第37話
海にも行ったのだが…体型が変わってしまったのでイシュさんの水着が買い替え。どころかイシュさんの衣類は総買い替え。体型が変わりすぎた。「嬉しいけど悲しいっす。」と財布を薄くしていた。2手に分かれての海デートは満喫した。随分泳げるようになったので、ベルさんに少し沖合にある島というのにつれて行ってもらった。泳ぐのは疲れたけど、中々の癒し空間だった。人少なかったしイチャイチャもできた。
***
という感じで海を満喫して8月が終わった。
「じゃあ、9月になったし、青のダンジョンの探索をぼちぼち始めるか。」
「はい。」
イシュさんは防具も買い替えだった。サイズがね。でも以前と違ってサイズは平均になったので、服の種類は選ぶ幅が広がったようだ。
「青のタンジョンは敵はあんまり強くないけど、気を抜きすぎないように気をつけてね。」
「はいっす。」
私達は支度をして青のダンジョンに足を踏み入れた。緑のダンジョンとは随分趣が違う…と思った。ごつごつとした洞窟のような造り。ほのかに苔のような物質で壁が光って視界は確保できてるんだけど。
「ジゼルちゃん、水属性モンスターの弱点属性は雷よ。【エンチャント・雷】お願いね。」
「はい。」
ベルさんに言われて全員に【エンチャント・雷】をかけた。
飛び出てきたのは魚に人間の腕と足が生えた奇妙な魔物。体長は170cmくらいある。銛を持って襲い掛かってきた。軽くスラッシュしてみただけで魚肉と魔石に変わった。
「鰤ね。」
「結構弱いんですね。まだ1階層だからでしょうか。」
「10階層まであるけど基本皆これくらいの強さよ。」
「……。」
「あんまり稼ぐことは期待しない方がいいわ。美味しいお魚を食べるのよ。」
本当に『お魚牧場』だった。Hランクあたりが調子に乗って潜ると返り討ちにされそうな雰囲気はあるが、Fランカーくらいで十分余裕で倒せるレベル。強い魔物でもウニとか蟹や海老だ。貝類も意外と硬い。
ウニは栗みたいなイガイガで体を覆っている生き物。カニやエビは外殻が少し硬め。【エンチャント・雷】の敵じゃないけど。
「今日は鰤が多めね。とっておきの鰤料理を出してもらいましょう。イシュ君、そっちに2匹行ったわ。」
「了解っす。」
手分けして狩りまくる。5層目まで潜ったが、収納リングにたっぷりお魚が保管された。
***
厨房にお魚を持ち込んで手数料を払って調理してもらった。鰤料理は絶品だった。刺身に、しゃぶしゃぶ、鰤照り。堪能。脂が乗っててこれまた美味しい。因みにしゃぶしゃぶを食べるときは専用の魔道具コンロがある。スイッチでON/OFF切り替えできる火の安定したコンロだ。言うまでもなく高価。一部の食事処や旅館は所持していることが多いらしい。
「しゃぶしゃぶ堪りません~!!」
「程よく脂が落ちて身が締まって美味しいのよね。ポン酢でスルスル食べられちゃう。こっちの甘エビのお刺身も美味しいわよ。」
ベルさんのお勧めで醤油をちょっとだけつけて、甘エビの身をちゅるんと吸い取った。これまたねっとり甘くて美味。
「最高ですう…」
「ふふふ。美味しいわよね。稼げないことだけが唯一の難点なのだけど。」
漁師の縄張りがあるから魚肉は買い取ってもらえないし、極小の魔石ではたかが知れている。今日の稼ぎは総額2万だった。一人頭5000ギルの計算。旅館に泊まるのもただではないし、生活は結構苦しいかも。魚肉持ち込みで食事代は安く上がるけど、泊まりの宿代と収入でやや足が出る。温泉旅館高いから。仕送りしている余裕はなさそうな。
両親には手紙で謝っておこう。
手紙と言えばイシュさんも両親への手紙の文面を書きあぐねているようだ。呪いが解けて醜くなくなった……のはいいんだけれど、両親と再会した時、両親が自分をきちんと息子と認識してくれるか不安になっている模様。
***
食後はサクヤさんがハインアルフェ君を連れてやってきたので、みんなで戯れた。ベルさんはこの前お誕生日に貰った絵本をハイン君に読み聞かせている。ハイン君はまだあまり意味が分かっていないようだが大変楽しんでいるようだ。
「そう言えば、父さん。アタシ、このジゼルちゃんと付き合うことになったから。」
「そうなのかい?今度はゴールイン間際に振られないと良いね。ジゼルちゃん、ちょっと個性的な口調の息子だけれど、よろしくね。」
「はい。」
前の彼女さんとはゴールイン間際だったのか。ちょっとヤキモチを妬いてしまう。ヤキモチ妬いてたらベルさんに撫でられた。
「父殿。ボクもイシュと付き合うことになったぞ。」
シータさんが照れ臭そうに報告した。
「ええっ!?イシュ君正気かい!?相手はシータだよ!?」
「…………父殿。それはどういう意味かな?」
シータさんが指をぽきぽき鳴らした。
「はっはっは。」
サクヤさんは笑ってごまかしている。
「シータさんは明るくて可愛くて優しくて自分には過ぎた人っす。でもそんなシータさんが自分を望んでくれるならこんなに嬉しいことはないっす。自分もシータさんが好きなので。」
イシュさんが真っ赤になった。
「ほうほう。それにしてもイシュ君は最初会ったときと全然見た目が違っているんだが…」
シータさんがイシュさんが今まで呪われていたこと、とあるきっかけがあって呪い返しに成功したことなどを述べている。
「呪いか…呪われた姿も結構愛嬌があったが、本来の姿は中々美しかったんだね。」
「有難うっす。」
「今の姿なら女の子なんてより取り見取りなんじゃないかい?」
「うーん…うまく言えないっすけど。これから先自分をチヤホヤしてくれるのは見た目に惹かれた女の子っす。その点シータさんは見た目にはこだわらないっていう安心感?信頼?みたいなのがあって、嬉しいんっす。」
これは呪いが解ける前に告白した利点だね。呪いが解けた直後に告白したんじゃ「結局見た目かよ」と思われてた可能性もあるし。
「ふんふん。いやー我が子たちは春爛漫だね。もう秋だけど。ベル、今度秋刀魚とってきておくれよ。僕は秋刀魚が食べたい。」
「ダンジョンにいればね。」
秋刀魚…どんな魚だろう。




