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狐は七代祟るとか

玉藻様は偉い狐さんです。見た目は何をどう間違ったのかロリ金髪となっております。仕様です。よほど妖力の相性が良いのか、はたまた普段の扱いに不満があったのか、蔦船は主人を替えたようです。ただ悲しいかな製作者の意向には逆らえないようで。次善の策を選びました。


さてはて、おっとり刀で犬の宮の玄関を飛び出したソラ姫とはっちゃんの凸凹コンビは、目の前をママチャリですっ飛ばして行く歌音さんを茫然と見送りながら,背にした姫をなるはやで舞沢高校へ送り届けようと、負けじとスピードを上げていた(英斗くんが、だけど)。ただ悲しいかな女の子とお付き合いすることはおろか、手を握ることさえ学校のフォークダンスぐらいしかしたことがないはっちゃんは、振動で姫が苦しがっていることに思い至れない。姫は姫でそれなりの年月を生きているものだから、年上の余裕(経験は不足しすぎているけれど)を見せようなどと言う出来もしないやせ我慢をするものだから、途中で酔ってしまい青息吐息になっていた。当然会話が弾むなどと言うことも無く、黙々と先を急ぐだけとなっていた。ところが、先ほどソラ姫を拾った田圃の付近に差し掛かった時、上空から鈴を鳴らしたような声が降ってきた。

「おう、お主はハチ公ではないか。何か不愉快なモノを背負っているようだがどうしたのかの?」

急停止して見上げるとそこには、つる草で編んだ籠のような物が浮かんでいた。

「あ、それは私の舟ではありませんか。なぜそのような所に。」

ソラ姫は思い当たることがあるようで、聞き返すように叫んでいる。その籠の側面には生々しい銃撃の跡らしきものがあった。

「ちょっと前に風に流されて、妾の社に空から落ちてきたのじゃ。製作者の根性が悪かろうが、この蔦船は良い物じゃ。妾が拾った物は妾のものじゃ。貴様にとやかく言われるような事では無いぞえ。」

「この泥棒ぎつね!返しなさいよ、それ。私の力作なんだから。」

え、きつね?それにこの他人を小ばかにするような話し方。もしかして・・・

「もしかして、玉藻様!?なんでそんなところにいらっしゃるのですか?」

この4月以来の大陸の大妖怪にして、お隣の県の千本鳥居で有名な万蔵稲荷の祭神である玉ちゃんこと玉藻様が、上空に浮いた蔦の籠の中から顔を出していた。

「いやのう、腐れ吸血鬼の気配が近づいてきたかと思うたら、毛唐の飛行カラクリまで来たであろう、あれよあれよという間に撃ち落されたようじゃったがの。それでまあ、この舟を拾ってやらねばどんな災いにならぬとも限らん。そんな訳で我が元に保護してやっての、そやつの気配をたどってここまで来たのよ。それが舞沢の地とは妾も驚いておる。どうじゃ、えらいであろう。」

蔦船の上でなさすぎる胸を張る玉藻様。この見た目でもう数千年から生きている、かつて西の大陸の古い国で時の皇帝を惑わし、その後海を渡って日本にきてやんごとなき方を騙してのけた狐の化け物。その正体をとある高僧に見抜かれ、もう千年は前に遠く那須の地で殺生石に身を変えた悪の権化・・・のはずなのだけど、今、目の前(まあ、上だけど。)におわす姿は狐の耳を生やした可愛らしい少女、にしか見えない。本人曰く、「石のままでも良かったのじゃが、いい男がちょっかい掛けてきたから返り討ちにしようとしたら、反撃されての、ついつい北の方、つまりこの辺まで逃げてきたんじゃがの、蔵王権現は超えられなかったわい。」との事である。虎妖退治の際それを聞いてあきれるやら驚くやらで。ただ、メイ君やアリアちゃんも認める実力者には違いない。そんな玉藻様に、ソラ姫は口汚くも恐れず立ち向かう。

