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インタールード

アルクのパルミラへの呼び方をパルくんに変えました。

その方がそれっぽい気がしましたので。


「ただいま~~」

 玄関の戸を開けて、家の中に入る。

 外よりは少し涼しい。

「おかえりなさい。もう少ししたら夕御飯だからね~」

「分かった~」

 この口調は遺伝なのかな。

 ………そうならいいな。

「おう、お帰り」

「お父さん!今日はいたんだ」

 いつもはいないお父さんが帰ってきていた。驚きだ。

「おっかさーん!アルクが反抗期だ!!」

 と思ったらお父さん、いきなり叫びだした。はんこうき?

「はんこーきって何?」

「なになに?なんて言われたの?」

「アルクが『お父さん、いたんだ』って。まるで俺がいない方がいいみたいな言い方じゃないか!!!」

「お母さん、はんこうきって何?」

「よしよし。あの子はそんな風に思っていませんから」

「本当か?本当にそうなのか?」

「お父さん!ハンコウキって何なんだよぉ!」

「うぉぉぉ!!!アルクが俺に怒っているぅぅぅ!!!許せアルク!!!こんなお父さんでごめんなさい~~~!!!」

「お父さん近所迷惑ですよ。もうちょっと静かにしましょうね」

「ちっくしょぉぉ!!!」

「あ、お父さん!」

 お父さんが自分の部屋にこもっちゃった。

「あらあら。しょうがないわね。アルクご飯ができたら呼ぶからそれまで自分の部屋でゆっくりしてなさいな」

「は~い」



 私は2階へあがって、自分の部屋の扉を開けた。

「ふう」

 後ろ手で扉を閉める。鞄を置いてベッドに横になった。

「楽しかったな」

 今日は楽しかった。学校に行くことになってからはいつも楽しい。

「パルくん」

 私の左後ろに座っている男の子。こっちにきて初めてお友達になった男の子。

「うん。楽しかった」

 学校にいたくて夕方まで残っていたら、話しかけてくれた。

「…………」

 そういえば、彼には頭を撫でてもらったこともあった。

「えへへへへ」

 あのときのことをおもいだすとなぜだか顔がにやけてくる。

「ご飯よ~」

「は~~~い」

 いけないいけない。こんな顔で下に行ったらお父さんにからかわれちゃう。

 しっかりしないと。

「あれ、お父さんは?」

「それがねぇ………」

「そ、それが………」

「部屋にこもって出てこないの」

「………しょうがないなあ」

「お願いね」

「は~い」

 いつものように私はお父さんの部屋から少し離れて立った。

「おとう~さ~ん、ご飯だよ~」

「は~~~い」

 少し離れてるのは扉を勢いよく開けて出て来るから痛い目に遭わないためだ。何回もぶつけられた。

「アルク、もう怒ってないのか?」

「最初からなにも怒ってないよ。ほら、早くご飯食べよ」

「魔法使い様感謝しますっ!!!」

「祈ってないで早くきなさ~い」

「「は~~い」」

 私は魔法使い様に祈ってもないし、信じてもないけど、ご飯は食べたいから返事をした。

「いただきます」

「「いただきます」」

 いつもは一つの返事だけど今日は2つの返事。

「うむ。久々に母さんの料理を食べると旨いなあ」

「あらあら。それはいつも食べてるとおいしくなさそうってことかしら?」

「断じて、断じてそんなことはないっ!!」

「あらあらあら。本当かしら?」

「本当だ、母さん!この瞳を見ても疑うことができ」

「出来るわね」

「ぐはっ!!」

「お父さん。お母さんの料理はいつでも美味しいよ?」

「そうよねぇ。いつも食べていないお父さんには分からないかもしれないけどねぇ」

「いや、いつもは食べれないからこそ食べれると美味しいということだったのだが」

「あらあらあら。そうだったんですか。じゃあ、もっとたくさん食べれますよね?」

「か、母さん?いったい何を」

「では、ちょーーーっとだけ待っていてくださいね~~」

「え、どこにーーーキッチン?何故?」

「多分、新しく料理作るんじゃないかなぁ」

「え?母さん!ちょっと!」

 お父さんはキッチンに急いで行った。

「何を作ろうとしてるんだ母さん!」

「ローストビーフですよ」

「どうして作っているんだ!?」

「父さんが食べると言ったからじゃないですか。もしかして私の料理が食べれないと言うつもりですか?」

「い、いや。そんなつもりで言った訳じゃ」

「なら、作っても問題ないですよね?」

「し、しかし量的な問題が」

「問題ないですよね」

「はい、ないです」

 お父さんが戻ってきた。

「お帰りなさい」

「アルクよ。私が死んだらお前が引き継ぐのだぞ」

「お父さんの仕事を?」

「そうだ。私がいなければ貿易が成り立たないからな」

「だったら、私が代わっても同じことだよ。お父さん、頑張って生きなきゃ」

