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第53話

ベルさんとデートなのである。


「寒いわね。」

「そうですね。」


ベルさんはいつもに増して防寒きっちりである。お洒落なコートを着込み、私の誕生日にガチャで出たニットのスヌードを被ってぬくぬくしている。


「【エアヒート】かけますか?」

「折角スヌード着こめる時期なんだからそれをやったら勿体ない気がするわね。あれ暖かいけど、本当に春みたいにぬくぬくなんだもの。」

「そうですねえ。」

「白のダンジョンとか行ったら是非とも【エアヒート】かけてもらいたいけど。」


白のダンジョン…中が雪と氷で閉ざされたダンジョン。あそこもまた過酷な環境で、冒険者があまりいなかったところだけど、真・青のダンジョンが攻略されるようになる→水属性ドロップが出る→赤のダンジョンを攻略できるようになる→火属性ドロップが出る→白のダンジョンを攻略できるようになる…というチェインが出来てるんだよね。その先駆けとなったベルさんたちが真・青のダンジョン締め出しとかせつないです。


「ふふ。最近みんなでわいわいすることが多かったけど、こうやってジゼルちゃんと二人きりって言うのもやっぱりいいわね。」

「はい…」


照れるけど。

繋いだ手は温かい。2人で喫茶店に入った。


「2月のお勧めは『苺パフェ』と『苺とキウイのフルーツグラタン』ですって。」

「どんなでしょう?」

「『苺パフェ』は『アイスクリーム』って言う冷たいお菓子が入ってるみたいよ。『フルーツグラタン』はカスタードベースの温かいお菓子みたいね。」

「この物凄い寒い中冷たいお菓子ですか。」

「店内は風が無いから少し温かいけどね。」


試しに両方頼んでみることにした。

暫く待つと『苺パフェ』が来た。『苺パフェ』は随分美しい食べ物だった。透明な細長いガラスの器に苺の赤と生クリームの白の対比が鮮やかである。アイスクリーム?は白いのとピンクなのと2種類入っているようだ。長ーい銀のスプーンでいただく。ちょっと多めに掬ってパクリ。


「……!!」


頬を押さえて悶絶。これ超おいっしー!!ひんやり冷たいアイスとふわふわの生クリームに甘酸っぱい苺。とろっとした苺のソースがまた…堪らん美味しさ。

悶絶する私の様子を見てベルさんはニコニコである。


「喜んでるジゼルちゃん可愛い…」

「…有難うございます。」


ベルさんも自分の苺パフェを食べている。


「んー…美味しいけど…」

「何かご不満が?」

「いえ、このパフェにご不満はないのだけど…」


ベルさんが私の耳元で囁いた。


「これが【アイテム購入】で購入できたとして、木の器に入って出てくるのはちょっと…と思ってしまって…」

「確かに!…是非とも別料金をかけるべきですね。」


このガラスの器に入ってるから美しく、美味しそうなのだと思う。


「大概の食べ物において器にこだわりはないつもりだったけど、これはちょっとね。」


ベルさんも笑っている。

たっぷり苺パフェを堪能した後に出てきたのがフルーツグラタンである。陶器の器に入った…見た目は黄色っぽいマカロニの入ってそうなグラタンだが、匂いはとっても甘い。

スプーンですくって食べるとこっちは熱々トロトロである。


「あまーい。」

「ふふ。こっちも器は別料金ね。」

「そうですね。」

「トロトロしてて美味しいわ。苺もキウイも甘酸っぱい。」


旬の果物をたっぷり堪能。食後の紅茶で一息。サッパリしたストレートの紅茶で口の中の甘みを落とす。


「うーん…ちょっと小腹満たすだけのつもりだったんだけど、2品も食べると流石に昼食はちょっと。」

「ふふ。シータさんなら、『おやつと主食は別なんだぞ』って言いそうですね。」

「シータと一緒にしないでちょうだい。食においてはあの子絶対普通じゃないから。」

「パクパク食べて全然太りませんけど、シータさんの食べた栄養はどこに消えてるんでしょうね?」

「不思議よねえ。食べた分しっかり体内に溜め込む性質だったらあっという間におデブさんになってしまうと思うけど。」

「……私…最近たっぷり食べてますけどちょっと太りましたか?」


ベルさんは悪戯っぽく笑った。


「じゃあ、太ったかどうか、ご休息でたっぷり確かめさせてくれる?」


赤くなる。それはちょっとなー…子供じゃないんだから、恋人の前で服を脱いで何にもないなんて展開ないよね。ちょっとハードルお高めな気がします。


「うーん…年下の恋人が初々しくて、お兄さんとっても甘酸っぱいわ。」

「もう…」


流石にベルさんは余裕ありげな表情だ。愛おし気になでなでされてしまった。うう…嬉しいけど…愛でられて甘やかされるのは、嬉しくて恥ずかしいです…こんなに幸せでいいのかな?


「好きよ。ジゼルちゃん。」


甘い多幸感が襲ってくる。


「私もベルさんが好きです。」


ベルさんはしっとりと色っぽい顔に優しい笑みを浮かべた。こんな素敵な人が私の恋人なんだなー…去年の花祭りの頃は「私如きがあんな素敵な人に粉をかけるだなんて恐れ多い」って慄いてたのにね。最高に素敵な恋人を得てしまったよ。

食後は2人で市場をぶらぶらした。ベルさんはイシュさんのお誕生日プレゼントを迷っているようだ。私は飽きずにガチャを回させるつもりでいるので、何も考えてない。楽しいし、意外といいもの出てくるんだよね。


「ジゼルちゃんもご両親に何かお土産選んでおいたら?」

「そうですねえ…何がいいと思います?」


ベルさんに相談に乗ってもらって、木製の『丸鈴』という赤ちゃん用の玩具を購入した。角が全部丸くなっている円柱状の檻の中に大きな鈴が1個入っていて、振ると音が出てくる玩具だ。いくら動かしても鈴が出てきてしまうことはないし、全て安全な素材で出来ているので、口に入れても大丈夫らしい。木材はボルルックシティでは特産みたいだし。ベルさんは私の父にあげるお土産としてワインを購入していた。母体はあまり飲酒は嗜まない方がいいと、母には干しブドウを購入。気遣いが細かいなあ…

夜は美味しい鹿肉のシチューを頂きながらワインを開けた。


「べるさーん、あついー」

「あ!ジゼルちゃん脱いじゃダメ!ここは公衆の面前で、尚且つ冬よ!」

「あははは。べるさんがふたりいるうー。あついよー。」

「こら!脱がない!」

「いやーぬぐー。」

「もう…【アンチポイズン】」


急に頭がすっきりした。


「あ、あれ…?」

「ジゼルちゃん、ちょっと飲み過ぎちゃったみたいね。」

「すいません…」


服を脱ぎかけの私である。何があったかあんまり覚えてないが、如何にもダメな感じだ。


「【アンチポイズン】って酔い覚ましの効果があるのですか?」

「酔ってるのは、アルコール『中毒』だもの。毒状態よ。」

「へえ。…お手数をおかけしました。」

「いいけど、ジゼルちゃんほとんど飲めない体質なのね。ちょっと寂しいわ。」

「すいません。」


口移しでひと口だけワインを飲まされた。何だか渋いはずのワインが甘いような気がしてしまう。


「きっと、これが適量ね。」


ベルさんがウィンクした。


「はい…」


嬉し恥かし照れ照れである。


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