猫は左手で何かを招く
なんだろ、書いてるうちに中東で土下座衛門がやらかしたぞ。ついつられてしまうじゃないですか。
そのころ舞沢高校では・・・
北の大陸に魔王を倒しに?出かけた、謙信神社のバカップルは連絡もよこさないまま、そろそろ2カ月くらい。生徒会長の代理を引き受けた私にくらい、文の一つも欲しいところだけれど、まあ、あの二人の事だから、メイ君は忘れちゃってる可能性はあるけれど、会長は、アリアちゃんはまずは確信犯ね。それでなくとも中間試験は・・・まあ、うっちゃっても大丈夫か、あの二人。神社のお仕事も他愛のないものばかりだし。まあまずあの二人に限ってケガとかする事は考えられないから、早いとこ帰ってきてほしいものだわ。今日だって、上空の未確認飛行物体のせいで宮さん先生から、生徒たちの動揺を抑える方策について、なんて相談されたし。こういうのはアリアちゃんの得意分野なんだけどな。私だって解らないわよ。実家ではあまり人前にすら出なかったって言うのに。いっそ、歌音さんにでも相談するか・・・いえ、これは最終手段ね。何を要求されるか分かったものじゃないわ。それに何故かどこかに出かけたみたいだし。
私、東雲都は舞沢高校2年生にして謙信神社のアルバイト巫女(バイト何て言うと怒られるけど)、かつ猫又 黒 のご主人様でもある。主人なんて言っても全然言う事は聞いてもらえない訳だけど。その黒がなんかさっきから妙に警戒している。さっきの飛行物体のせい?凄い音だったものね。そっか、玉藻様以外にも苦手なものはあるんだ。と、生徒会室で一人つらつらと考え事をしていると、突然校庭の方が騒がしくなってきた。たくさんの車両とアーミールックの外人さん⁉窓からはそんなものが校庭に侵入してきたのが見えた。もう夕刻だから部活動のぐらいしか残ってない筈だけど、最近のオーバーツーリズムってやつかしら。迷惑な事この上ないわ。私は生徒会室を出てまず職員室に向かった。そこでは、サングラスをかけた野卑なヤンキー野郎(わ、本場ものだ)が先生の胸倉を掴んで、何か汚いスラングを連呼している。そんな下品な言葉、普通の日本人には解らないわよ。先生も困っているじゃない。あ、でも宮さんは分かっているみたい。さすがと言うか、謎の先生ね。でも、どう見てもプロの軍事集団ね。これは宮さんでも危なそうね。いくら伝説の教師でもちょっと分が悪いわ。案の定、脅しに屈さないジャパニーズに正義の鉄槌を、なんて言ってるわ。あそこ、中東でまだ懲りてないのかしら。でもこのままじゃ宮さんが危険。仕方がない。
「黒、いるんでしょ、夕飯前のお仕事をなさい。でも、殺しちゃダメヨ。やっちゃったら、ごはん抜きだからね。」」
「解ってるニャ。じゃあ、身体かりるニャ。」
え、ちょっとちょっと。緊急事態で仕方ないけど、また私で何とかするつもり?言っても聞かない子だけど、嫁入り前のご主人様を何だと思っているの、莫迦くろ。
そんなこんなで、私と融合した猫又 黒 の,こめ軍兵を相手にした大立ち回り(一方的な虐殺ともいう)が始まった。
宮さんの胸倉を掴んでいた口汚いヤンキーの大男が、まず床に転がった。足払いを掛けたらまあ簡単に転ぶこと。油断していたとかそういうことじゃなくて、普段の鍛え方がなっていないのよ。突然現れた猫耳姿の美少女に職員室を占拠せんとしていたこめ兵隊員の一団は、なすすべもなく床に這いつくばっていた。その間5分少々。足払い他で転ばされて鳩尾に一撃。赤子の手をひねる、そんな表現がぴったりだ。この程度なら、黒まで出すことなかったかな。でも私ひとりじゃ疲れるし、こんなデカ物、触りたくも無いしね。さて、職員室は片付いたから、次は校庭ね。100人ぐらいはいるかな?どうもこのモードに入ると深くは考えられないのが難点ニャン。語尾まで変わっちゃうニャ。