「おお!魔法使い様!私は生きていて良かった!!」

「ごちそうさま」

 やりとりの間も食べていた私は食べ終わっていた。

「あれ、アルクどこに行くんだい」

「頑張ってねお父さん」

「アルクやーーーい!!!ワシをおいていかんでくれーーーい!!!」

「一時間ぐらいしたら降りてくるね」

「うぉーーーーーーい!!」

 1時間ぐらい宿題していよっと。

 私は自分の部屋のある2階に上がっていった。



 大体1時間ぐらい経った後、私は下の階のリビングに降りた。そこにはソファで横になっているお父さんがいた。

「もう、もうだめじゃ~~~」

「お父さん、お腹大きいね。太った?」

「もしかしたら太ったかもしれん…………」

「ええと、この歳でいっぱい太っちゃうとなんて言うんだっけ」

「はっ!言うな、言うんじゃないアルク」

「えーと、確か、メタボリック?」

「正確にはメタボリックシンドロームよね」

「あ、お母さん」

 洗い物をしていたお母さんが戻ってきた。

「俺はそこまで太ってない、太ってないぞぉ~~!!!」

「まあ、現実から目を背けたくなるのは分かりますけど」

「か、母さん!?なにを言い出すんだね!?」

「夢を追うのも結構ですけど、現実に生きてくださいね」

「げ、現実に生きてらい!ふ、太ってなんかないもんね!」

「お父さん、大丈夫だよ。お父さん太ってないもん。お母さんもそう思うでしょ?」

「ほ、本当か!」

「それでも、歳のことを考えるともうちょっと気をつけて欲しいところではあるわね。あれだけ食べたのだし」

「母さんが食べさせたんだと思うけど、分かりました」

 お父さんが起き上がった。

「それで、アルク。今日は楽しいことあったか?」

「うん。ええとね、今日は」

 お父さんがいるときはいつも私にしてくる質問。今日学校であったことをいろいろと話した。

「それでね、パルくんがね」

「母さん、母さん。アルクがさっきからそのパルとやらについてよく言っているが何者かね?」

「アルクに優しくしてくれているお友達のようですよ。何でも学校で初めてお友達になってくれたとかで」

「そういうことじゃない。男なのか?」

「話を聴く限りでは男の子のようですよ。最近良く話してくれます」

「アルクに男だとぉーーーー!!!!!許さん、許さんぞぉーーー!!!」

「お父さん、何で叫んでるの?」

「娘を盗られると思っているんじゃないのかしら」

「アルク、そいつと会っちゃいかんぞ」

「なんでだよ~~。と言うかそもそも同じ学校なんだから会うに決まってるじゃないのさ」

「くそぉ~~~!!!魔法使い様!どうか、アルクに悪い虫がつきませんように!!」

「話を聴いている限り悪い子には聞こえませんでしたよ。むしろとってもいい子のようですけど?」

「なんでだよぉ~~。お父さん!!」

「いや、そういう奴ほど信用ならんぞ。裏で何をやっているか分かったもんじゃない」

「それは同じ男としてかしら?」

「その通りだ、母さん」

「もういい!!私、部屋に戻るね!」

「アルク?おーーい、アルクやーーい」

 後ろでお父さんが何か言っていたけど、自分の部屋に帰った。



「ふう」

 自分の部屋に戻ってきた。ここが一番、落ち着く………のかな。

「よいしょっと」

 ベットにねっころがった。ゲームセンターで取ってもらった人形が跳ねる。

「わたしはここにいてもいいのかな?」

 最近良く思うことだ。

 特にお父さんや、お母さんと一緒にいると考えてしまう。




 私は別の人がお父さんやお母さんだったんじゃないかって。




 今のお父さんもお母さんのことも大好きなんだけど、どうしてもそんなことを考えちゃう。


 私には昔の記憶がない。


 お父さんやお母さんから昔のことを言われることもないし、学校に通い始めてからもそんなこと聞かれなかったから考えなかったけれど。

 私の記憶は7年前の真白いベッドからだ。

 それより前の記憶は全然ない。

 それを当然のことだと思ってる。今でも、そう思ってる。だから、聞かない。

「怖いのかも」

 それ以前の自分のことを、例えばお父さんに訊いたとして。今の自分と全然違っていたとしたら。

「考えてもしょうがないのにね」

 人形の手を触ってみる。中に綿が入ってる分の反発が返ってきた。

「お風呂沸いたわよーーー」

「はーーーーい」

 お母さんの声だ。我が家では私が最初に入ることになっている。

「お風呂入んなきゃ」

 着替えを持って部屋を出るとき、私の勉強机に目がとまった。

「パルくん」

 4つの音を口で言ってみた。なぜだろう。今、唐突にそうしたくなったのだ。

「うんっ。よしっ」

 何に納得したのかは自分でも解らないけど。

 お風呂に入るために、扉を閉めた。



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