第55話
「では折角なので、ダンジョン以外の冒険者活動もしてみましょう。」
ベルさんの提案で、冒険者ギルドへ来た。とりあえず、まずは手紙の配達を頼んだ。ボルルックシティは割と辺境なので手紙の配達がいい値段する。ベルさんとシータさんもご実家に手紙を書いているようだ。ミーニャさんは「孤児院に頻繁に手紙は要らないにゃ。」と言って書かなかった。孤児院から旅立っていく孤児は多いだろうし、そんなものなのかもしれない。
次に依頼。私たちはEランクパーティーなので、そんな大それた依頼は受けない。今日皆で相談して選んだのは
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常設【フォレストウルフの討伐】
アーレンスの森に現れるフォレストウルフを討伐してほしい。
成功報酬:1匹/1000ギル
期限:なし。
※討伐証明部位は尻尾
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である。
「この依頼は常設なんっす。フォレストウルフは割と繁殖力が高くて、しかも毛皮も爪もお肉も骨も牙も価値がなくて、狩人は積極的には狩ってくれないんっす。増える一方だと森に入るとき危ないので、常設で間引いて欲しいってことになってるんっす。安いんですけど、意外と強くて、冒険者には人気がないっす。」
「まあ、人が嫌がる仕事は、進んで片付けてあげるのも大切なことよ。そういう助け合いがないと世の中上手く回らないんだから。」
「そうだな。お金に困ってるわけでもないし、それでいいだろう。」
常設依頼は別にカウンターで申し込みをする必要はないらしい。狩ってきたら狩って来ただけ提出すればよい。
全員武装してアーレンスの森の中に入っていく。此処では緑のダンジョンと同じく【エンチャント・火】が有効である。全員に【エンチャント・火】をかけておく。
「フォレストウルフか…どうやって感知したらいいのかな?」
「フォレストウルフは耳も鼻も良いので、縄張り内に入れば向こうから勝手に来るっす。」
そんなことを話しながら、イシュさんに誘導されて縄張り内に行く。
「来たわね。」
「来たにゃ。」
私にはまだ感知できないが、ベルさんとミーニャさんの探知には既に引っかかっているようだ。
しばし待つとフォレストウルフがやってきた。一度に8匹くらいやってきた。イシュさんが多重盾を展開してシールドバッシュで叩く。【エンチャント・火】がかかってるので普通に大ダメージだ。
「流石っすね、いつももっとダメージが軽いっす。エンチャント最高っす。」
「ダメージが入ってるうちに片付けちゃいましょう。」
ベルさんがメイスでぶん殴ったら、フォレストウルフが弾け飛んだ。
「思ったよりグロいです…」
脳漿飛び散ってるんだもの。言われて初めてベルさんは気付いたようだ。
「ジゼルちゃんって、もしかして、あんまりダンジョン外で活動したことない?」
「はい…」
「うーん…結構目に優しくない眺めだけど、慣れるところから始めましょう。」
ダンジョン外では魔物を倒したら魔物がドロップに変わる…なんて目に優しい現象は起きない。血や内臓が飛び散る。剣の切り傷はまだいい方で、ベルさんのメイスは…うう。
吐き気を我慢しながら剣を振る。
8匹全部倒して尻尾を剥ぎ取る。
「因みに結構派手に倒してるので、血の匂いですぐに第二陣が来るっす。」
「もう来たわよ。」
フォレストウルフ10体が現れた。
「お替わりはいつ止むにゃ?」
「自分らがその場を速やかに立ち去るか、絶滅させるしかないっす。絶滅は無理なので、適当なところまで倒したら移動するっす。」
***
41匹分の尻尾を回収して、縄張りから出た。かなりグロ耐性が付いたと思う。メイスってえぐいんだね!ベルさんは遠慮してスローイングナイフを多めに使ってくれたけど、まさか全くメイスを活用しないということも出来かねて。グロかったです。今日はお肉はちょっと無理かも…。いつも通り全員に【クリーン】をかけておいた。
「シフォンさん、常設依頼の【フォレストウルフの討伐】受けてきたっす。」
「はい…♡」
シフォンさんと呼ばれたギルドの受付嬢はイシュさんを見て目がハートである。
4万1000ギル報酬を受け取った。
「わかってたことだが、やっぱりあまり稼げないな。」
「そうっすね。シータさんたちのダンジョンでの稼ぎと比較しちゃうとあんまり稼ぎにならないっす。でもボルルックシティで1日一人頭8200ギルはまあまあ稼げてる方っす。」
「Fランクでランディとダンジョン探索してた頃より稼げてます。」
「にゃーがシェリナ守護隊にいた頃のシェリナ守護隊の1日の稼ぎもそんなもんだったにゃ。貢献度で報酬変えられてたから、にゃーは1日8千ギルも貰えなかったにゃ。」
「いいじゃない。8200ギル。少なくとも宿に泊まって今日の夕ご飯くらいは食べられるわ。」
シータさんはピンと来ていないらしいが、まあそんなもんだ。
『銀の匙』はボルルックシティの女の子たちに遠巻きにヒソヒソされている。別に収納バッグの所有がバレたから…とかじゃなく、ただ単にイシュさんとベルさんが格好良いからだ。「アタックしちゃいなよ!」的な会話が成されているのだろう。特に同種族の男子は魅力的に見えるらしくてイシュさんの注目度は高い。ベルさんも私とデートしてるときは「彼女持ちか…」とがっかりされているが、パーティー単位で活動してると「誰と誰が付き合ってる…」なんていうのは周囲からはわからないから「いいなー」と思われているようだ。口調も相当近づかねばわからないし。傍目には美形のお兄さんにしか見えない。
「二人ともすごい注目度にゃ。」
「じろじろ見られるのはなんか恥ずかしいっすね。」
「そのうち慣れるわ。」
イシュさんはまだ気恥ずかしそうだが、色んな所を旅してきたベルさんは慣れっこらしい。
「明日は何か採取依頼受けてみましょうよ。」
「そうっすね。採取の穴場に連れてくっすよ。」
今日はイシュさんのご両親に顔を見せてから夕食である。




