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ヘビに転生した俺は、最弱ステータスからスキル補食と進化しながら迷宮を攻略する  作者: 迫力くん
目覚め

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第009話「東の隙間」


 9日目、池の東壁を改めて見た。


 あの隙間だ。


 体が通れるかどうか微妙なサイズの横長の裂け目——幅50センチ、高さ20センチほど。最初に池を発見した日から気になっていたが、北側の探索が続いていたので後回しにしていた。今日はこっちを攻略する。


 蛇の最大のアドバンテージは細長い体だ。犬には通れない隙間も、蛇なら大丈夫。そのはずだ。


 頭を横に向けて、隙間に差し込んだ。


 入った。問題ない。体の前半分が隙間の中に収まった。続けて進んだ。


 鱗が引っかかった。


 隙間の岩の縁が、鱗の向きと逆方向に当たっている。蛇の鱗は後ろ向きに重なっているので、前進方向には引っかからないが、側面から圧力がかかると摩擦が発生する。狭い空間で体を左右に押し付けられると、前に進めなくなる。


 つまり、通路の幅ギリギリで体が詰まっている。


 進むにも退くにも力がいる状態——俺は今、岩の挟み撃ちに遭っている。


 蛇になって初めての「詰まった」経験だ。


 力を入れて押した。5センチ前進した。また力を入れた。さらに5センチ。少しずつだが進める。蛇の筋肉は細長いくせに強い——腹筋をフルに使って岩を押し広げるように進んだ。


 3メートルほど進んだところで、隙間が広がった。


 一気に通れるようになった。鱗が岩から解放される感触があった。


 人生(蛇生)で初めての洞窟の隙間突破だ。達成感がある。


   ◇ ◇ ◇


 東の隙間を抜けた先は、これまでのどのエリアとも違う雰囲気だった。


 通路が長い。まっすぐで、幅は俺の体長(30センチ)の倍くらいある。天井は低いが一定の高さがある。自然に形成された洞窟というより、何かが通り続けて摩耗した道のように見えた——壁面が滑らかで、角がない。


 何かが、長い時間をかけてここを往復していた形跡がある。


 床に何かの残骸があった。甲殻類の破片——百足の外骨格に見える。食べた後の残滓か。大きさから見て、俺が今まで倒してきた20センチ前後の個体の欠片ではなく、もっと大きい。40〜50センチはあったかもしれない百足のもの。


 これを食べた何かが、ここを通っている。


 振動感知を最大限に広げた。


 通路の奥——20メートル以上先に、小さな振動がある。移動している。近づいてはいない。


 そのまま通路を進んだ。


   ◇ ◇ ◇


 50メートルほど進むと、通路が二股に分かれた。


 左(北寄り)と右(南寄り)。


 右を選んだ。理由はない。完全に勘だ。ゲームで二択を迫られた時に右を選ぶ習慣がある——根拠のない右好き派だ。


 右の通路は短かった。20メートルほどで終わっていて、終点に大きな空間があった。


 岩トカゲがいた。


 ただし、これまでに見てきた個体とはサイズが違った。体長40センチ——俺より大きい。同じ種族だと思うが、明らかに別格だ。岩の上に乗って、じっとしていた。


 こちらを見た。


 俺も止まった。


 向こうは俺を見て、逃げる素振りも攻撃する素振りも見せなかった。ただ見ている。でかい個体は落ち着いていた——俺のことを「脅威になる相手か」と値踏みしているのかもしれない。


 俺の体長30センチ、向こうが40センチ。この10センチの差は、体重に換算するとかなり大きい。体積は3乗で効いてくるから、体長1.3倍は体重にして約2倍以上になる計算だ。これはゲームで言えば格上の相手に挑む場面だ。


 勝てるか?


 毒牙がある。向こうは毒を持っていないはずだ——確証はないが、これまで岩トカゲが毒を使ってきたことはない。毒さえ入れれば俺が小さかろうが関係ない。問題は入れるまでの過程だ。あのサイズの岩トカゲの後脚の蹴りをもらったら、HP-7どころでは済まないかもしれない。


 やってみる。引くより攻めた方が情報を得られる。


   ◇ ◇ ◇


 先手を取った。


 岩の上の岩トカゲに向かって、斜め下から突っ込んだ。岩の側面から岩の上に乗り上げる動きで、顎が上向きになる体勢から噛みかかった。首の横——外皮が薄い部分を狙った。


 岩トカゲが反応した。速い。40センチの体で、俺の突進を横に跳んで避けた。岩から降りた。地面に着地した直後に方向転換して、俺に向かってきた。


 すれ違い際に後脚の蹴りが来た——HP-11。


 11!?


 これは痛い。HP28から一気に17に減った。序盤から大ダメージだ。サイズ差が数字に出た。


 でも止まれない。体勢を整えて向き直した。岩トカゲが突進してきた——噛みかかってくる。口が大きい。あの口に噛まれたら俺の体が半分入りそうだ。


 横に転がって避けた。岩トカゲの口が地面に当たった。そこに噛みついた——首の付け根、尻尾側の境目あたり。


 毒を流した。


 岩トカゲが体を振った。振られて飛んだ——岩に叩きつけられた。HP-9。


 さすがに痛い。HP8になった。残り体力3割だ。


 でも毒は入った。


 距離を取って待った。1分、2分。岩トカゲの動きが徐々に鈍くなった。3分後には地面に腹を着けて、脚の動きが止まった。


 止まった。


   ◇ ◇ ◇


 通知が来た。


『Lv13になりました』


 HPとMPが全回復した。HP8から28に戻った。正直、このタイミングのレベルアップは神だった。


 岩トカゲ(大型)を食べた。通常サイズより食べ応えがある。進化が73%になった。


 食べながら今の戦闘を振り返った。


 HP8まで削られた——これはまずかった。蹴り1発で11、叩きつけで9、合計20ダメージを受けた。毒が効いていなければ、向こうの体力が先になくなっていたかどうか怪しかった。


 問題点は「突進を避けられてから接近戦になったこと」だ。岩の上にいる相手に真正面から突っ込んだのは悪手だった。下から崩すつもりが、着地ポイントが読まれた。


 次に同じサイズの相手と戦う時は、地形を使うか、毒を入れてから距離を置く戦術を取る。今日のような正面勝負は、体力の消耗が激しい。


 二股の左側通路は、今日はもう探索しない。HP回復はしたが、今日の戦闘で精神的に消耗した部分がある——というか、序盤でHP一桁になるとさすがに焦る。


 池に戻った。


 東の隙間、体が通れた。新エリアがある。大型岩トカゲがいた。勝った。今日はそれで十分だ。



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