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第54話

イシュさんのお誕生日である。


「お誕生日おめでとう、イシュ。」

「「「お誕生日おめでとう。」」」

「有難うっす。」


朝食後、宿屋のイシュさんのお部屋に押しかけてみんなでワイワイ。宿屋の個室なんてそんなに広いわけでもないので、割とぎゅうぎゅうだったりする。


「では、にゃーからプレゼントにゃ。」


1番手を取ったのはミーニャさんだった。


「有難うっす。」


イシュさんは喜んで、プレゼントを受け取り、開けた。出てきたのは猫のマグカップ。シータさんの時のプレゼントと色違いである。シータさんの時は白猫だったが、イシュさんの時は黒猫である。あと鱗用ソフトブラシ(お風呂用品)だった。


「可愛いっすね。シータさんとお揃いっすか。」

「ペアマグにゃ。恋人の特権にゃ。」


憎い演出です。


「では、これはアタシから。妥当でごめんなさいね。」

「有難うっす。兄貴。」


ベルさんからのプレゼントは銀色の懐中時計である。因みに時間の狂わない魔道具で、文字盤と針が暗闇でも金色に光る仕様。買いに行くとき一緒に行ったけど中々お高いです。デザインはクラシカルでお洒落。すごく使いやすそうな感じだ。


「大事にするっす。」

「では、予想通りでしょうが…私からはこれです。」


『3連アイテムガチャ/60万ギル』である。タブレットにお金を吸わせて選択し、ボタンを表示させた。


「待ってました!」

「今度は何が出るのかしらね。」

「イシュ、早く押すにゃ。」

「は、はいっす。…えい。」


イシュさんがタブレットのボタンを押した。

パパーン!と音が鳴った。

うな重(特上)×10:炭火でじっくりふっくら香ばしく焼かれ秘伝のタレを塗って更に焼かれた、身はほっくり、骨は柔らかな鰻のかば焼きと、もっちりとした艶々と甘みのある白米。適量の山椒が振られ、香り豊かに。(10人前)※精力増強。夜の生活にも期待。


「コメントが余計な一味を添えてるな。」

「10人前っすからみんなで食べるっす。箱に入ってるみたいっすね。」


パカリとお重を開ける。中には茶色いかば焼きが。


「聞いたことはあるけど、鰻って初めて食べるわね。」

「どんな生き物なんですか?」

「一応魚の分類ね。黒くて長くてうにょうにょした感じの。淡水魚?でも、産卵と孵化は海でって聞いたことあるわね。」

「へえ…」


まあ元の見た目はどうあれものは美味しそうに見えるし。とりあえず食べるのは後にしてガチャを続けて回す。

パパーン!

ベイビーアミュレット:霊験あらたかな子宝祈願のアミュレット。安産祈願も担っている。ペンダント型。


「……ジゼルさんのタブレットで『霊験あらたかな』って、本気で霊験あらたかそうで怖いっすね。」

「どうするんだそれ?」

「母さんにプレゼントするっす。自分も弟か妹欲しいっすし。」


現段階ではそれが真っ当な使い方だと思われる。


「最後ね。」

「大物来るかにゃ?」


イシュさんがぽちっとボタンを押した。

パパーン!

カラーチェンジアイズスクロール:開いた者の瞳の色を思った通りの色に変更できるスクロール。オッドアイも可能。効果持続時間は72時間。使い捨て。※色が変わるだけです。


「おお!憧れのオッドアイ!」

「ガチで邪眼ごっこが出来るっすね!金と赤のオッドアイなんかが格好良い気がするっす!」

「邪眼なら赤側の目の白目の部分を黒にすると格好良いんじゃないか!?」


シータさんとイシュさんは大はしゃぎ。


「罪深いスクロールにゃ…」


ミーニャさんは微妙そうな顔。


「ガチャって全部微妙な結果の場合もあるのね。」

「真面目に選べっていうことでしょうか…」


ベルさんと私も微妙な顔。果たしてこの3つのアイテムで良かったのだろうか…


「何言ってるっすか!ベルの兄貴、ジゼルさん!こんな嬉しいもの大当たりっすよ。効果が永続だったらちょっと微妙っすけど、3日間だけ邪眼ごっこを楽しめるなんて…!幼いころからの憧れだったんっす。」

