第086話「ハイバミ」
先に骨を取る。
そう決めて、黒玻璃の縁を低く走った。
ハイバミも動く。白金色の骨列の前から離れない。やっぱりあそこを守る気だ。
◇ ◇ ◇
真正面から行けば、また頭を置かれる。
だから一回、頭を見に行く。
鼻先を狙うふりで飛び込み、噛む手前で落とす。ハイバミの頭がそっちへ寄った。
そこで急旋回。
顎の下を抜け、白金色の傷へ牙を差し込む。
入った。
熱い。
◇ ◇ ◇
喉の奥が焼けるみたいに熱い。MPが勝手に削れる。便利どころか、普通にキツい。
それでも空気はまた沈んだ。白い霜が細かく震え、ハイバミの頭が一段低く止まる。
これだ。
骨を噛んだせいで、こっちの竜の圧がまた漏れてる。
さっきまでこっちを止めていたハイバミの蛇王因子の圧が、今は一段薄い。押し返されてる。
そのまま離れない。
胴の半分を骨列へ巻き付ける。引き剥がされたら終わる。
来い。
ハイバミが踏み込んだ。
まだ嫌な圧はある。けど、もうさっきみたいに押し負けない。蛇王因子の圧が薄くなっている分、足が止まらない。先に角度を見られる。
鼻先へ帯電鱗を擦る。白い火花。短放電。
頭がぶれた。
けど、止まらない。
太い胴がぶつかってきて、俺ごと黒玻璃へ叩きつけた。息が詰まる。牙はまだ骨に刺さったまま。喉の熱も、MPの抜けも続く。
長くは保たない。
このまま耐久戦にしたら、先にこっちが切れる。
竜の圧が上から押している今だけだ。この時間で決める。
◇ ◇ ◇
なら、一回で通す。
ハイバミが頭を引いた。
次は噛み切るんじゃない。俺を骨から剥がしに来る。
骨の前を守る動きだ。
頭が傷の前へ差し込まれた瞬間、牙を骨から抜く。
雷走。
空気がまだ沈んでいるうちに、今度はこっちが先に入った。蛇王因子の圧が押し返されている今なら通る。
喉下へ潜る。
薄い鱗の下へ毒牙を深く通す。首の根元へ胴を掛け、そのまま締め付けた。帯電鱗を全部乗せる。離れる前に短放電。
白い火花が傷の中で暴れた。
ハイバミが暴れる。骨列と黒玻璃がまとめて鳴る。こっちも潰れそうになる。けど今は、さっきまでみたいに蛇王因子の圧で先に足が止まらない。
もう一段、締める。
毒が回る。
首の返りが鈍る。
灰色の頭が床を打った。
もう一回頭を上げる前に、短い震えだけ残して長い胴から力が抜ける。
◇ ◇ ◇
動かない。
倒した。
ハイバミだ。
最初の恐怖を、ここで食う。
◇ ◇ ◇
喉元へ噛みついた。
肉が締まってる。噛むたび濃い。冷えた石の匂いと、長く生き残った蛇の重さがそのまま残っていた。
通知が鳴った。
『レベルが上がりました Lv14 → Lv15』
『レベルが上がりました Lv15 → Lv16』
『蛇王因子を獲得しました』
来た。
しかも、蛇王因子。
王って付く時点で軽いわけがない。
ただの当たりスキルじゃない。因子って時点で、普通のスキルとは違う。
ステータスを開く。
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種族:雷鱗蛇
Lv:16
HP:146 / MP:106
攻撃力:76 / 防御力:65
素早さ:102 / 知力:86
【スキル】
捕食継承 Lv1 / 毒牙 Lv3 / 締め付け Lv2
鱗硬化 Lv2 / 壁走り Lv3 / 振動感知 Lv3
熱感知 Lv2 / 外殻粉砕 Lv2 / 毒液圧縮 Lv1
酸耐性 Lv1 / 粘着無効 Lv1 / 毒霧 Lv1
鱗弾き Lv1 / 急旋回 Lv1 / 嗅覚強化 Lv1
反響定位 Lv2 / 鑑定 Lv2 / 反響撃 Lv1
魔力操作 Lv2 / 竜威 Lv1 / 竜息 Lv1
熱体 Lv1 / 殻硬化 Lv1 / 帯電鱗 Lv1
雷走 Lv1 / 短放電 Lv1 / 冷気耐性 Lv2
冬眠 Lv1
竜因子 / 蛇王因子
次の進化まで:86%
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さっき散々押し込まれたやつだ。使い方はまだ分からない。けど、弱い名前じゃない。
◇ ◇ ◇
その時、白金色の骨列の奥で、また脈が返った。
今度は喉の熱だけじゃない。竜因子も、さっき入った蛇王因子も、同じ骨の方へ引かれているのが分かる。
竜骨本体が、さっきまでより近い。




