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魔導特許のハッカー 〜書類係の元弁理士、チートプログラムと王国法で無能ギルドを敵対的買収する〜  作者: 樹


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第5話:模倣者の罠と、最初の利権強奪

案の定、無能な2代目は僕たちの仕掛けたビジネスモデルへ、綺麗にそのブタのような足を突っ込んできた。

 数日後、王都の一等地にある『クミコ・ギルド』の本店前広場で、彼らは大々的に新しい興行を発表した。

 並べられていたのは、金持ち貴族に媚びを売るような、派手な金箔きんぱくだらけの騎士と、ドレスを着た少女の人形。そして僕たちの真似をして、看板には大きく『入場無料!』と掲げられていた。

「――おーっほっほ! 見なさい平民ども! 路地裏のコソ泥どもがやっていた無料人形劇なんて、我がクミコ・ギルドの圧倒的な資金力(資本)の前にはただのゴミよ! 全員の『魔導端末』に、我がギルドの豪華な映像を強制同期してあげるわ!」

 金色の縦ロール髪を揺らし、扇子を片手に高笑いしているのが、2代目ギルド長のクミコだ。

 彼女は僕たちの無料劇が大バズりしたのを見て、単純に「無料で見せて、後から高い人形グッズを売れば儲かる」とだけ解釈し、不完全な劣化コピー(パクリ)を始めたのだ。

「エイト、あいつ本当に私の技術を……! 反吐が出るわ、あんなバランスの悪い数式コードで、私の子たちを汚さないで!」

「……クミコ、マルタから盗んだ通信回線リンクをあんなに雑に回してる。数式が泣いてる。許さない」

 野次馬に紛れてその様子を見ていたステフとマルタが、怒りで僕の腕をキリキリと締め上げてくる。爪が食い込んで地味に痛いが、僕は丸眼鏡を指で押し上げ、冷徹に微笑んだ。

「大丈夫ですよ、お二人とも。第一原理から考えましょう。彼女は『無料化』というビジネスの本質を何も分かっていない。……マルタ、彼女たちの魔導端末の接続ストリーミングログはどうなっています?」

 僕の影に隠れるように立っていた銀髪の天才令嬢マルタが、ジト目のまま、手元の小さな水晶球デバイスをパチパチと叩いた。

「……クミコの魔術回路、バグだらけ。出力だけ無駄に高くて、並列処理クロックが追いついてない。……あと5分で、魔導バッテリーが熱暴走パンクする。利用規約違反で、爆発すればいいのに」

 マルタはフードの奥から、ゾクゾクとするような冷笑を浮かべた。

 そう、クミコたちはステフから強奪した『新型魔導バッテリー』の出力を、ただ派手な光と音を出すためだけに繋いでいた。エイトの『魔導電算プログラム』による精密な超微細制御コードがなければ、あの高出力インフラ技術は、ただの「暴走寸前の魔力爆弾」に過ぎないのだ。

 劇が始まって数分後。

 不自然にガタガタと動くパクリ人形から、突如として黒い煙が噴き出した。

「な、何よこれ!? 動きなさいよ、この木偶でく!」

 焦ったクミコが人形を叩いた瞬間――バリバリッ! と激しい魔力のショート音が響き、パクリ人形は派手な爆発音と共に木屑となって四散した。

「ぎゃああああっ!? 私の金箔人形がぁっ!?」

 すすで顔を真っ黒にしたクミコが悲鳴を上げる。

 さらに、無理な並列処理をさせられたギルド本店の魔導炉までもが次々と過負荷で破裂し、一等地にあった大工房は一瞬にして大火災のパニックに陥った。

「釣るまでもありませんでしたね。自滅です」

 僕は淡々と告げ、武装した僕たちのスラムの配達員を引き連れて、混乱するクミコ・ギルドの敷地内へと堂々と踏み込んだ。

「な、何よアンタたちは!? 追放された書類係の分際で、我がギルドに何のご用よ!」

煤まみれで激怒するクミコに対し、僕は懐から何十枚もの羊皮紙――クミコ・ギルドの『発起人権利書(議決権)』を叩きつけた。

「チート能力『万物監査(鑑定)』で、あなた方のギルド設立規約のバグ(抜け穴)を洗い出しておきました。王国法第118条『ギルド資産の著しい毀損きそん、および安全義務違反』。たった今の人形爆発と魔導炉破裂の過失により、あなた方のギルドの格付けは最低ランクに暴落しました」

僕は冷たい視線で、絶望に顔を青ざめさせていく2代目を支配ハックする。

「そして、その混乱に乗じて、あなた方に投資していた地方貴族(出資者)たちの議決権(株)を、僕たちが神殿口座から得た莫大な経験値キャッシュで『すべて買い取り』ました。現在、クミコ・ギルドの権利の6割は、僕のものです」

「な、んですって……!? 嘘よ、そんな金額、路地裏の人間が払えるわけが――」

「払えるんですよ、最高神に認められた本物のプラットフォームを握る僕たちならね。……これより、当ギルドの『敵対的買収リーガル・ジャック』を宣言します。2代目ギルド長クミコ。あなたは本日をもって【全員クビ(解雇)】です。今すぐ私物をまとめて出ていってください」

「う、嘘……私のギルドが……嘘よおおおおおっ!?」

 一瞬にしてすべての地位と財産、そしてステフとマルタから奪った利権のすべてを失い、床に崩れ落ちて号泣するクミコ。

 その様子を上から見下ろしながら、ステフはゾクゾクとした歓喜の表情で僕の肩を抱き寄せた。

「あはっ……! 最高だわ、エイト! 本当にあの無能を一文無しにして、私の足元に転がしちゃった! アンタ、やっぱり最高に狂った私の『総支配人』ね!」

「クミコ、ざまぁみろ。……エイト、マルタの多重魔法陣より冷徹。でも、すごく格好いい。マルタのデータも、これから全部エイトにあげる」

 高慢なドSの天才たちが、僕の冷徹な知略の前に、今や完全にとろけた瞳で僕に依存し始めていた。

「やれやれ、僕はただ、バグを排除して最適化しただけですよ」

 僕は丸眼鏡をクイと上げ、取り戻した新型バッテリーと魔導リンクの権利書を手の中に収めた。

第1章、クミコ・ギルドの敵対的買収、完全完了。

 だが、この成功は、世界をハッキングする魔導メガコーポの、ほんの序章に過ぎなかった。


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