ソラ姫、登校す。
ソラ姫の、初登校を書いてみました。歌音さん、グッジョブです。
学校で歌音さんに会って、遅くなった顛末を伝えて、大事があったことを認識し、かつ翌日のお仕事を言い渡され、消化不良の身を鎮めた後、謙信神社に身を寄せるかと思いきや、今度は徒歩で僕の後をとことこついてきたソラちゃんを伴って、再び家に帰りつくと、ソラちゃんは、
「ただいま。あたし、ここに泊めてもらうわ。いいわよね。」
と言うや、奥の間に上がって敷きっぱなしになっていた布団に入ってしまった。お婆ちゃんは、「あらあら、まあまあ。」と言いながら何故か嬉しそうにしている。新しい孫でもできたつもりなのだろう。世話焼きだからなあ、お婆ちゃん。しばらくすると夕飯時になり、先ほどの事態で神社に詰めていたお爺ちゃんも帰ってきたので、お婆ちゃんが、出がけの約束通り舞沢牛のすき焼きを作ってくれた。やった!ソラちゃんを起こしていっしょに鍋をつつく。外国の人とも思えないような上手な箸使いにお爺ちゃんもお婆ちゃんも目を見張っている。ソラちゃんは、
「郷に入れば郷に従えですわ。」と、少し得意そうだったので、夕飯は和やかに進んだ。そこで、最前から気になっていたことを尋ねてみることにした。
「ねえ、ソラちゃん?」
何故かお箸のしっぺが飛んできた。
「こら、はっちゃん、あたしに事はソラ姫と呼ぶようにと言ったでしょ。はい、やり直し。」
ん~
「えーと、ソラ姫様、お聞きしてよろしいでしょうか?」
するとソラちゃんは僕に視線を向けえると、
「なあに、はっちゃん。」
と答えてくれた。お婆ちゃんは、それにお爺さんもニコニコしながら僕らのやり取りを見守っている。
「ねえ、さっきの事だけど、霊ちゃんとは知り合いだったの?それからアリアちゃんとも。」
するとソラちゃんは何か考え込むような顔になって、そして答えてくれた。
「あの腐れ狐とは、まあ、古い腐れ縁よ。まだこの星にたどり着いた時期位くらいの。その頃からあの化け狐とは、相性が悪いのよ。」
ソラちゃんは軽く眉をひそめながら言った。
「それとね、」
そして、何か不思議そうな表情で、こうも言ったのだ。
「アリアって、誰?」
「え、霊ちゃんをからかっていたじゃない。」
「そんな事していないわ。あの狐からは自分の舟を取り返しただけよ。変な事言わないで。」
?、?。何を言ってるんだろう。あんなにはっきりと振られ狐って。
「そんなこと良いでしょう。うん、お婆さん、ごちそうさまでした。美味しいご飯でしたわ。お料理御上手なんですね。あたしもあやかりたいわ。」
「あら、お褒め頂いて光栄ですわプリンセス。残りもよろしければおじやにでもして召し上がりますか?」
お婆ちゃんは嬉しそうに、ソラちゃんもそれを受けて丁寧にお辞儀をしているけど、何かおかしい。確かにソラちゃんは、霊ちゃんと変なやり取りをしていた。だから喧嘩になったのに。僕は重ねてソラちゃんに聞いてみようとしたのだけれど、お婆ちゃんが目で僕を掣肘した。
「英斗や、女の子にしつこくするものではありませんよ。」
でも、お婆ちゃん、
「男は女の子の全てを受け止めてあげなきゃいけないよ。」
お爺ちゃんまでそんな事を言う。僕は、不満はありながらもすごすごと引き下がった。何か虫の居所が悪かったのかもしれない。それとも、僕の勘違い?
