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第52話

マリーアネットシティから毎日乗合馬車で揺られること4週間、やっとボルルックシティが見えてきた。4週間も馬車に揺られていたら退屈するだろう?って?実は4週間ずっと訓練してたんです。うちのパーティーが売らずにとっておいた、アトラクションダンジョンボックスの中に、まずはベルさんとミーニャさんが入り、ベルさんに守られながらミーニャさんが『罠設置』の訓練。ミーニャさんは『罠設置』が苦手だったみたいだから、みっちり『罠設置』の訓練。その後、私とシータさんとイシュさんが一人ずつミーニャさんとベルさんに付き添われて中に入り、ミーニャさんの設置した罠を使って罠察知の訓練。これがまたかなり難しいんだ。ベルさんの言う隠蔽魔術が放つ特殊波形の魔力というのが全然わからない。4週間みっちり訓練したけど、ほんの少し手応えらしきものを覚えたのはシータさんだけだった。ミーニャさんは結構罠設置も上手になってきたようだが。とりあえず、時間を無駄にすることなく有意義には過ごせた。

旅の途中ではシータさんがスイーツボックスの中身をみんなに分けてくれて、みんなでスイーツとアイスブレンドハーブティーを楽しむ時間も取られた。スイーツボックスの中身超美味しいし。更にその甘みを爽やかに流してくれるブレンドハーブティーも相性抜群。ただしこの時期アイスハーブティーは実はちょっと冷たいな…なんて我儘なことを思ったりもした。ホットとアイス両方味わえたらもっと美味しいのに!


「ボルルックシティはなんて言うか…緑豊かだな!」

「田舎っすよね?」


イシュさんが苦笑している。


「カルティ村より都会にゃ。」

「ベネート村より都会です…」


観光地感あふれるマリーアネットシティと比べちゃうとちょっと田舎かもね。ごみごみした都会のサテライトシティと比べても…

イシュさんの話曰く葡萄農園が多いとのことだったが、どこを見ても木を生やした風景が広がっている。とりあえず乗合馬車から降りて門の前で門番にギルドカードをチェックされた。


「流石にイシュ君の家に5人で押し掛けるわけにもいかないから、どこかに宿を取りましょうか。」

「うちから近い宿屋はこっちっす。」


イシュ君に案内されてアットホームな感じの宿屋についた。


「ボネアさん、とりあえず1週間くらいお願いしたいんっすけど。」


中に入って声をかけると、奥から竜人族の女性が出てきた。


「はいはーい。おや。初めて見る顔だね。あたしを知ってんのかい?」


ボネアさんと言うのはややふっくらした身体つきの茶髪に茶色い瞳で、黒い角と青い尻尾の竜人族だ。年のころは20前後に見えるが長命種の女性の宿命たる濃いめのお化粧をしてるので、実際はあまり若くないのだろう。


「ははは。ボネアさん、自分イシュタルっす。」

「ああ、あんたイシュタルかい。本当に呪いが解けたんだね。何だい。リトリアーネそっくりの目元にシグルドそっくりの鼻筋と口じゃないか。その見た目ならもう不義の子なんて陰口叩かれることもないだろうね。…アンドレアの件は噂になってるよ。ツィーツェルタの方は帰ってはこないけどここ数ケ月音信不通らしいしね。」

「アンドレアさんとはあんまり鉢合わせしたくないっす。」

「とりあえず1週間ね。宿帳に記帳しておくれよ。」


皆で宿帳に記帳した。


「素泊まりだね。宿に泊まってるなら隣の食堂での食事は割引が利くよ。まあ外で食べてきてもいいし。好きにしな。」

「はいっす。」


一応部屋を確認した。こちらの宿では一人部屋を5つとった。あまり広い宿ではないので、一人部屋はほぼ埋まったと思う。収納リングがあるので、別に部屋に置く荷物もないので、すぐにみんなで集まった。


「とりあえずうちに行くっす。みんなを父さんと母さんに紹介したいっす。」

「楽しみね。」

「緊張するな。」


シータさんはパーティーメンバーとしてだけではなく、恋人としても紹介されちゃうから緊張するのも尋常ではないであろう。ちょっと強張った顔をしている。

イシュさんの案内で、まだ雪の残る道を歩く。

本当に葡萄農園が多い。ワイン工場もかなり多くあるっぽい。

イシュさんは一軒の割と綺麗に手入れされている家の扉に手をかけた。


「ただいまっす。」


中に入って声をかける。


「イシュ!?」


ものすごーく綺麗なご夫人が奥からやってきた。亜麻色の髪にぱっちりとした青い瞳。白い角に金色の尻尾の美少女…はい。見た目の年齢は、17,8歳くらいです。少女風のご夫人ですね。


