第三章 三節 作戦会議
「今のうちに作戦会議といきましょうか」
「ああ、ラインを助けるためにどうすればいいのか。その解決策をだ」
俺と天宇受売命はお互いに合意して話を進める。
「と言っても、解決策は至って簡単です。海外にラインを連れ出せばいいだけですから」
海外逃亡と言い換えても不思議はないその言い方に西城はそこはかとなく犯罪めいたことをしている気分になる。
しかし、天宇受売命からすれば真剣な話し合いであり、目的を一致させることは不可欠なのだ。
「海外に逃げればいいってことか。だったら、空港か港かのどっちかだな」
「できれば、港の方がいいです。船は戦闘になっても戦いやすいですし」
目的は決まった。
港を目指し出発する前に西城は疑問に思ったことを口にする。
「逃げるのは海外じゃないといけないのか?他の神様に頼るものいいと思うけど」
ラインがファミレスで言っていたことを西城は思い出す。
国内の神々に頼るというのも一つの手ではあるのだ。
「確かに頼れますが信頼できるかどうかは別問題です。それにいくらラインの巫女服に隠蔽系統の魔法がかかっているとはいえ、他の神に頼ってもバレるものはバレます」
「ちょっと待て。ラインは巫女服に魔法がかかってるなんて一言も言ってなかったぞ?」
「それはそうですよ。言ってないんですから」
天宇受売命のラインに対する愛が本当に重い。
そのことを改めて西城は痛感する。
「ちなみに、その巫女服は私が作ったんですよ」
「そんなことは聞いてない」
堂々と胸を張る天宇受売命を西城は適当にあしらう。
神様に対しての礼儀はないのだろうかと疑いたくなるようなあしらい方だった。
「まぁ、海外に逃げる理由としては、日本の神が干渉できないことが大きいですね」
「干渉できない?」
「ええ、神の中にも派閥があり、神話ごとに地域に分かれ、互いの領域を犯してはならないという暗黙のルールがあるのです。といっても、神は自由奔放な性格なのでほぼ破ってはいますが」
そんなのを暗黙のルールにしていていいのだろうかと西城は心配になる。
ともあれ、これで海外に逃げる理由を西城は理解した。
他に何かあっただろうかと西城が思案していると天宇受売命が問いかける。
「あなたの能力について一ついいですか?」
「え?」
逃亡作戦から一変して能力の話となったため、西城は驚きの声を上げる。
表情にも困惑の色が出ていたのか、天宇受売命は少し間をあけて喋り始めた。
「その能力……確か、言葉でしたか。私の見方だとそれは言霊の一種だと思うのです」
「言霊?」
西城は眉を潜める。
言葉に霊的な力が宿っていること。それが言霊という意味である。
だが、西城の能力が霊的なものかと問われれば、それは違うはずだ。
「正確には言葉に想いをのせるといった意味での言霊ですよ」
「ああ、それなら合ってると思う」
「やはりそうですか。ならば、気をつけてください。言葉は容易く傷つけることができる劇薬のようなものです。使いどころを間違えれば、自らを傷つけるになりますよ」
「…………」
天宇受売命の言っていることは的を得ていた。
西城だって自身の能力の全てを把握しているわけでもないのだ。
これは聖都市の異能者全員に言えることだろう。
「理解していただければ良いのです。今後の戦闘でもあなたに頼ることになるでしょうから……」
天宇受売命の力だけでは他の神をさばき切れないということだろうか。
そういえば、ラインが弱体化とか荒魂化とか言っていた気がするが、と西城は思案する。
「弱体化のせいか?」
そのことは的を得ていたらしく天宇受売命の顔が驚いた表情になる。
「……ラインから聞いていたのですか。大方、あなたの考えは合っていますよ。神々が現世に降りる際に人間に近い存在になります。といっても超人以下にはなれませんが」
西城は天手力男命に勝てた理由をやっと理解する。
しかしながら、超人になった天手力男命を西城が打ち破ったことは事実である。
「弱体化しないようにはならないのか?」
「ほとんどありませんね。弱体化は現世に影響を与えないように神々に科されたルールというか法則みたいなものですから。上位の神ならば法則を強引に捻じ曲げることも可能ですが、世界が一変しかねない危険性を秘めているのでそんなことはしないでしょうし」
西城は悩ましい顔になる。
天宇受売命が弱体化しなければラインを逃がす手助けになるはずだ。
何とかならないのかと考えていると天宇受売命が立ち上がった。