その後、お腹の膨れたソラちゃんはやっぱり眠くなったと言って奥の間に引っ込んでいった。僕も手持ち無沙汰になって、明日に備えて寝ることに。
「英斗、宿題は終わったかい?」
「ううん、お爺ちゃん、ありがとう。終わってから寝るね。」
僕は自室に入って、宿題と簡単な予習をしてから床に就いた。
翌日、朝も早い内からソラちゃんは起きてきて、何やらお婆ちゃんと話をしている。土鍋に火を入れ、台所でおじやを作ってくれていた。昨日の残りとはいえ、何て良い匂い。それを頂いている内に登校時間になったので、昨日の歌音さんとの打ち合わせ通りソラちゃんと連れ立って学校に向かった。ソラちゃんのためお爺ちゃんが車を出してくれた。メイ君もそうだけど、朝は自分で走りたかったけれど、ソラちゃんもいるしなあ。お爺ちゃんは余計な事は言わないで、今朝のおじやの事をソラちゃんに聞いている。へえ、火星にも同じような料理があるのか。というより、お米、食べてたのね。
学校までは車なら10分くらい。お爺ちゃんが運転席を降りて恭しくドアを開けてくれて、ソラちゃんは学校に降り立った。校門前の駐車場だけど。
学校に着いた僕らは、運転してきてくれたお爺ちゃんにお礼を言って、連れ立って校門前に向かった。校門前では生徒会長・・・代理の都さんと、なんと歌音さんまで、校門前に並んで登校する生徒に笑顔を振り撒いていた。しかも二人とも、謙信神社の巫女服姿で。歌音さんは僕等を見止めるや、
「こっち、こっちよソリスさん。」
と言って、ソラちゃんを校門近くの体育用具室に拉致していった。
「お早うございます。会長、どうしたんですか、その格好。似合ってますけれど。」
都さんに聞くと、凄く疲れたような顔をして、
「まあ、これも制服だからねぇ。あの人にはなかなか逆らえないのよ、雇用主だし、身元保証人でもあるし、ね。それと私、一応会長代理だからね。アリアが泣いちゃうわ。戻るのが遅いのが悪いんだけど。」
その間も生徒たちに挨拶を欠かさない都さん。生徒たちの中にも休日に都さん目当てで謙信神社に通うものが後を絶たない。その評判の美人巫女さんが校門前に巫女服で立っているのだから、今朝の校門前はいつも以上に滞留現象を起している。それに輪をかけるのは、歌音さんまでいる事だろう。アリアちゃんとよく似たその容姿。姉妹と言っても通じるような若々しさはさすがだ。今はソラちゃんを連れ、体育用具室で何かやってるけど。
「そういえば、朝の生徒会恒例の挨拶をほっぽって、何やってるんでしょうね。ソラちゃんまで連れて。」
僕は都さんに聞いてみた。僕は一応生徒会で庶務として席がある。歌音さんも学校のOGでかつPTAの会長さんだ。学校にはよく来るし、生徒会のOGとしてこうした行事に参加することもままある。実際ファンも多い。先生方とも顔なじみで、あの宮さん先生も困り切ったような顔でその行動にOKを出しているのを見たことがある。何でも昔、担任だったとか。アリアちゃんは言外に
「年甲斐もなく」と言いかけて止めていた。本人は「好きなように生きるのが若さの秘訣よ」と言っていたとかいないとか。
そうこうしているうちに校門内からとんでもない歓声がわきあがった。
ニコニコ顔の歌音さんと、金色の美しい髪を朝の風にたなびかせた美しい少女が、巫女服の少女が恥じらうように、しゃなりしゃなりと歩いてきた。
「ソラ姫・・・。」
とても美しい。それ以上の言葉が出ない。
「ロリ金髪、あざっす。」
「ロリ巫女様。いかようにもしてください。」
「うおおおおおおおおおおおおお!」
男どもの狂乱をよそに、女子たちもまた、おかしなテンションで騒いでいる。
「きゃあ、お人形さんみたい!」
「こんな娘、欲しいわ。」
「ねえねえねえねえねえねええええええええええええええ。」
女子たちも気持ちは同じようだ。歌音さんのしてやったりといった表情が垣間見える。高下駄を掃いているのもポイント高い。今や校門前は、ソラ姫様の御披露目ステージと化していた。姫・降・臨。それは伝説になった。
ソラ姫は、戸惑うような、それでも得意満面といった笑みを浮かべ、校門前に姿を現した。都さんは、こめかみを押さえている。他の生徒会役員は、いつもの事と言った調子で受け流しているようだけど、基本的に目も口も真ん丸になっていた。こうしてこの朝は過ぎたのだった。昨日の事は何もなかったように。
これを書いている際、色々自分が忘れていることに気がついたのですが、書いてた文章が大量に飛んでしまったので書き直しているうちに、かなり修正できました。




