魔王と盗賊
夜の街道近くでは行き来する者たちが野宿をしていることが多い。
その中には高価なものを持った商人や、いい装備を持った冒険者もいる。
中でも、この街道はフラムレに活動拠点を移そうと意気込んで、新しくいい装備を買った若い冒険者がしばしば通る。
そして、そんな街道によく現れるやつらがいる。
そう、盗賊だとか、山賊だとか呼ばれるやつらだ。
この日も、日が暮れた夜の闇の中、たきびの光を発見したそいつらが動き出した。
・・・・・・・・・
魔王は、自分たちを遠巻きに囲む気配を察知して目覚めた。
人の気配...盗賊らしいな。
気配を消すのがうまい魔物や暗殺者の気配も察知できる魔王が盗賊程度の輩がこそこそ動いていることに気が付かないわけがなかった。
魔王はとりあえず起きたことに気づかないように周りを確認し、魔法でいろいろな罠を仕掛けた。
落とし穴やら足に絡まって硬化する罠やら、踏んだ瞬間檻が出現する罠やら、一応非殺傷系の罠である。
盗賊たちは、魔王たちの周りが一瞬にして危険地帯に早変わりしてしまったことどころか、気配を察知され、気づかれたとも知らず、何か金になるものが手に入ることを想像してにやにやしながら包囲網を狭めていった。
「お前らはあのごついおっさんを始末しろ。もう一人の弱そうなほうは奴隷として売れそうだし、縄で捕らえておけ。」
「うっす、頭。いくら強そうでも寝てる間にサクッとやっちまえばあっけなく死にますからねぇ。奴らのんきに寝てどちらかが見張りをすることもない何てバカですねぇ。」
「へっ。楽でいいじゃねぇか。こんな奴ら相手にしくじんなよ、お前ら。」
そして、盗賊たちが魔王たちから十メートルほどのところまで近づいたその時。
「あーーーっ!」
「グブヘッ!」
「ぬわー!」
手下たちの情けない悲鳴に盗賊の頭は硬直した。
「お、おい何が起こってんだ!?どうした、お前らああぁぁぁ...」
その場に足を止めていた盗賊の頭の足元も突然消えた。
ちょっと後ろにいて引っかからなかったため魔王が直接落とし穴を出現させて落としたようだ。
「何事だ兄ちゃん!?...って、本当に何事だよこれ。」
叫び声に驚いてとび起きたら、顔面から地面に倒れこんだ人間や檻に捕らえられた人間、そしてそこかしこに穴が開いている光景が目に飛び込んできたのだ。おっさんの脳はついていけない。
「盗賊が包囲してたから罠を仕掛けたら勝手に突っ込んでいった。(一名を除く)」
「盗賊だと?...あ、御者が久しぶりだから交代で見張りすることを忘れてたな。すまねぇな。だが、それにしても、盗賊も運が悪かったんだな...」
それより、捕らえたはいいが、どうしようか。こいつら。
「盗賊たちはフラムレまで歩かせて引き渡すのか?」
「そうだなぁ、住処を聞き出して盗賊が奪ってため込んでたものだけ持って行ってから縄で縛って街道横の森に転がしておけばいいんじゃないか?街道でさえやけに魔物が出てきたしな。」
...盗賊から物をもらっていくのか。たくましすぎやしないだろうか。この世界の人間の考え方は。
その一、二時間後、おっさんは予定外の収入だったなと豪快に笑っていた。




