第二章 二節 天使の事情
成人男性でもお腹いっぱいになりそうな量をペロリと平らげたラインは、口についたソースをちり紙で拭きつつ西城を見据えた。
「改めてお礼をいいます。本当にありがとう」
「お、おう」
西城は場の雰囲気が変わるのを感じた。
ラインが事情を説明するのだと思い、真剣な表情になる。
神、体現化、魔法……訳のわからない話ばかりだ。理解していない以上は聞かなければならない。
「なぁ。一つ聞きたいことがあったんだがお前は天使なんだよな?」
「ファミレスでそう言ったはずだけど」
ラインが天使であることは揺るぎようのない事実だとしておかしい点が一つある。
それは彼女が自我を持っていることだ。そのことをラインに尋ねると彼女はこう言った。
「もともと感情があったことは言ったよね。もちろん彼女たちは自我も持ってたけど……」
ラインは悲しげに言い切った。西城は何かがあると推測し、ライン自身から話してくれるのを待つ。
少しの沈黙があり、ラインは口を開いた。
「ただ、それは人間に干渉する場合、神に消されるの」
西城はテーブルの下で拳を握る。
天使に感情が自我があるというなら人間とそう変わらないはずだ。
ラインも多少常識外れではあるが一人の少女に見える。そう考えると、感情を消すという行為はとても非人道的ではなかろうか。
「消されるって言っても魔法で一時的に押し殺しているだけだからね。それに天使たちだって了承してるし、神側の事情だってあるし」
ラインは西城をフォローするように声をかける。
それでも西城は納得がいかなかった。たとえ、何か理由があったとしても感情を消すという行為は許されることではないのだから。
「そういえば魔法って土手の所でも聞いたな。それってファンタジー小説とかに出てくるやつと同じって考えでいいのか?」
小難しく考えることをやめた西城は素朴な疑問を口にする。
その途端、ラインの表情が変わった。言うなれば阿修羅のように。
くわッと目を見開き、テーブルの上に身を乗り出したラインが西城の顔面に迫る。
「何を言ってるの!!魔法はあんな物語に出てくるようなものじゃないの!魔力やら魔石やらそんなのは使わないし、ただ単純に炎が出るとかあり得ない!魔法っていうのは世界の法則に乗っ取ったり、神話とか伝承とかを理解したうえで使うものなの!!分かった!?」
変なスイッチが入ったらしいラインは永遠としゃべり続ける。
西城からしたらどうでもいいことであり、周りが向けてくる目線が痛かった。
ラインがどこぞの業界に喧嘩を売るようなことを言い始め、西城は慌てて止める。
そして、不完全燃焼で終わったためか、かよは少し不貞腐れているのだった。