「何よこのロリ年増が。人様のものを取っちゃダメって親御さんに教わらなかったの?これだから野蛮な野狐は!恥ずかしくないの?」

だけど玉藻様もさるもので、涼しい顔でこうおっしゃる。

「おーほほほほほ。ロリ年増はお互い様じゃ、この年増ダコが。妾はオーソン・ウェルズのラジオ、聞いておったぞ、邪悪な火星人よ。ハチ公よ気を付けるのじゃ。その者は火星からの侵略者よ。吸血種の祖として長命なだけあって、幾人の若人を騙して餌食にしておるやら分かったものでは無いぞえ。もっとも、自分の思ったほど他者に好かれる質では無いようだがの。ほほほ。」

英斗君、現在フリーズ中。エエボク、ナニモキイテイマセンヨ。ナニモキコエテマセンシ。

 しかし罵り合いはまだ続く。堪らずソラ姫申しますに、

「何よこの振られ狐は。知ってるんだからね、貴女、アリアにメイ君とられたでしょう。あんなにご執心だったのにね。性格の問題だわ。まあ、アリアもかなりの食わせ物ではあるけれど。」

「盗られたわけでもないし、別に執心などしてはおらぬわ。そのようにしか相手を捉えられぬから亡国の姫などになったのであろ、違うかのう。」

さすがにそれは口が過ぎるのでは、玉藻様。先ほどからソラ姫の身体が怒りでぷるぷる震えるのが判ります。

「え~と、お二人とも、今はそのような事を論じている時では無くてですね、学校が危ないんですよ。お願いですから止めませんか。」

手短かに現在の状況を玉藻様に伝える駄犬。

「なんと、こめ軍がのう。察するところ例のプチンの差し金であろうな。メイたちに追い立てられていよいよ切羽詰まったとみえる。しかしこんな時にこんな場所に来て撃墜されるなど足を引っ張る事この上ないのう。この駄ダコはその辺の配慮が足りないのじゃ。」

うーん、この二人何でこんなに相性が悪いんだろう。もはやあきらめの境地だな。でも僕は、

「すみません、玉藻様。僕は彼女を、ソラ姫を守ると決めたんです。そんなにいじめないでください。」

玉藻様が呆気に取られている。

「汝、そのタコに誑し込まれたのかえ?止めておくが良い。何がソラ姫じゃ、そやつはソリスじゃ。そやつは会った昔から吸血種としての性がの、どうにも気にくわぬのじゃ。邪魔立てするならお主にも痛い目を見てもらわねばならぬぞ。えい、枯れ藁落とし!」

上空から枯れた藁の屑が滝のように降ってっ来る。たちまち藁屑まみれにされる僕たち。しかしソラ姫も負けてはいない。右手を上げると浮いている蔦船を指さし、指示を口にする。

「こら舟よ。その口の減らない駄狐を元の場所にでも送り返しておしまい。自分の主人は、わかっておるのであろう。」

蔦船は少し逡巡するように頭上をクルクル回り始めた。しばらく後、舳先を東の方に向けるや、矢のように飛び去った。

「あれ~、こら、妾もハチ公と学校に向かうのじゃ。これ、助けてやったのを忘れたかえ?これ、これと言うに。

僕の背中でソラ姫が一仕事終えたように息をついている。

「正義は勝つ、よね。」

いやいやソラ姫。玉ちゃんは貴重な戦力ですよ、メイ君もアリアちゃんも認める。どうすんですか?

「気にすることは無いわ。あんな駄狐がいなくとも、こめ軍くらいどうにでもなるわ。私たちも急ぎましょう。時間とられちゃった。」

そう言って舌を出す彼女を背にして、僕も気にするのは止めて、また高校への道を急ぎ始めた。玉ちゃん、大丈夫かな?もっとも大丈夫も何も無いような惨劇が、彼女によってこめ軍たちにもたらされようは,この時の僕やソラちゃんには知る由もない。


この後、ソラ姫とはっちゃんは高校に着きますが、着替えは必要そうですね。どうするのでしょう。

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