表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/70

第51話

なんだか最近変である。冒険者ギルドへ行くとやたら期待のこもった瞳で、若い冒険者層に見つめられる。私たちの前でわざと物を落としてみたり、隣にポジショニングしてみたり。ヒソヒソちらちら見られる。


「なんか最近変だな。」


シータさんも首を傾げている。


「どう思います?ベルさん。」

「そうねえ…どこかの誰かさんが、アタシたちの情報を漏洩した疑いがあるわね。」


ベルさんはそう言いながらコリンナさんに目をやった。コリンナさんが目を泳がせた。


「ギルドの守秘義務はどうなったのかしら?」


にっこり微笑んでコリンナさんに問いかける。


「す、すいません…!!」


コリンナさんに個室に招かれた。VIPな個室じゃなくて、普通の個人面接に使われるような小さな個室だ。コリンナさんだけの権限で使える部屋なのだろう。


「それで、どの情報を漏洩してくれちゃったの?」


個室でベルさんがコリンナさんに問いかける。


「そ、そのぉ…『銀の匙』のパーティーランクの事とか、平均年齢の事とか、一日の稼ぎの事とか、『すごいよねぇ』って飲み屋で同僚にペロッと漏らしたのが周囲に聞かれてたみたいで…」


それが漏れてどうしてあんなに注目されるのか、私はピンと来なかったがイシュさんやシータさんもピンと来ていないようだ。ミーニャさんはピンときたらしく微妙な顔をしている。


「どういうことだ?兄殿。」

「まずランクの話をしましょうか。アタシはCランクだけど、シータはD 、ジゼルちゃんはE、イシュ君もEね?緑のダンジョンにいた頃アタシたち『銀の匙』のパーティーとしてのランクは、半数がDランク以上の、Dランクパーティーだったわけ。ところが青のダンジョンに来てからミーニャちゃんが加入してEランクが1人増えた。半数以上がEランクである、Eランクパーティーになったの。次に一日の稼ぎの話をしましょうか。普通のEランクパーティーの一日の稼ぎってどれくらいだと思う?」


なんとなくおぼろげに言いたいことが掴めてきた気がする。


「私がFランカーで2人パーティーだったころは2人合わせて10420ギルくらいが1日の稼ぎでした。5人パーティーだったとしたら26000ギルくらい?Eランクだともう少し上なはずですが……」

「答えは4~5万ギルよ。5人いる計算でね。真・青のダンジョンなら素材の買い取り額が高騰してるからその倍くらいかしらね?9~10万。で、実際稼いでる方の金額はうちのパーティーだと1000万ギル以上でしょう?緑のダンジョンだったら素材が溢れてるから半額くらいになるかもしれないけど、真・青のダンジョンではまだダンジョン素材が追加されたばかりで値が高騰してるから、かなり稼いでるでしょ?収納バッグでポーターいらずの大量収納だし。さらに宝箱を見つけた時や、サハギンがレアドロ吐くともっと上がるわね。全体がCランク相当で収納バッグを持ってるパーティーならそれくらい珍しくもない額だけど、みんながみんな収納バッグを持ってるわけじゃないし、Eランクパーティーなのよ。おまけにアタシ以外はみんな18,9の若者パーティー。」

「そんな情報流れたら『自分もパーティーに潜り込めたら美味しい思いが出来るのに!』って期待する若者は多いはずにゃ。Eランクの20歳未満でも日給200万ギル稼げるパーティーにゃ。」


なるほど。


「期待の目で見ちゃいますね…」

「それだけならまだいいのよ。問題は『1日で1000万ギル稼げるパーティー』と言われれば当然『収納バッグを所持している』ことはすぐに察せられる。次に起こるのは何だと思う?」

「悪心を起こしたパーティーの強盗かにゃ?」

「それがアタシの懸念。ランク自体はEランクのパーティーだもの。『人数揃えてダンジョン内でボコれば収納バッグを奪えるかも…』なんて考える奴らが出てくるのは時間の問題ね。あーあ。折角楽しくダンジョン探索してたのに。コリンナちゃん。この落とし前どうつけてくれるの?」

