第二章 三節 異能の使い道
「とりあえず魔法については分かったよ。それで、これからどうする?」
呆れ果てている西城は立ち上がりながら言った。座ったままのラインは西城にジト目を向ける。
何かしただろうかと西城が首を傾げると、ラインはため息をついた。
「やっぱり答える気がなかったんだね。『異能』って何なの?」
しまったと西城は心の中で叫ぶ。
橋の上で必ず話すと言ってしまったことをすっかり忘れていたからである。
いまさら嘘ですなどとぬかしたら西城の命は保証できない。なんせ相手は天使なのだから。
「あ、ああ。それね。も、もちろん覚えてたよ」
西城は誤魔化しながら歩き出す。その後ろを食べたお好み焼きのゴミを持ったラインがついていく。
「橋の上でも言った通り、俺の異能は『言葉』だ。ちなみに異能ってのは分かるよな?」
「神の介入前後で人の子が手にした力の総称でしょ?天使としては当然だね」
胸を張りながら横を歩くラインに西城は目をくれることなく進んでいく。
お食事街はピーク時を越したのか、だんだん人が減っていっていた。
「付け加えて言うと、異能は一つとして同じものがない。似たようなものだったり、同じ系統のものはあるけど、全く同じのものはないんだ。例えば、炎を出す異能があったとして、火の玉になる場合もあれば、広範囲にそのまま炎を出す場合もある」
「それで、幸助の異能である言葉っていうのはどんなのなの?」
よほど西城の異能が知りたいのか、ラインはすぐさま話を戻した。
西城は頭を掻きつつ、めんどくさそうにため息を吐いた。
「俺の異能は説明が難しいんだけど……その割りばし借りるぞ」
西城はお好み焼きのゴミの中から割りばしを抜き取る。ラインが驚いたような顔になるが西城は気にも留めない。
割りばしの汚れてない所を右手で握りながら、西城は異能を使う。
「消えろ」
一瞬、世界がブレる。
そして、西城の右手からは割りばしが消えていた。
ラインの表情が驚愕に変わる。
それもそのはず、目の前で物理法則を無視した現象が起こったのだから。
西城からしてみれば異能を常識内に収めてはいけないと分かっているため、当たり前のことのように流す。
「まぁこんな感じだ」
「わ、わかるわけないよ!!」
ラインは肩をわなわなと震わせ、恐怖じみた目を西城に向けた。
地味に傷ついている西城は手のひらを閉じたり、開いたりしながら説明し始める。
「俺の異能は言葉に応じて物体に干渉できる。だけど、それなりの制限があったりするから不便な異能なんだ」
「不便?それで不便なんて言うの!?」
実際、ラインの目の前で起こったことは不便という言葉で片づけていいものではない。
だが、それを差し引いても異能を使う本人が不便だと言っているのならそうなのだろう。
「不便だぞ?制限でいえば、消滅とかそういう系の言葉でしか物体に干渉できないうえに、干渉できる物体がだいたい腕を伸ばした所にないといけない。そしてなにより、使い道がない」
げんなりする西城は遥か昔を思い出した。
子供の頃、自分の異能を知るために色々と試したことが西城にはあった。
そして、そのほとんどが失敗に終わっていた。本当に西城の異能は使えないのである。
「確かに使い道がないっていえば、ないかもしれないね」
ラインも悩んだ末に答えを出したらしく、とても大きな西城への追撃攻撃となった。
そうこうしている内に人混みがなくなり、西城たちはお食事街の入口へと戻ってきていた。
近くにあるゴミ箱にお好み焼きのゴミを捨てようとするかよを西城が止める。
「それは燃えるゴミだからそのゴミ箱じゃない。こっちのゴミ箱だ。……本当に常識がないな」
「常識外れで悪かったね」
ラインは不機嫌な口調でゴミを捨てる。そのまま何処かに行ってしまいそうだったので西城はラインの服を掴んだ。
せっかく神から逃げているというのに離れ離れになったら元も子もない。
ラインを引っ張りながら、お食事街を抜けると西城は固まった。
なぜなら、真正面に今朝の衛士が立っていたからである。




