魔王と大蜘蛛
その大きな部屋には無数の蜘蛛の糸が張り巡らされていた。
そして部屋の中心部の天井。
そこにボスらしき大蜘蛛が張り付いていた。
体長は人4人分くらいだろうか、その巨体を軽々と支えている糸はさぞ頑丈なのだろう。
全部焼き払うか?
魔法で起こす火は魔力で燃焼してるので密閉された空間だとしても呼吸ができなくなることもない。
ただ、空気は加熱されるが。
しかしそれもやろうと思えば魔法でなんとかできるのである。
魔法、便利。
とりあえず端の方から燃えていくように部屋の壁に魔法を複数展開する。
「さて、きれいに燃やせるか?」
ここに来るまでに大蛇やら蜘蛛やらを串刺しにしたときと同じように、魔王は軽く腕を振った。
まあ、腕を振らなくても魔法を発動させることはできるが、気分的な問題である。
さておき、魔法陣から炎が噴き出し、一瞬にして蜘蛛の糸を伝って焼き尽くしていく。
大蜘蛛は危険を察知したのか、蜘蛛の糸から飛び降り、なんと、八本ある足の一本を使い、土魔法で身体を包んだ。
そして、炎がおさまると同時に土壁を崩して飛び出し、魔王から距離をとった。
「ふむ、魔物にしては頭がいいようだな。」
警戒して動かない大蜘蛛を観察してみる。
よくみると、八本の足のうち、前の四本がそれぞれ違う色になっている。
足の色で使う魔法が違うんじゃないだろうか。
魔王も動かないのを見てか、大蜘蛛はいきなり糸を吐いてきた。
糸は茶色に鈍く光っている。
魔王は難なく避けた。
「糸まで属性を変えられるのか?…なかなか興味深いな。」
試しに魔法で燃やそうと試みたが、燃やすのに先ほどよりもだいぶ時間がかかる。やはり考えに間違いなさそうだ。
同じように何度も意図が飛んでくるが、避けては地面に落ちた糸を燃やしていく。
流石に距離があり当たらないことに焦れたのか、大蜘蛛は先ほどと違う足、青みを帯びた足を地面に振り下ろした。
すると、地面がどんどん凍り付いていく。
「虫系の魔物は寒さで動きが鈍るはずだがな…凍らせることができるんだから耐性もあるってものか?」
床全体が凍りつくと同時に、大蜘蛛は八本の足を器用に動かして氷上を高速で移動し始めた。
どうやら蜘蛛の糸も使うことで上手く方向転換までしているようだ。
そこらの冒険者よりも頭がいいのではないだろうか?




