終章 ついてない少年の非日常
『昨夜未明、都内のビルで爆発事件があり、捜査当局は事故の方向で捜査を進めています。また、奇跡的に死者はおらず、負傷者のみという形に……』
『えー聖都市の漁港です。何やら大きなクレータが出来ており、昨日まであった倉庫や船が遠くへ飛ばされてしまっている状況です。現在は……』
『いや、これは怪奇現象というより、神隠しみたいなものですよね。実際、神社の境内も壊れてますし、都心部と住宅地を結ぶ橋も崩壊してたそうですからね。やはり……』
頭と腕に包帯を巻いている西城は過ぎ行く電気屋のテレビから流れる事件の真相をメディア各社がどのように捉えているのかを小耳にはさんでいた。
テレビや新聞では死者がいない奇跡だと取り上げているが、その裏では二人の犠牲があったということを西城は忘れていない。
「……もうあれから三日か」
戦闘後、海面に叩きつけられ気を失った西城は何度も生死の境をさまよったらしい。
焼きただれの上に海水を浴びたため、初めて目を覚ました時は激痛に襲われたのを覚えている。
今、西城の命があるのは天才的な医者の技術と天宇受売命やラインの助力のおかげだ。
聞くところによると、後者の二人は俺に応急処置をして、病院に連れてくると忽然と姿を消したようだ。
確かに神様と追われていた天使がずっと現世にいるのもおかしな話である。
「はぁ、思えば酷い一日だった」
天使に合い、神と対峙し、精神をズタズタにされ、死ぬ間際まで戦った。
それが一日に起こったというのだから本当にどうかしている。
人間やろうと思えば何でもできるというが今回はキャパシティを超えている気がするのは気のせいではないはずだ。
「………結局、約束は守れずじまい。どうしたもんかなぁ?」
最後にラインとしっかり話しておくべきだったと西城は後悔する。
ともあれ、無事に退院できたことを祝い、一人寂しく祝砲を上げようとコンビニで適当な食べ物を買う。
天手力男命の戦闘で壊れた橋は補助修理が終わっており、端道なら歩けるようになっていた。
風が肌にあたり、ヒリヒリするのを感じながら西城は立ち止まる。
一つ嫌な予感がしたのだ。
「……やっぱり割り箸が入ってねぇ」
今後はあのコンビニにお世話にならないでおこうと決心する西城はついてないとため息を吐き、空を見上げる。
「…………は?」
そこには巫女がいた。
ぐぎゅるるるるるるるるるるるるるるるぅぅぅ。
そしてついでにお腹もすかせていた。
「……………」
「………………」
「おーけ、おーけ。ツッコミたいのはやまやまだ。だからあえて言わせてもらう。何やってんだ暴食権化のラインさん?」
「なッ!?暴食権化って何!?バカにしてるの!」
「そのままバカの上等文句を続けるつもりか?成長してないなおい」
すぐに地面に降りて、抗議を申し立てるラインを西城は軽くあしらう。
たとえ、神と戦ったといえども彼らの関係は変わらないようだ。
「はぁ、全く……帰ってきたぞ、ライン」
「うん。お帰りなさい、幸助」
約束を確かめ合う二人。共に笑みを作って笑い返す。
「では、さっそく献上品をいただきますかな?」
「まてまて、いつからこれがお前への献上品になった」
「え?くれるんじゃないの?」
西城とラインは喋りながら共に歩みを進める。
どこへ続くはわからない。だが、確かな足取りで彼らは前に向かう。
これはちょっとした非日常に足を踏み入れただけの話。
軌道修正をすれば、すぐそこには日常がある。
果たして、神様殺しが日常に戻れるかはわからない。
それでも、今、西城が歩くのは普遍的な日々の毎日。
主人公が慈しむ日常なのであった。
一応、これで完結です。
とはいえ、色々な謎を残していたりするので、また書き始めると思います。よろしくお願いします。
※書き始める時は活動報告の方に『次回予告』のようなものを入れたいと思います。
感想等も受け付けております。