私は校庭に走り出てその他のこめ軍兵士に相対したニャン。校庭に展開しようとしていた兵隊たちが色めき立つ。まあ、そうでしょうニャ。見た目は猫耳を生やした細身の美少女。見とれるな、と言う方が無理ってものニャン。だけど機先は制したし、この程度の人数でこの程度の練度なら10分もいらないニャ。それに今なら秘儀猫ろがしが使えるニャン。黒はあまり使いたがらないけど、そうこれは緊急事態なのニャン。私はエロい目をした兵隊どもに左手を上げてみせたニャ。その手に兵隊どもの視線が集まるのを確認して。その手を後ろに引き気味にくるっと回して見せたニャン。すると私に注目していた奴らが皆、もんどりころがったニャン。うん、想定どうりニャ。周りに巻き込まれた一般人はいないようだし、このまま制圧するニャン。
その時、生徒に交じっていた北の大陸の手前の帝国の、先日子分にした虎人達の一部が声を掛けてきたニャン。
「猫姫様。後の鬼畜こめ兵どもの始末はお任せください。我ら大陸虎人にとってもこやつらは警戒すべき敵。このままこ奴らの狼藉を許したら、北に向かわれたアリア様とメイ様に顔向けが出来ません。」
「おまいら、まだいたニャン?なら丁度いいニャ。でもやり過ぎると怒られそうだから、殺さないニャン。わちきだって命は惜しいニャン。じゃあ、やっておしまいニャ。」
まだ数名残っていたらしい(そういえば、妙に都に懐いていたニャン。ネコ科だからかにゃ?)、春先の闖入者たちの残りが、倒れているこめ兵共に次々ととどめを刺し始めたニャン。これで一件落着・・・と、思っていたら、こめ兵車両のそばにいたこめ兵の生き残りが変な機械を向けてきたニャン。あれは銃器ニャ?同時に、上空に現れた戦闘ヘリらしきモノが警告も無く機関砲?を打って来たニャン。次の瞬間、私の周りに襲い来る火薬の匂い。槍衾ならぬハチの巣にされてしまった。・・・でも、現代火器程度に何とかされるようなやわな人外は、ここにはいないわ。あ、語尾が戻った。黒はどうやら驚いて憑依が解けたみたい。何だ、あの子が一番やわなのね。でもこめ兵共がここまでやるなんて。この日本に、いえ舞沢市に喧嘩売ろうだなんていい度胸ね。何でここ舞沢にこめ軍関係の施設が無いのか、忘れたわけじゃないでしょうに。どうやら、他の一般人なり虎人達にけが人はいないようだけど、これは・・・切れても問題ないわよね。
私がごく短時間でここまで腹を決めているうちに状況は一変した。
「何を、してるのかしら。あなたたち。」
うわ、ヤバいのが来たわ。あんなに怒っているのは見たことないわ、歌音さん、不穏な空気を感じて、こそっと逃げようとしていると、
「お待ちなさい、都さん。」
ええっ、わたし。私は応戦しただけよ。それもほとんど黒がやったことだし。
「お楽しみの所悪いけど、ちょっとその格好は刺激的過ぎるわ。帰るにしても着替えしてきなさい。そしてみっちり事情聴取ね。覚悟してなさい。」
言われてやっと気がついた。さっき受けた銃撃で生身の部分はもんだいなかったけれど、制服が・・・、いけない、下着もズタボロ。確かにこれでは帰れないし、茫然としているこめ兵が何やら前以上にエロい目で見て・・・・・・、
「いやあぁぁぁぁぁ!、何よこれ、やあぁぁぁぁぁぁ!」
私は絶叫していた。
都さんがいるのを忘れていたわ。そうよね、あの二人だけじゃないものね。英斗君は掣肘しておいたし、まだ着いてないみたいだけど。あとは虎の皆さんか。悪気はないのだろうけど、あの人たち、そもそもが野獣だからなあ。まあ、私も急いだつもりだったけど、人前に出るならやっぱり規範さんがくれたアクセサリー着けておめかししたいじゃない。都さんの艶姿はさすがに英斗くんには見せられないかなあ。ご両親に怒られそう。まあ、それはともかく、