「そうだぞ。実用的ではないかもしれんが、夢があっていいじゃないか。」

「まあ、プレゼントの本質は、他人から見た価値じゃなくて、貰った本人が喜んでるかどうかよね。」

「そうですね。3日間童心に返って遊べるアイテムもいいかもしれませんね。」


3日間くらい特殊な性癖を楽しむのも自由だろう。永遠にそっち側から帰ってこない…なんて事態だけはやめていただきたいが。


「最後はボクからだな。お誕生日おめでとう。イシュ。」


シータさんからのプレゼントは『シータが施す全身マッサージ券』×10とふかふか羊のぬいぐるみ枕である。


「マッサージ券っすか…」

「うふふ。シータはマッサージ上手よ?好きな女の子にお風呂上りに全身触られてイシュ君が微妙な気持ちにならないならいいんじゃない?」

「……気持ちは有り難いっす。」


マッサージ券はしばらく封印の予感。

それからみんなで昼食代わりにうな重を食べたが、これはかなり堪らない味わい。甘じょっぱいたれとふっくら焼かれた鰻が白米と合う。滅茶苦茶美味しい。


「旨いな!最高だ。」

「美味しいっす。」


みんな大満足の味わいだった。私たちは5人なので、一人につき2人前を食べた。シータさんは2人前だと少し物足りないようだけど。でも倍の20人前だったら流石に処分に悩んだと思う。しゃぶしゃぶで20人前って大した量じゃないけどうな重で20人前って洒落にならない量だから。


「イシュ君は、もう地元の友達と会ったのよね?」

「はいっす。見た目が変わってみんな驚いてたっす。シータさんを紹介したら『裏切り者!』って言われたっす。」

「シータは見た目は可愛いからにゃ。」

「『見た目は』ってどういう意味だ。」

「胃に手を当てて考えるにゃ。」


胸に手を当てて…ではない当たりが既に…いや。気持ち良く食べてくれるのはいいよ。


「イシュさんのお友達ってどんな感じですか?」


イシュさんは少し考え込んだ後喋った。


「普通っすね。自分女の子友達はいないっすから、あんまりモテない男集団っす。仲いい友人は4人しかいないっすけど。『裏切り者!』とは言われたけどなんだかんだ言って祝福してくれたっすよ。」


いい友達に恵まれているようだ。


「ここ数日一緒に過ごしてるが、イシュは故郷の女の子にモテモテだ。」


シータさんが微妙な顔をした。


「個人的にはすごい微妙っす。あの女の子たち、みんな、呪いがかかってた頃は『キモイから近寄んないで!』って自分に言ってた子たちっす。見た目が変わった途端にチヤホヤしてきてちょっと感じ悪いっす。」

「『見た目が好き』も好意を持つ一因だから、見た目が格好良い男の子に惹かれる気持ちはわかるにゃ。でも『格好良くなかったころ冷たくしてた』って事実があったらもうどうにもならないにゃ。掌返しはひたすら悪印象にゃ。」


だよねえ…せめて普通に接してたという事実がないと。


「夜は2人でデート?」

「いや。イシュは自宅に帰って親子水入らずで祝ってもらおうと思っている。これから先、デートはいつでもできるが、親子でいられる時間は少なくなるしな。」

「有難うっす。シータさん。両親にベイビーアミュレット渡してくるっす。両親ももう一人くらい子供ができれば寂しくないと思うっす。」

「ふふ。弟、妹ラッシュかしらね。」


皆で妹が良い、弟が良いと話し合った。私は15になった時きちんと自立できる子なら男の子でも女の子でも構わないけど、欲を言えば弟が良いかな。ハイン君みたいな可愛い弟。イシュさんは妹が良いらしい。「シータさんみたいな可愛い女の子が良いっす!」と言っていたが、ベルさんに「…ご両親が可哀想だから、不吉なお祈りはしないであげてちょうだい。」と言われていた。シータさんはむくれていた。でも自分がご両親にとって育てやすい子供ではなかったことも自覚があるらしく、怒るに怒れない…という風情だった。

皆でダラダラして、夕刻にイシュさんが出かけて行ったので、みんなでシータさんと私の髪を玩具にして遊んだ。色んな髪型を作ってみて、これはどう、あれはどうと。シータさんは綺麗な黒いストレートヘアなのだが、髪型を作るときにはサイドの巻き角が悩みどころ。ポニーが一番似合うけど、一本三つ編みも割と似合った。私は角がないので、髪型はフリーダム。どうも下ろしてるのが一番可愛いっぽいんだが。因みにミーニャさんは髪は短くしてる。肩につくかつかないかくらいの長さ。洗うのが楽でいいんだそうだ。ちょっと癖毛。

ベルさんは勿論ショートな訳だが、髪を弄るのは上手で、三つ編みハーフアップなんかを作ってくれる。私は緩い巻き毛なので、下ろしたり、ハーフアップにしたりすると少し華やかな感じである。


滅びのバーストクリスマス!!

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