お説教は終わりです
「う、うぅっ…ひぐっ…ご、ごめんなさいぃ…」
防衛省・魔法少女部の執務室。
フリフリの衣装のまま、ユーミリアはポロポロと泣いていた。
前世の社畜時代では、ちょっとしたミスですぐ怒鳴られていた。
今世は甘々に過保護にされる上、「特攻兵器を使おうとしたこと」にここまでキレてもらえる。
心配される喜び、怒ってもらえる喜び。
怒られてるのに、こんなに嬉しい。
「はぁ…反省したならもういいから、もう泣くな」
アーサーがユーミリアを抱く腕をといて、親指で優しくユーミリアの涙を拭う。
「ほら、泣き止んでユーミリアさん。お説教はもうお終いですよ」
ユーミリアの大好きなチョコレートをポケットから取り出すアルフレッド。
「はい、あーんして。大好きなチョコレートですよ」
「ひゃい…あーん」
アルフレッドに手ずからチョコレートを与えられる。
甘くて美味しい。
「はは、美味いか?」
コクコクと頷くユーミリアを、アーサーは優しく笑って自分の膝の上に抱き上げた。
「これからは危なくなったら、指輪を思い出せ。俺たちを呼べ。それだけでいい。いいな?絶対お前を死なせないし、俺たちが守る」
「ね?僕たちをおいて勝手にいなくなるなんて、許しませんからね」
二人の甘やかしと過保護さに包まれ、ユーミリアはようやく本当に安堵して体をアーサーに預けて眠ってしまった。
「失礼します」
翌朝。
防衛省の最上階にある長官室の重厚なドアが、ノックもそこそこに勢いよく開け放たれた。
現れたのは正直長官でも持て余す、カリスマと冷徹さを兼ね合わせたラピスラズリ兄弟だった。
「ラピスラズリ司令官、ラピスラズリ参謀…どうしたんだね、そんな顔をして…」
デスクの奥で青ざめる長官。
何かやらかしたか?
いやなにもしてないはずだ…。
そんな長官に向かって、アルフレッドはユーミリアの杖から丁寧に取り出した「自爆型反撃魔法の起動キー」の入った厳重なケース(透明で中身はバッチリ見える)を間違えても押さないように丁寧に、でも冷え切った目で突きつけた。
「長官。我が魔法大国日本の防衛を担い、歴代最高の黒字を叩き出すエース級…我が国の黒字化にまで貢献する魔法少女ユーミリアに、このような『特攻兵器』を僕らにさえ知らせず渡していたのは…どういう方針ですか?」
「い、いや、これは…万が一、国益が損なわれる事態に陥った際に本人の…名誉を、守るために…」
「名誉?笑わせんじゃねえぞ」
つまりそれは、殉職せよとの命令に他ならない。
「あのちんちくりんは、俺たちの『大事な部下』だ。使い捨ての道具じゃねぇ。国がどうとか、素材が金になるとか、それ以上に魔法少女たちの安全の方がよっぽど優先事項だろうが!」
「ひっ…」
「兄さん、そこまでです。兄さんの威圧に怯んで…その、失禁してしまわれたようです」
情け無い長官を冷たい目で見下しつつ、アルフレッドがアーサーを止める。
「長官。次に、僕たちの部下…魔法少女たちにこんな〝おもちゃ〟を寄越したら…わかりますね?彼女たちのことはどうぞ僕たち司令官と参謀にお任せください。彼女たち魔法少女部がなくなれば困るのは国の方だ…どうか、お忘れ無く」
「わ、わかった…自爆型反撃魔法のスイッチの運用は、本日付で私の権限で停止する…」
「それでいい」
自分たちの上官すら怯ませて、魔法少女たちの安全を確保するラピスラズリ兄弟。
まさかそこまでしているとは知らないユーミリアは、推しが自分のためにあそこまで怒ってくれたんだなぁと今日ものほほんと推しへの気持ちを温めていた。




