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神様殺しの言行録  作者: 立川和
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第四章 七節 神様殺し




「今になってなお、僕との実力差をはかり違えるとは人間の愚鈍には呆れを通り越して、滑稽すら覚える」


 天照は頭を掻きあげながら、手を振るう。


 それに合わせ、水柱が西城に迫る。


 しかし、西城は能力を使う素振りを一切見せない。


 草薙剣のレプリカが花弁のように合わさり、何重もの盾を作り上げたのだ。


「ふん、そんな紛い物で僕を超えられると思っていたのか?」


 水柱の勢いが強まる。


 いくらかは耐え忍んだが、遂に草薙剣のレプリカによって作られた盾は崩れ去る。


 そして、()()()()西()()()姿()()()()()()


「ッ!!?」


「こっちだクサレ野郎!!」


 天照は上空に目を向ける。


 そこには天照へと突っ込んでくる西城がいた。


 水柱を受けている間に一本の草薙剣のレプリカに乗り、上空へ移動したのである。


「チッ!」


「消えろ!!」


 ()()()()()()


 西城を取り囲んだ水柱が一瞬で消え去る。天照には焦りの色が滲んでいた。


「……お前が言ったふざけた世界論なんて知ったこっちゃねぇ。こっちはこんな世界でも満足してるんだ!」


 西城は叫ぶ。追い詰められている天照をさらに追い詰めるように。


「……運命が決まっているだと?だったらそんなくそったれた運命なんざ俺がここで捻じ曲げてやる!!」


 そして、ようやく西城は天照の胸ぐらを掴む。


()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」


 額同士がぶつかり、火花を散らす。


 浮力を失った西城と天照は重力に従って海へと落ち行く。

 

 だが、その途中で変化があった。


「結局、僕の勝利だ。たった今、神核を掌握したのだからな」


「ッ!!」


 西城が能力を使おうとするが既に遅い。


 天照の体が発光する。


 光源に近づきすぎると焼け死ぬ。それは一般教養として当たり前のことだった。


「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」


 西城の全身に焼けただれたような痛みが走る。


 いや、痛みという表現には程遠い焼失に似た現象。


 常人なら手を離し、海へとダイブするだろう。だが、西城は違った。


 離すわけでもなく、留まり続けるわけでもなく、ただ単純に一番強い光に手を伸ばし続けたのだ。


「なぜだ!離せ、離せ!!」


 動揺を隠しきれない天照は西城と空中で揉み合いになる。


 けれど、西城は離さない。


 痛みを恐れ、踏み込むことを止めれば全てが無駄になる。


 援護を頼んだ天宇受売命。


 橋を架けた天手力男命。


 最後まで西城を導いた天照大御神。


 そして、共に約束を交わしたライン。


 他の全ての事柄さえ無に回帰してしまうのだ。


 だから、だから西城は、()()()は手を離さない。


「や、やめろッ!!」


 海面からあと数十メートルの所で西城は神核に触れる。


 天照が最後の抵抗に出るが、西城には一切効かなかった。


「—————————————」


 言葉は無かった。


 いや、言葉を発したのかもしれないけれど、西城の焼けただれた口からは何も聞こえなかった。


 けれど。


 ()()()()()()


「あ、ああああああああ!!私を構成する式が壊れていく!」


 天照は頭を抱えるが、すでにその半分が消失している。


 神核を失い、さらに西城の能力による影響で術式が破壊されたのだった。


「……そうか、西城幸助。………お前は……お前の能力はッ!…………」


 こうして、悟ったような顔になった天照は言い残すように世界から消失した。


 跡形もなく、空気に溶けるように消えた。

 

 そして、西城は自由落下を続け、海面へと叩きつけられたのだった。





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