第四章 二節 追い付く手段
さあ、方向性は決まった。
後は手段だ。
天手力男命の見解だとラインに憑りついていたのは天照大御神であった。
つまり、日本の最高神と殺し合いをしなければならないのだ。
欠点だらけの異能だけでは心もとないのは言うまでもない。天照大御神に関する弱点を持っていた方が賢明である。
「……天照大御神の弱点か」
神である上にその中の頂点である存在に果たして弱点などあるのだろうかと西城は頭を悩ます。
そんな果て無い思考を破ったのは衛士の驚いた声であった。
「今、なんて……?」
「何か知ってることがあるのか?天照大御神に関することだったらなんだっていい」
そう言う西城に衛士は黙って片手に持っていた紙束を差し出した。
「『天照大御神による伝承、伝説の解釈』?なんだこれ?」
「衛士案件の事件の概要なんですけど、困っているようですし見せてあげますよ」
西城は差し出された紙束を急いで捲っていく。
途中、事件の内容が書かれていたが、そこは流し読んでいく。
ラインが言っていたではないか。
魔法というものは世界の法則や神話や伝承を元に作っていると。
もしも、西城が考えていることが正しければ何かがあるはずだ。
しばらくして紙束を捲る西城の手が止まる。
「……あった。これだ。これがあったからッ!!」
西城はついに真実へとたどり着く。
天手力男命の言動の謎も天照大御神の人類滅亡も全て一つの術式のせいだったのだ。
だが、今の西城が分かったところでラインたちの現状は変わらない。
この事実をラインたちに伝えなければならないである。
「くそッ!この時間じゃ公共交通機関は動いてない。そもそも動いてたとして、ここから港までは圧倒的に時間が足りない」
現在地から港まで下手をすれば二時間以上かかる。天手力男命たちと別れてから既に三十分は経っているので追い付くことは難しい。
さらに言うと、彼らは神だ。
距離など容易くあしらってしまうに違いない。
そこでふと西城は目の前の衛士を見上げた。
情報の提供者は彼女であるのは分かりきっていることである。では、彼女はこの情報をどこに届けようと
したのだろうか。
その疑問が西城を一つの結論へと導く。
「なんだお前ら?こんな時間にこんな場所で。清い交際なら許せるが……」
「山篠先生ッ!?」
門の向こう側で白衣の山篠が忽然と立っていた。
あまりの気配のなさに驚く西城だったが、その顔はすぐに真剣さが戻る。
「山篠先生、頼みがある。港まで車を出してくれないか?」
先生に頼む。
これが最も最適な答えだった。
衛士が提出をするとなればそれは衛士たちを管轄する教師陣である。
その中でも西城の担任でもある山篠の助力を受けることができる状態にあることは西城にとって喜ばしい限りだった。
「……ほう。それは早急なことなのか?」
「ああ、人命が掛かってる」
西城の目をジッと見つめた後、山篠はふぅと息を吐いて白衣の内ポケットから車のキーらしきものを取り出した。
次に衛士へと問いかける。
「それでそっちはどういう要件だ?」
「あ、私は先生が返ってくるまで待たせてもらいます」
「すまんな。そうしてくれ」
山篠は謝りつつ校門の鍵を外し、西城を校内へと招き入れる。
速足で山篠の愛車である赤いスポーツカーに二人は乗り込む。
しばらくしてエンジンが付き、何度も激しい音が続いた。
「西城。何があったのかは知らんが、私の経験上お前は明日の補習を受けれないだろうと予測する。」
まるで歴戦のドライバーのような顔つきになった山篠はこう言う。
「よって、お前には今から地獄を見てもらう」




