どうせ魔王の考えることはいつの時代もこんなものだ
やっとこさ魔王にご登場いただけました。別の方では格が落ちるというもの。でもこんな所にご登場いただいて、いいのかしらん。でも終わる算段はつけられそうです。
グレムリン宮殿。旧世紀の遺物である。だが、その内部はそれこそレーダーやレーザーの巣だ。住まいは人を映す鏡である。実態が伴わない場合は、例えば世界を混乱に堕としている豚人の住いなんかは、勢いに任せて勝手な改築を重ね、より豚舎と呼ぶにふさわしいモノに変わりつつある。もう一つの極悪半魚人の住まいは特権を傘に自国のやる気だけはある民族浄化主義者の一団によって、固く守られている。笑止千万だ。皇帝たるもの大小二つの隣国のように指導者が豚ではやっていけまい。あ、あの豚犬もそうか。考えるのも汚らわしいが。それに歴史ある祖国を持つ者なら、あそこまで執拗に他民族を殺しまくらぬでも良いのに。まあ、奴の場合、やらねば殺られる。と言う被害妄想で魂が出来ているからな。あのシベリアの土地でソリス姫のお顔を拝謁してからというもの、ワシにも運が向いてきたというものさ。これも我らが熊大国を強国にしてそこに君臨しておればこそ。体はマッシブ、心は冷徹、それこそが人間に必要なものなのだ。ただ、グレムリンはあまりに縁起が悪い。歴代の皇帝なぞ、今や世界史かイースターエッグくらいでしかお目にかからない。やはり手近な山をくりぬいて、真宮殿を立てるのがスマートなやり方さ。その過程で面白いものも発見したしな。フフフ。
ワシは隠し撮りした異星の姫の写真に口づけをし、己が強大さとやがて来るであろう栄光の日々に思いを馳せるのであった。
シベリアのど真ん中が昔は広大な湾であり、そこに被さるように異星の大陸が存在しているなど、マルクスも思い至らなかったであろう。
我らが科学アカデミーは、現地の調査結果、及び火星の地質学的調査、考察によりこの事実をつきとめた。大陸そのものはボーリングをしようにも岩盤が固く、びくともしない。それどころか、この大陸の下、かつてシベリア湾とでもいうべき水底には海底火山があり、それに蓋をする様な形で大陸が覆いかぶさっている、と言うのが科学アカデミーの見解だった。戦う大統領としては、そのような摩訶不思議なものがあれば是非目にしたいと思うのは必定であろう。そこでわしは、氷河に覆われた元大陸の頂上付近に、透明な覆いに囲まれた美しい姿を見たのだ。ああ、なんと小さくて柔らかそうで可愛らしい姿。発見後しばらくは公用にかこつけて何度現地を訪れただろう。姿は見えども触れられない、口もきけない。わしはどうしてもそんな現状を打破したかった。砲撃を加えてもそれはビクともせずにそこにあり続ける。兵器担当の話では、恐らく核兵器の威力をもってしても傷つかないだろうとの見解であった。良かった、無駄弾撃たないで。それでもあきらめきれず、権力の座についてから20年の時を経て、同地に駐留させていた兵隊から通報があった。例の覆いが外れ、中の異星人らしき少女が行方知れずだというのだ。わしはそこに直行し、初めて中に入った。彼女が眠っていたベッドにほおずりし埒を開けんとしていたところ、先行していた科学アカデミーが、彼女の日記らしきものを発見し、我がもとに差し出した。勿論読めるはずなどないが、それに触れた瞬間のエクスタシーは筆舌に尽くしがたい物であった。その後、日記と言う個人的な簡単な記録だったが故か解読に成功し(この辺はほめてやらねばならぬ。兵は宝だ。)ここで眠っていたのがソリスと言う我々の言う火星の姫で、8,000年ほど前に政変にてこの地球に逃れてきたこと、この大陸はかつてはアトランティスと呼ばれ大西洋上に浮いていたこと、このシベリアの地に差し迫った地殻変動を緩和するため、この場所に移動し、眠りについたこと、以上が判ったが、残念ながら大陸の、宮殿であるらしい部分から外には出られそうにない。それでも科学アカデミーの総力を結集して、いくつかの革新的技術を手に入れた。これも改革者の先見の明と言うものよ。異星の技術も我がアカデミーにかかれば造作ないものだ。後は専用列車でのみ入れる山の中に築いた皇宮で(核シェルターも兼ねておるぞ)、高みの見物と行くか。こめの馬鹿豚はワシの指令も満足にこなせぬ様だし、ワシ自身が出なくてはなるまいよ。まずは来る勝利のために乾杯だ。
ウラルにいないと思ったら、珍しく表に出てるじゃない。あの臆病な穴倉ダヌキ。私は舞沢高校から神社に戻って、今後の方針を練っていた。自分は他人から覗かれないなんて、脇が甘いにも程があるわね、あのライドンキング。と言っても火星の技術の一端でも手に入れたのだから、天狗になるのも人間としては無理ないか。私は当然のごとく各所に仕掛けてある監視カメラ映像を見ながら、暗鬱たる気持ちになっていた。例の民族紛争を陰で操るだけでは飽き足らず、異星の技術に手を出そうとは。どのレベルまで手を出しているかによっては痛い目を見るだけでは済まなくなりますよ。そういえばソリス姫が寝所を荒らされたとか言ってましたね。あのオヤジ、ベッドの匂いを嗅いで埒を開けようとしたとも。うう、ブルブル。寒気がするわ。規範さんと同じ「男」とは思えない。規範さんがそんなことしてたら、でも、私の布団でなら許してあげるかな。他人の布団の匂いをクンカクンカしてたら、離婚ね。まあ、あんな変態オヤジと一緒にしてはいけないわ。冷静に対処しましょう。それにしてもソリス姫、セキュリティー意識低すぎ。地球の学者の生真面目さを甘く見てもいけないわ。鼠の穴からでも堤防は決壊するのよ。火星にも運河はあったけど、あそこは水資源そのものが枯渇気味だったからなー。住んでたのは想像上はタコだけど。でもあいつ、ソリス姫に気があるのね。言ってあげたらどんな顔するかしら。いずれにしても何か手を打たねばダメか。でもメイ君もアリアちゃんもいないし、どう手を打とうかしら。
私は失念していた。ソリス姫が抜けてはいても一つの惑星の姫であることを。そして、誇り高い女性であることも。普段がアレだから、しょうがないと言えばしょうがないか。ついでに人の振り見て我が振り直せと言う教訓を、忘れていたことも。当然地球人に対してじゃなかったけれど。それでも。
しかしまあ、こんな所にモデルがいる方をだしていいのかなぁ。まあ誰も見てないし良いですよね。




