表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱ステータスでヘビに転生した俺は、スキル補食と進化をしながら迷宮を攻略する  作者: 迫力くん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/141

第075話「雷鱗蛇」

 もう見えた。


 黒玻璃の回廊、帯雷鉱脈、静かな棚、ハイフレイムサーペントの踏み込み。熱だけでも速さだけでもない。見る場所は決まった。あいつが一番速くなる瞬間を、先に取ればいい。


 あとは取るだけ。


   ◇ ◇ ◇


 ハイフレイムサーペントは、帯雷鉱脈の中央を回っていた。


 細長い黒い鱗の隙間を、青白い火花が一瞬だけ走る。普通のフレイムサーペントより速いのは、もう分かっている。だが厄介なのはそこだけじゃない。


 踏み切る場所が正確だ。発火の切り替わりに合わせて最短で来て、静かな足場へ逃げるのも早い。第4層奥で一番、この地形を使いこなしている蛇だった。


 余裕はない。だがもう、何にやられているのか分からない相手でもない。


   ◇ ◇ ◇


 太い放電が走った。


 黒い壁の筋が白く弾ける。少し遅れて、細い発火へ切り替わる。


 そこで動いた。


 壁走りで右へ。ハイフレイムサーペントも来る。速い。思ったより半歩前だ。


 噛みついたが、浅い。


 首の横を掠めただけで抜けられた。次の瞬間、向こうの牙が腹の鱗を擦っていく。深くはない。だが冷えるには十分だった。


 やっぱり速い。


 今のままだと、同じ場所に入って負ける。


   ◇ ◇ ◇


 いったん高い棚へ戻った。


 追ってこない。ハイフレイムサーペントも分かっている。この鉱脈の中央から離れれば、自分の速さが一段落ちる。


 なら、次はそこを取る。


 視線を下げる。


 太い放電が通る筋、その直後に生まれる細い発火、白く曇った静かな棚、ハイフレイムサーペントが一番速くなる壁際の細い筋。その並びはもう見えた。同じ瞬間に踏み込むから遅れる。なら、半拍ずらす。


