第一・五話 先生のツッコミ、もとい疑い
カクヨムにも先行連載しています。エディタの使い方慣れないので、誤字脱字報告や使い方の訂正報告していただけると助かります。
矢満田君の宿題の第一話を読ませたが、棒読みなのはともかく、読み間違いもつっかえもなかった。少なくとも彼は自分で書いたか、書いて読んでいたのだ。
しかし、ツッコミどころが多すぎる。語彙は小学生の範囲を少し、いやかなり超えている。それに漢字にもバラつきがある。さすがに大人の手が入っているだろう。なんで小学四年生が『公序良俗』なんて知っているのだ。
それに、どこかで読んだような話だ。スカッと系と呼ぶべきか。総ツッコミを入れたいのをこらえつつ、平静を装って尋ねた。
「矢満田君、いろいろ調べたというけど、難しい言葉をよく知っているね。ネットなども見たのかな」
「はい、お父さんから昔の時代劇みたくスカッとさせるといいのではないかとアドバイスもらって、「スカッと」というタグの付いた動画やまとめはお父さんと一緒に見ました。難しい言葉は……辞書もひきましたし、えーと、AIについては規約をコピペしました。ごめんなさい」
私は考えた。難しい字や語彙は確かにネットから調べたり拾える。それは確かにあり得るし、一部とはいえコピペも認めた。スカッと系の話には退職間際に自分が組んだマニュアルやプログラムを解雇の腹いせに削除する話や、ムカつく上司に何かを仕掛けて復讐する話はゴロゴロしているし、現実のキャッピーは確かに規約違反のBANもある。私だってあの教頭には何か……いかん、思考が逸れてしまった。
しかし、職場でキャッピーを無許可で入れる、離席中のパソコンのログアウトをしないとか、そんなネットリテラシーなんて細かいことは小学生には考えつかないのではないか。むしろ、周りのクラスメートごとの写真と名前を出して堂々とネットにアップする子どもがいて、保護者たちからの苦情の対応では苦労しているのに、この子がこんなに詳しいのも怪しい。
ただでさえ、キラキラネーム付ける親だから、まともではなさそうだし、子どもも被害者かもしれないがカエルの子はカエルというし要注意だ。いつか矢満田君に雑談がてら聞いたが、名前の由来は国際的に通用するようにミドルネーム込みで名付けてもらったといい、父母どちらにも外国のルーツは無いという。
限りなく怪しいが、それだけで親やAI関与の決めつけは難しい。
第一、大半のSNSは小学生には使えない。たが、お父さん同伴で見たと言われるとどうしようもない。不正とは言えないギリギリのラインだ。
「その話はさ、例えばだが、お茶を出すふりをして課長のパソコンにこぼして壊した方が簡単だったのじゃない?」
「それは真っ先に思いつきましたが、お父さんが言うには今どき職場でお茶を席に出す習慣は昭和や平成の最初ならともかく、今はセルフだそうです。自分でこぼさない限り無いと聞いて止めました。それに水をかけても修理してデータ復活できるそうです」
ずいぶんとパソコンに詳しいお父さんだ。しかし、アドバイスの範囲なら親にやらせたというにはまだ乏しい。
「矢満田君、第二話も音読してくれるかな。のども乾くだろうし、麦茶をあげるから」
私は職員室に入れておいた自分の麦茶ペットボトルから紙コップに注いで矢満田君の前に置いた。
彼はゴクゴクと飲んでから第二話の音読が始まった。
こうして見るとどこにでもいる少年だ。しかし、こんなキラキラネーム付ける親の監督というのも警戒ポイントだ。
いや、名前だけで決めつけは良くない。第一話も棒読みながらきちんと音読した。次でボロが出るかもしれないし、出ないかもしれない。私は心の中で身構えた。