私はいかにも司令官と言った風貌の男の首根っこを押さえて聞いた。
「で、これはどういった趣旨の行動だったのかしら?洗いざらいお話しなさい。」
この軍人は一応知っている。去年の赴任の際に菓子折り持ってあいさつに来たものね。あの時も不服そうだったけど、ちゃんと格というモノを教えてあげたのに。前任のおじさまも恐々ついてきてくれてたっけ。なのに、
「何故?」
顔面を蒼白にして、中年ヤンキーは額を校庭にこすりつけてジャパニーズ土下座を決めて見せた。
「も、申し訳ございません。これは国からの、最高司令官からの直接の指令でありまして。」
ああ、それでこんなにも早く。
「でも、拙速だわ。彼我の実力差を理解できないのはあの不快な土下座衛門のせい、と言う訳ね。それにしても、一応表面上は友好国の一地方を、ましてやここ舞沢を攻めるにしては戦力不足は否めないんじゃない?べネならともかく前にも中東で同じ轍を踏んでたでしょうに。」
私は昔、と言っても20年くらいか、前に、ニューヨークで暴漢から行きがかり上助けてやったヒキガエルの情けない顔を思い出して、ため息をついた。そういえばあの時は、明さんも一緒だったな。物思いにふけっていると、中年ヤンキーさんが発言を求めてきた。
「さ、最高司令官殿は、なんでもさる筋から依頼を受けて、北欧から中東を回り込んできた飛行体を追っていたとの事であります。これも仕事でありまして。けしてあなた様に、謙信神社に敵対しようとする意図あっての事ではありませんです、はい。」
ふ~ん、良く回る舌じゃない。でもこれで納得したわ。あの土下座衛門は、要するに自分の保身よりも大事な、あの北の大国の変態ライドオンに操を立てたという訳か。(* ̄- ̄)ふ~ん。
「それにしても舐めてくれたものね。なんといっても兵の練度がなっていない。都一人に良い目を見させるだけなんて、せめてここに来るなら戦術ピーくらい用意なさい。それだって通用するものではありませんけどね。特に今世紀の兵器と言うヤツは馬鹿でもボタン一つで扱えるものだからって、脇が甘すぎるのよ。機械なんていくらでも操作可能なのよ。まだ肉弾戦の方が目はあるわ。それだって、多分都ちゃんにも 黒 なしでも敵いはしないしないわ。反省なさい。もしも一般人に被害があったなら、ここにいる全員、神社の鯉のエサだったからね。」
その時、中年ヤンキーさんの胸元の通信機が鳴った。こちらを窺うヤンキーさんの手からそれをひったくって、
「ハーイ、ヒキガエルの坊や。なーに舐めたマネしくさってるのかな?」(一応本編はバイリンガルでお送りしています)
通信機の向こうは何やら息を飲んでるみたいだけど、白家の状況なんて手に取るようにわかる。セキュが甘すぎるのよ。あの国と指導者は。ゴルフ場からでないだけましなのかしら。
「き、貴様は何者だ?私はこめ国の最高司令官だぞ、ふざけるな。るびお
を出せ。」
「ふ~ん、あの時のカエルがえらくなったものね。私の声も、恐怖も忘れたのかしら?ここは舞沢よ。これを聞いても何も思い出せない?北の負け犬への忠誠心で記憶障害でも起こしてるのかしら?それとも老人性痴呆?」
中年ヤンキーこと、るびお君は顔面をそれこそ紙のように白くして恐れおののいている。でも他所様の事は興味がないわ。しつけの悪いブルドックは躾直さないとね、この機会に。
「はあ、マイサワ?舞沢って、今、兵を出している、って、その声、そのお美しいお声は・・・!?」
うん、どうやら理解出来た様ね。つい先日も東京で会ってやったじゃない。そっちのたっての希望で。やっぱり痴呆のほうかしら?
