第二章 十節 揺らぐ真実
「他に頼る人がいなかったからね。後は言行録に書いてあったし、異能者だったからかな」
ラインが答えた内容に西城は違和感を覚えた。
そして、すぐにその違和感の正体が天宇受売命の話とつながっていると気が付く。
「そうだ。異能ってのは一体何なんだよ。天宇受売命は神の力って言ってたけど……」
「その認識はあってるよ。神々が持つ魔法とは違う伝承やら神話やらを無視した力。それが神の力であり、幸助が持つ異能なの」
西城は改めて衝撃を受ける。
このことは西城だけが知らないということではないのだろう。聖都市の七割。いや、八割以上が知らないはずだ。
西城は固唾を呑み、天宇受売命が答えなかった質問をラインに問いかける。
「でも、それだと異能は神様が持ってるもんなんだろ?なんで人間がそんな物騒な力を持っているんだ?」
ここからは未知の領域だという意識が西城の中にあった。
また、少なくとも普通な答えが返ってくることはないと西城は思う。これまでのことを考えると当然のことだろう。
「幸助は神の介入って知ってる?」
「神々が現世に降り、人間に関与したっていわれる出来事だろ?授業でも普通にやるけど……あれって謎に包まれてなかったっけ?」
当時、神という存在自体が曖昧であったことと神やら天使やらが一斉に日本中を攻撃したこともあり、神の介入に関する情報が全くないのだ。
「人類の間でどういわれているかは分からないけど、神の介入にはある事情が絡んでるの」
「ある事情?」
「そう、一言主と呼ばれる神があらゆる神の力を奪い、地上に降りて人間に顕現させたんだよ」
「は?そ、それってつまり、神の中の一人が裏切ったってことか?」
真顔で話すラインに西城は呆気を取られた顔になった。
神が神を裏切るという行為自体は神話に数多く存在する。
しかし、それが現実に起こったとなると全く別の意味合いになるはずだ。つまるところ。
「ま、さか。その一言主ってのを仕留めるだけのために神の介を起こしたってことなのか!?」
裏切りという行為にはリスクが付きまとう。殺されかけても言い訳はできないほどのリスクを一言主は背負ったのだ。
それを他の神が許すわけがない。裏切り者には死を。
地上に降りたというのなら、それを追いかけることもいとわないほどの怒り。それが神の介入と呼ばれる出来事の真相だった。
「要は神から奪われたのが異能だったってことだね」
ラインは今までの話をまとめるが西城の耳には届かない。
こんなにもあっさりと神の介入の真相を知ってしまったうえに、その真実が衝撃的なものだったからだ。
「くそッ!考えても仕方ない。今はこの現状をどうするかだ」
「そうだね……ウズメは草薙剣を使ってたけど、あれはあくまでも依り代だからその中の核を破壊しないと何度でも復活するし」
西城たちは石段を上がり始める。数歩進むと石段が終わり、細い参道が姿を表す。
「まだ天宇受売命は追いかけてきてないから時間はある。早く対策を考えて……」
その考えが甘かった。相手は神。その根本的で重大な問題を西城たちは忘れていたのだ。
「遅かったですね。」




