表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱ステータスでヘビに転生した俺は、スキル補食と進化をしながら迷宮を攻略する  作者: 迫力くん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/139

第083話「竜骨の本体」

 砕けた棚の向こう、ブリザードバジャーが何度も出入りしていた黒玻璃の継ぎ目へ腹を入れた。


 まだ冷えている。けど、もう標本庫の冷気じゃない。あっちの「止まったやつを拾う」感じが薄い。白い霧も浅く、その代わり乾いた匂いが鼻の奥に残った。


 生き物の気配も急に減る。


 這った跡はある。爪痕もある。だが食う側の匂いがない。ここから先は、白層の狩り場の続きじゃないらしい。


   ◇ ◇ ◇


 継ぎ目を進むほど、霜の下に白金色の欠片が増えた。


 小さい破片だけじゃない。骨みたいな筋、鱗みたいな薄板、節のある硬い列が、氷と黒玻璃の間から何本も覗いている。白層の壁に埋まっていたのは、散った欠片じゃなかった。


 途中で、通路が少しだけ開けた。


 そこで止まる。


 広い。


 だが吹き抜けじゃない。白層みたいな風の抜けもない。冷えているのに乾いていて、長く閉じていた空洞の匂いがした。


 その空洞の奥で、白金色の骨が折り重なっていた。


 一本じゃない。


 太い弧が何本も並び、その奥に節のある長い列が続いている。黒玻璃の床へ沈み、壁を貫き、氷の下でもまだ続いていた。刻印の広間で壁から出ていた竜骨は、この連なりの端をほんの少し見ていただけだ。


 これだ。


 欠片でも、突き出た一部でもない。


 竜骨の本体だ。


   ◇ ◇ ◇


 近づいただけで、体の奥がざわついた。


 喉の奥に、竜息の熱が薄く溜まる。鱗の下では、帯電鱗とも冷気耐性とも違う脈が走る。竜威の方が、勝手に起きかけてる感じがした。


 竜因子だけは相変わらず意味不明だ。なのに、こういう時だけ一番深いところで脈を打つ。気味が悪い。


 通知は来ない。


 説明は出ない。けど体はもう反応していた。


   ◇ ◇ ◇


 まずは噛めるかだけ見る。


 白金色の骨列の手前、霜が薄く、昔ついたらしい傷が残っているところへ頭を寄せた。前に刻印の広間で削った時より、今は牙も顎もだいぶ強い。


 試しに噛む。


 入った。


 前より深い。


 骨を噛んでいるはずなのに、歯の先で軋むのは硬さだけじゃない。中に詰まった何かまで、一緒に削っているみたいな変な手応えがある。


 うわ、これだ。


 普通の骨じゃない。


 圧そのものを噛んでる感じがする。


   ◇ ◇ ◇


 その瞬間、喉の奥がひりついた。


 熱い。


 竜息の熱が一段濃くなり、鱗の下がどくんと脈を打つ。次の瞬間、空気が少し沈んだ。


 白い霜が、音もなく震える。


 使った覚えはない。


 竜威を通した時の、あの重いMPの抜け方でもない。もっと薄い。なのに圧だけが先に漏れた。


 今のはまずい。


 骨を噛んだだけで、こっちから漏れた。


 すぐ牙を離す。


 だが、空洞の空気はまだ少しだけ重いままだった。


   ◇ ◇ ◇


 その沈み方に、返事みたいな音が来た。


 ずる、と長いものが氷を擦る音。


 ブリザードバジャーじゃない。爪で削る音じゃなく、もっと低くて長い。這う音だ。


 遠い。


 だが、まっすぐこっちへ向きを変えたのが分かった。


 黒玻璃の縁へ腹を戻し、空洞の奥を見る。霜の幕の向こうで、岩みたいな灰色の胴が一度だけ返った。太い。長い。頭も尾も見えない。それでも分かる。


 大蛇だ。


 しかも、ただ通ったんじゃない。


 漏れた圧に反応して、竜骨の方へ来ている。


 白層主を越えたら終わりだと思っていたが、全然違った。


 この本体を狙っているのは、俺だけじゃない。


 空気はまだ少し沈んでいる。


 灰色の大蛇の這う音が、今度ははっきり近づいた。


 来た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