「あ、あなたさまは歌音様ですか、アリア様に代替わりされたとの事でしたが、何故そのような場所に。何か兵共がやらかしましたでしょうか?」
呆れたことに他人事のように語り始める土下座衛門。よし、ちょっと脅かしておいてあげよう。
「あなたがぷちんの下僕であることぐらい分かっているのよ。ついでに言うとあの子は私の客人。私が保護するわ。それを撃墜したり、それに伴ってここ舞沢に兵を派遣しようなんて、思い上がりも甚だしいわ。今日からテロリスト対策だけじゃ済まなくなりたいのかしら?それから、あなたの私兵じゃないんだから、在日こめ軍の方をこき使うのは止めてあげなさい。それでなくても最近評判がだだ下がりなんだから。中間負けるぐらいじゃ済まないわよ、物理的に。」
まあ、この位脅かしておけばいいか。前任者は腹は黒いけどあそこまで向こう見ずでは無かったのに。まあ、キモは冷えたでしょう。私も暇ではないから次の事を考えないと。そういえばソリスの話、ちゃんと聞いておかないと。
「あのう、歌音様。私どもは撤収しても、よろしいでしょうか?」
そういえば忘れていたわ、使い捨てのるびお君を。
「そうね、話は終わったから、今日の事は悪い夢でも見たと思って忘れなさい。道中何もしてないでしょうね?もし何かしてたら、申し開きは聞かないわよ。あの土下座衛門も叱っておいたから、何を言われても、無問題と言っておきなさい。あ、ちなみにあなた方が撃墜したあの子は無事よ。怒ってたら私でも手を付けがたいから、その時は諦めてね。」
そんな慰めにもなっていない話をしてあげると、るびお君以下こめ兵たちはいそいそと帰っていった。この後、つい帰路に選んでしまった旧13号線で玉藻さんのうっぷん晴らしの餌食になろうとは知る由もない。
こめ兵部隊がすごすごと帰路につき始めたころ、ソリス姫を背に乗せた英斗君が校庭に現れた。ずいぶん埃まみれだけど。どうしたんだろう。
「あれ、歌音さん、早かったね。こめ兵共は?」
「おう、歌音。彼奴らはどこにいったのだ。あの車列か?攻撃しても良いのかな。」
血気盛んなこと。好戦的なのは誰の影響かしら。
「止めて上げなさい。もう済んだし、わたしが着く前に都さん達が片付けてくれたから。張子の虎もいい所よ。ソリスさんもそのへんで手を打ってくれませんか?後始末が面倒だから。とりあえず丸く収めたわ。禍根は残るだろうけど、こちらから問題起こすのもねえ。多分、もうこめ軍がちょっかいを掛けてくることは無いわ。」
だけど英斗君はちょっと不満そうにうなっている。その辺はメイ君ぽいのだけれど。ソリス姫はもう飽きたみたいね。っどっちかと言うと初めてくる高校に興味があるみたい。そっか、後で都ちゃんに案内してもらおう。
「今日の所は、はい、お終い。」
強引に会話を終わらせる罪な私。一応考えることは多いので一先ず休憩にしましょう。明日から色々手続きしないとね。
丸く収まった感じで終わってますが、後一編のつもりがまだ書き足りないことがあります。魔王出てこないやん、まあ、あのライドン王のことだけど。どうしてこうなったかは後日です。




