大ピンチです!?
「…っ、あ、あぐっ…!?」
外界の敵の猛攻が激化する魔法大国日本。
防衛省・魔法少女部のエース級として数々の修羅場を潜り抜けてきたユーミリアだったが…この日は初めて、外界の敵の「罠」と言える巧妙な攻撃に対処出来なかった。
空間隔離の罠とでも言おうか、隔絶された空間に閉じ込められて禍々しい触手に…ギリギリと締め付けられ、小さな体は軋んでいく。
幸い、国家予算を投じて作られた最高峰の魔法少女衣装のおかげで〝潰される〟ことはなかったが…本部からの通信は断絶。
魔力も少しずつ消耗していき、ジリ貧としか言いようがない状況だった。
このままじゃ、敵が結界を破って日本に攻め入って…みんなが危ない…もう、これしか手がない…。
薄れ行く意識、もう助からないだろうとユーミリアは判断した。
魔法少女として、せめて国は守らなければ。
ユーミリアは杖の隠しスイッチに手を伸ばす。
〝万が一の最終手段〟
そう言って本部の上層部から渡された広範囲自爆型反撃魔法の起動キー。
押せばユーミリアの魔力が暴発して、ユーミリアごと敵を吹き飛ばす。
前世は社畜だったけど、今世は結構充実してたな…みんなを守って親孝行もして、大好きな推しにも大切にされて…。
涙で視界が滲む。
それでも手を伸ばす。
みんなを守るために。
…でも。
「まだ使うんじゃねぇ、このバカ!!!」
来て、くれた。
隔絶されていた空間が、外側から物理的に破壊される。
凄まじい爆風と共に、大好きな推しがそのままの勢いでユーミリアを締め上げる触手を細切れにする。
「アーサー司令官…!」
自由になったユーミリアの体を、空中でお姫様抱っこで受け止めるのはアルフレッド。
「僕もいますよ?というか、あんなもの使おうとしないでくれます?」
怒りに震えた低い声。
まずい、初めて見る激おこだ。
「兄さん、このまま核を破壊します」
「おう。よくも俺の部下に変なスイッチ押そうとさせやがったな、タコ野郎がぁっ!!!」
アーサーの圧倒的な暴力。
ユーミリアを守るためだけのアルフレッドの超強力防御魔法。
ドローンカメラはそれらを映し、配信では心配や感動の投げ銭の嵐が舞い、外界の敵はあっという間に跡形もなく潰された。
…これは、素材は取れないかもしれない。
戦いは終わった。
幸いユーミリアは致命傷は負っておらず、またアルフレッドの治癒魔法で回復し切っていた。
しかし防衛省・魔法少女部の執務室に連れ帰られたユーミリアは、死にそうな青い顔をしている。
…怒られるのは、わかっていた。
「座れ、ユーミリア」
アーサーの声がいつも以上に低い。
ちょこんと座るユーミリアは、いつもより数倍小さく見える。
実際、体を縮こまらせて怯えていた。
「…なんであんなスイッチ、押そうとした?」
瞳が冷たい。
キレている。
ユーミリアだって、あのスイッチを押したら帰れないことは知っていた。
…それを、そんなスイッチの存在を、今になって、ピンチになって知らされて、きっとユーミリアがそれを押すだろうとわかって。
アーサーとアルフレッドがどれだけ焦って、どれだけ絶望したか。
「あんな特攻兵器、お前が押して国のために一人だけ戦死したら…なんのための俺たち司令官や参謀だよ!?わかってんのか!?死ぬんだぞ!死んだら黒字もボーナスも、なんも関係ねぇ!まずは生き残ることだけ考えやがれ!!!」
「ひぇっ…」
「兄さんの言う通りだ、ユーミリアさん」
アルフレッドの目が、死ぬより怖い。
アーサー以上に冷たい目だ。
その怒りはユーミリアや外界の敵ではなく…本部の上層部に向けられていた。
「あんなクソみたいな…失礼、酷い自爆スイッチは本来魔法少女部の隊員に与えられるべきものではない。それを知らないところで管理されていたのを今知ったのは、僕たちの落ち度だ。…でも、死なせないと誓った。僕たちは、ユーミリアさんも他の魔法少女たちも使い捨てにするつもりはない。わかりますか?」
「そ、それは…はい。でも、みんなを守るためにはこれしかないと思って…」
泣き出すユーミリア。
それは大好きな推しを怒らせてしまった後悔か、命が助かった安堵か。
そんなユーミリアを、アーサーはこれ以上ないほど強く抱きしめる。
…幸い魔法少女衣装を着たままなので死にはしない。
「なんのための指輪だと思ってやがる。俺たちが間に合わないわけないだろ?」
「二度と自己犠牲など考えてはいけません。今日だけは、甘やかしてあげませんから」
アルフレッドも横から、アーサーとユーミリアを包み込むように抱きしめる。
前から、横から、推しに抱きしめられる時点で甘やかされているようなものだが…二人のお説教は、ユーミリアを抱きしめつつもしばらく続いた。