「すいませえええええんん!!!」


コリンナさんは平謝りだ。謝られたところでどうしようもないのだが。もう面が割れてるし、噂も出回っちゃってるから。


「どうするんっすか?ベルの兄貴。」

「どうしようもないわ。本当はもうちょっと暖かくなるまで、温泉でのんびりしながら、こっそり真・青のダンジョンでガッツリ稼ぎたかったけど。余計な騒動に巻き込まれる前に旅立つべきね。マリーアネットシティに戻って来るなら噂がうやむやになって、他のパーティーが持て囃されるようになるくらいのクール期間を置くしかないわ。その頃には真・青のダンジョンの素材は出回って、稼ぎ的には今よりずっと美味しくないダンジョンになってるでしょうけど。」

「すいませえええええええんん!!」

「貴重な情報提供までしてギルドに貢献したのに、がっかりだな。」

「すいませえええええんん!!」


確かに。私は別に何も頑張ってないけど、ベルさんとシータさんは多分ちゃんと青のダンジョンの伝承を調べて研究して、真・青のダンジョンへ到達する情報を集め、試行錯誤していたはずだ。共鳴のイヤリング購入してまで謎を解いたのに。これから来る、真・青のダンジョンフィーバーの立役者と言って過言ではない。それなのにこの仕打ちはあんまりだ。がっかりとしか言いようがない。


「悔しいけど、コリンナちゃんに復讐しても何も始まらないものね。数日宿で温泉とお魚を堪能して、マリーアネットシティを旅立ちましょう。ちょっと予定を先倒しして、行先はボルルックシティよ。ジゼルちゃんとイシュ君は手紙の方を書いておいた方がいいわ。」

「はい。」

「はいっす。」


両親に諸事情があって予定を先倒ししてマリーアネットシティを旅立つことになった旨手紙に綴った。次の行き先はボルルックシティの予定だけど、またそのうち手紙を送るから、と。



***

黒曜屋で超まったり過ごした。温泉は【アイテム購入】では買えない素晴らしいものだしね。もうしばらくはいることはないと思うと、名残惜しくて、温泉に入る回数も時間も増えた。ベルさんとシータさんはそれぞれの友達とも少し会っていたようだ。二人が飲みに行った日は私とイシュさんとミーニャさんで少し飲んだが、ミーニャさんが「ジゼルが奇妙な踊りを踊ったにゃ。」と言っていた。イシュさんも控えめに「すごい酔っぱらってたっす。」と言っていた。翌朝はすごい頭がガンガンして、胸やけがしていた。お酒は控えようと思った。


「寂しいわねえ。また帰ってきてちょうだいね。ハインも大きくなったらまたお兄さんとお姉さんがいることを教えないといけないし。」


テルマさんがハイン君を抱えながら言った。


「そうねえ。もうちょっとハインとも遊べると思ってたんだけどねえ。」

「にー。」


ハイン君がベルさんに手を伸ばしてきた。ベルさんがその手を掴んであやす。


「ハイン。にーとねーは冒険に行くのよ。……忘れちゃうんでしょうけど、また会いに来たときは『にー』って呼んでちょうだいね。」

「ううう。ハイン…ねーはもっとハインと遊びたかったぞ!!」


シータさんはうるっとしてしまったようだ。


「ねー。」


ハイン君はシータさんの髪を引っ張った。


「ジゼルちゃんもイシュ君もミーニャちゃんも、不束な息子と娘を宜しくね。」


サクヤさんに頭を下げられた。


「寧ろ私の方がお世話になりっぱなしです。」

「そうっす。」

「にゃーも拾ってもらえて感謝してるにゃ。」

「ははは。ならいいけど。ジゼルちゃんとイシュ君には恋愛的な意味でも宜しくね。次遊びに来てくれた時破局してたりしたら、僕ちょっとショックだな。」

「父さん、不吉なこと言わないでちょうだい。」


ベルさんがサクヤさんに注意した。


「それじゃあ、もう行くわ。みんな、見送りありがとう。」

「またいずれ。」


私達はテルマさんとサクヤさんとハイン君に見送られ、旅館を後にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