユーミリアさんの安全は、僕たちが命に代えても保証します。それに、ユーミリアさんの頑張りに見合うだけの特別手当と今後のキャリアプラン、福利厚生だってバッチリですから。こちらがその資料です」
アルフレッドが提示したのは、防衛省の判子が押された「正式な資料」である。
ユーミリアの特別待遇を書類にしたためたものだ。
ユーミリアは破格の給料が約束される魔法少女部の中でもエース級。
この待遇も不思議ではない…が、わざわざ書類にしたためられたのは上官であるアーサーとアルフレッドの手によるもの。
「こ、これは…ありがたいですが、娘にここまでの価値が…?いえ、家では親孝行してくれるすごく良い子なんです。ただ、魔法少女部でここまでの待遇を受けるほどなのでしょうか…魔法の才能はありますが、運動は得意ではない子で…」
ユーミリアの父は震える手で書類を握る。
しかしアーサーは隣に座らせたユーミリアの頭をグリグリと撫で回してから、言った。
「良いに決まってる。こいつがいなきゃ今の魔法少女部は回らねぇ。俺たちだって、この先もずっと…こいつを誰よりも近くで守るつもりだ。なあ、親御さん。ユーミリアを、俺たちに任せてくれよ」
待って。
ちょっと待って欲しい。
まるでプロポーズでは???
ユーミリアがそう混乱する中で、ユーミリアの両親はアーサーとアルフレッドを真面目に見つめる。
アーサーは不敵に、アルフレッドは柔和に笑いながらもユーミリアの両親からの視線を真っ直ぐ受け止めた。
そのアーサーとアルフレッドの態度に、本気だと察したユーミリアの両親はどこかほっとしたように笑う。
「お二人がそこまで仰ってくださるなら、親として安心です」
「ユーミリアを、どうかこれからもよろしくお願いします!」
ユーミリアは混乱しつつも、なんか良い雰囲気になる両親とラピスラズリ兄弟を認識して、さらに混乱した。
「よし、これで親公認だな。じゃあ今度は、お前の好きな甘いもんでも食いに行くか。これからはプライベートでも、お前を連れ回せるな?」
アーサーがそう不敵に笑うと、ユーミリアはとうとう現実を受け入れて「推しに外堀埋められてる!?」と叫ぶが、もう遅かった。




