第二話 AIがフリーイラストの代わりになったら
昔はポスターやホームページには自作のイラストやフリー素材のイラストが多かったが、今はすっかりAIばかりだ。
なんとなく、AIっぽさがにじみ出ていたり、指が六本あったりと不自然である。
「指を事故で失ったり、生まれつき指が六本ある人もいるぞ。多様性の時代だ」
と、かばう声もありましたがそんな言い訳みたいな声はすぐに消えました。
「その指六本のイラストの中の文字がどこの国でもないおかしな字体になるのも多様性か?」
そんな感じであちこちが炎上しながらもAIイラストを使っているのでした。
ぼくの仕事帰りに使うコンビニもすっかりAIイラストです。
(今日は冷やし中華の麺が輪ゴムを重ねたみたいなイラストだ。輪ゴム見て美味しそうという人いるのかな)
不自然な冷やし中華イラストにうんざりして、おにぎりコーナーを見ます。
『今月の限定おにぎり『天むすビッグ』大きなエビとあきたこまちの組み合わせ!』
その天むすのイラストのおにぎりは米は単純な楕円がびっしり、エビの尻尾は二つではなく三つでした。
(なんか、謎の生き物になってるし、美味しそうには見えない)
とりあえずイラストの無いパンをレジに持っていってすっかり顔馴染みになった店員さんに話しかけます。
「なんかさあ、あのイラストは不気味と言われないの? 誰か手描きとか手直ししないの?」
店員さんは申し訳なさそうに言いました。
「すみません、僕たちもわかってはいますが、人手が足りなくて描ける人も手直しする人もいないです」
「え? 人手不足だからAIに任せているから楽になったのでは?」
いつもなら簡単に済ませる会話をぼくは思わず続けていました。
「いえ、お客様のように指摘されたり、本部へクレームまでいかなくても問い合わせが増えたり、SNSでアップされてはちょっとした炎上になったりと仕事が増えました」
ぼくはなんというか、仕事を減らすためのAIが仕事を増やしていることに複雑な気持ちになりました。せめて文字だけの紹介にすればいいのに。
「この店だけでも文字だけにしたら?」
「それもダメなんです。AIは文字ではなく図形みたくなるので、日本語がおかしいとクレームがくるのです」
さすがにおかしいと思いました。ぼくは生まれた時からデジタルと一緒に育った『デジタルネイティブ』です。
でも、こんなものを使うくらいなら、ペンで文字を書いた方がはるかに早いし、変なクレームは来ないと思いました。仮にAIに任せてもそれを手書きにすればいいと思うのです。
でも、店員さんはそれもダメだったと言います。自分はともかく、外国人の店員は日本語を読めても書くのが苦手な人が多いので、AIの結果を丸写ししてしまうそうです。
「大変ですね」
ぼくは苦笑いして、コンビニを出ました。
数日後、またコンビニに寄ってビックリしました。ポップには『新発売 AI冷やし中華始めました』とあり、棚にはあのイラストそっくりの冷やし中華が置いてあったのです。よく見るとAI天むすもありました。
冷やし中華の麺は輪ゴムに見えるように円を重ねたように盛り付けられ、おにぎりの米は何かで縁に色がつき、エビの尻尾だけわざわざ三つに分かれてました。
「いらっしゃいませ、新製品いかがですか?」
ぼくは慌てて店員さんに尋ねます。
「あ、あれは何? AI冷やし中華って? そっくりのご飯になっているけど?」
「クレームが多いから、いっそAIイラスト復元したものを新発売したそうです。ま、売れるかわかりませんけどね」
怖いものみたさ、というか食べたさで輪ゴム風冷やし中華を買ってみましたが、味は普通でした。
次の日の朝、そのコンビニをよく見ると冷やし中華以外にも『AIスイーツ始めました』『AI肉まん始めました』と書いてあり、なんとなく怖くて立ち寄りませんでした。
こんな手間がかかるものなんて、すぐにやめるでしょう。そこまでしてAIにこだわるコンビニがよくわからなくなってきました。
自分の頭で考えないのだろうかと心配になってきました。もしかしたら僕もAIに頼りきりで考えなくなっているのかもしれません。そう思うとこわくなりました。
第二話 おしまい