「まあまあ。呪いが解けた姿はなんだか随分シグに似てるのね。」

「そう言えばそうっすね。」

「後ろの方がイシュのパーティーの方?」

「はいっす。皆さん、こちら自分の母のリトリアーネっす。母さん、右からベルファーレさん、ジゼルさん、シータさん、ミーニャさんっす。シータさんは自分の、その、恋人っす…」


イシュさんが照れて真っ赤になった。


「まあまあ。よく来てくださいました。狭いですけど、中へどうぞ。」


居間に入れてもらったが、流石に広々!というわけにはいかなかった。そもそも椅子が4人掛けなので、急遽他の部屋から椅子をかき集めて座った。それでも温かいお茶と、干した果実をお茶うけに出してくれた。

リトリアーネさんが聞きたがるので、イシュさんが、シータさんが他の冒険者に啖呵切ってイシュさんをパーティーに招いたところから語って聞かせている。手紙でも同じ話をしたらしいので二度目のお話ということになるがリトリアーネさんは楽しそうだった。

ダンジョナーの探索に入った時は随分心配した…とリトリアーネさんは言っていた。イシュさん愛されてるなあ…

夕刻になってくると、リトリアーネさんが席を立った。


「まあ、どうしましょう。もうこんな時間。皆さんお夕飯食べて行ってくださいな。私はちょっと買い物に行ってきますから…」


とパタパタと出て行った。そりゃあ急に5人で押しかけて普通に夕食の食材が揃ってるわけもないよね。

イシュさんがみんなを自室に案内して小さい頃に書いた絵などを見せてくれた。子供特有の歪なタッチで両親と手を繋いだイシュさんの姿が描かれていた。


「リトリアーネさんは美人だったな。」

「そっすね。母の同年代の人はみんな『評判の美少女だった』って言うっす。」

「夫婦仲はいいにゃ?」

「自分がいた頃は熱々だったっす。」


小さな頃大切にしていた絵本とかも見せてくれた。『封印されし右腕』とか『邪眼の貴公子』とか微妙なタイトルだったけど。シータさんは喜んで読んでいるけど。


「この邪眼にすごい憧れて。小さな頃は邪眼ごっこよくやったっす。」

「わかるなー。」


シータさんとイシュさんはすごく盛り上がっているが、私とベルさんとミーニャさんはちょっと微妙な顔だ。


「まあ、子供のすることだから…」

「今やり始めたらどうします?」

「全力で矯正するわ。」


私とベルさんは心なしか遠巻きである。


「この『最初から全て視えていた…』って決め台詞が格好良いっす。」

「痺れるな。」

「罪深い絵本にゃ。」


ミーニャさんが呟いた。


「現実では絶対真似してほしくないわね。」

「温度差が広がります。」


暫くするとリトリアーネさんが帰ってきたので、私とベルさんがお手伝いを申し出て、リトリアーネさんとお料理。今日の料理は全てリトリアーネさんの指示通りに作った、イシュさんの家庭の味である。兎肉のクリームシチューだそうだ。買ってきたふわふわの白パンと、サラダを添えて。料理が出来上がる頃になるとイシュさんのお父さんであるシグルドさんも帰ってきてた。紹介してもらったが、銀髪に緑の瞳。白い角に銀の尻尾のものすごい美男子だった。20代前半くらいの見た目に見える。イシュさんとよく似ている。


「イシュ。久しぶりだね。まあ、随分と変わってしまって…」


イシュさんが私たちを紹介。全員で夕食。テーブル狭いですが、みんなでみちみちに座った。シータさんがイシュさんのご両親の手前、控えめに食べてるのを見て、イシュさんが「もっと食べてくださいっす。」とガンガン勧めていた。


「イシュ、女の子がそんなにたくさん食べられるはずないじゃない。無理言っちゃダメよ。」

「そうだぞ。」


両親にイシュさんが注意されて、シータさんが申し訳なさそうに、本当は、1食に成人男性の2,3人前はペロリと食べられるという真実を述べていた。イシュさんのご両親は懐疑的だったが、シータさんがいつも通りペロリすると驚いていた。


「ううむ。細い体なのに健康的なお嬢さんなのだね。」

「ごめんなさい。この子本当によく食べる子で…」


ベルさんが申し訳なさそうに謝っていた。


「健康なのは良いことよ。」


リトリアーネさんは驚いてはいたが、ニコニコしていた。

食後はシータさんのスイーツボックスでサツマイモのタルトが出たので8等分してみんなで食べた。アイスハーブティーと共に。リトリアーネさんもシグルドさんも喜んでいた。

イシュさんのダンジョンでの活躍ぶりなんかをみんなでお喋りしていたらあっという間に時間が経った。

夜になってお暇して宿で休んだ。


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