 熱体は噛む直前だけ。魔力は流しっぱなしにしない。腹の鱗へ薄く広げて、踏み切る瞬間にまとめる。牙へ寄せるのも、当たる直前だけでいい。


 熱体も壁走りも魔力操作も、今までは別々だった。だが今は違う。ここまで積んだ分が、ようやく1本にまとまる。


   ◇ ◇ ◇


 太い放電が走る。


 待つ。


 切り替わった。


 今だ。


 俺は先に安全な棚へ出た。真正面じゃない。ハイフレイムサーペントが踏み込む筋の、その少し外だ。


 ハイフレイムサーペントが来る。


 細い発火を踏んで、一気に距離を詰める。速い。さっきまでなら取られていた。


 だから半拍ずらす。


 踏み込みに合わせない。頭が前へ出た、その次で落ちる。


 熱体。


 腹の鱗へ魔力を流す。牙の先へ寄せる。落下の角度がきれいに決まる。黒玻璃で滑らない。体がぶれない。


 通る。


 喉元へ噛みついた。今度は深い。牙が入る。同時に、腹の鱗で押し込みながら外殻粉砕を一点だけ通す。


 そのまま離れる。


 ハイフレイムサーペントが反転した。まだ速い。だが最初の一撃で、もう線が乱れている。壁へ戻る角度が浅い。


 追う。


 次の静かな棚へ先に回った。向こうが鉱脈に乗る瞬間だけを見る。


 来た。


 今度は頭だ。


 熱体を短く通して、牙の先へ魔力をまとめる。噛みつきと同時に、体当たりを頭の横へ重ねた。


 手応えが変わった。


 ただ当たっただけじゃない。通りが一段深い。押し返しが強い。


 ハイフレイムサーペントの頭が黒玻璃へ叩きついた。


 そこで止まらない。


 反転しようとした首筋へ、もう一度だけ噛みつく。喉の下へ毒牙を押し込み、すぐ離れる。


 ハイフレイムサーペントが壁を走る。


 だが遅い。


 最初の速さがない。鉱脈に乗っても伸び切らない。頭の傷で線がぶれている。毒も回る。


 行ける。


 太い放電が切り替わる。


 細い火花の直後に踏み切った。今度は真正面からじゃない。喉の逃げ道を先に塞ぐ。


 ハイフレイムサーペントが頭を振る。


 遅い。


 噛んだ。


 喉の深いところへ牙が通る。外殻粉砕を重ねる。黒い細身の体が、一度だけ強く跳ねた。


 そこで止まった。


   ◇ ◇ ◇


 振動感知に、次の踏み切りは戻らない。


 よし、取った。


 第4層奥のいちばん速いやつだ。これはでかい。


   ◇ ◇ ◇


 食った。


 え、うま。


 普通のフレイムサーペントより、はっきり濃い。熱の奥に、舌の裏を刺すみたいなぴりつきが残る。


 通知が鳴った。


『Lvが上がりました』

『Lvが上がりました』


 よし、来た。


 ステータスを開いた。


――――――――――――――――――――

種族:魔蛇

Lv:8

HP:104 / MP:70

攻撃力:54 / 防御力:47

素早さ:50 / 知力:56

【スキル】

 捕食継承 Lv1 / 毒牙 Lv3 / 締め付け Lv2

 鱗硬化 Lv2 / 壁走り Lv3 / 振動感知 Lv3

 熱感知 Lv2 / 外殻粉砕 Lv2 / 毒液圧縮 Lv1

 酸耐性 Lv1 / 粘着無効 Lv1 / 毒霧 Lv1

 鱗弾き Lv1 / 急旋回 Lv1 / 嗅覚強化 Lv1

 反響定位 Lv2 / 鑑定 Lv2 / 反響撃 Lv1

 魔力操作 Lv2 / 竜威 Lv1 / 竜息 Lv1

 熱体 Lv1 / 殻硬化 Lv1

 竜因子

次の進化まで:100%

――――――――――――――――――――


 100%。届いた。


 第4層で積んだ分が、ようやくここまで来た。


 通知が重なった。


『進化条件を満たしました』

『進化先を選択してください』


 視界に、3つの選択肢が浮かぶ。


『灼鱗蛇——熱特化。高熱を纏い、接触戦を押し切る焼殺型』

『疾影蛇——速度特化。とにかく速いが、決定力はやや薄い』

『雷鱗蛇——複合進化。熱・速度・帯電環境への適応を統合し、接触時に痺れと追加火力が乗る』


 灼鱗蛇。


 強いのは分かる。だが、熱いのはもう見た。次はもっと格好いいやつがいい。


 疾影蛇。


 これも悪くない。速いだけも悪くない。でも、どうせなら光って痺れる方がいい。


 雷鱗蛇。


 あと雷は、普通に強そうだ。


 決まりだ。


   ◇ ◇ ◇


 選んだ。


 体の奥で、何かが弾けた。


 熱だけじゃない。細い痺れが、背骨の内側を一気に走る。鱗の一枚一枚が、内側から組み替わっていく。魔蛇の滑らかな黒が、そのまま締まり、縁に淡い青白さが滲んだ。


 腹の感覚が変わる。軽い。壁へ乗る前から、もう返りが違う。踏み切る準備が短い。


 変化が止まった。


『進化が完了しました』


――――――――――――――――――――

種族:雷鱗蛇

Lv:1

HP:86 / MP:74

攻撃力:48 / 防御力:44

素早さ:57 / 知力:54

【スキル】

 捕食継承 Lv1 / 毒牙 Lv3 / 締め付け Lv2

 鱗硬化 Lv2 / 壁走り Lv3 / 振動感知 Lv3

 熱感知 Lv2 / 外殻粉砕 Lv2 / 毒液圧縮 Lv1

 酸耐性 Lv1 / 粘着無効 Lv1 / 毒霧 Lv1

 鱗弾き Lv1 / 急旋回 Lv1 / 嗅覚強化 Lv1

 反響定位 Lv2 / 鑑定 Lv2 / 反響撃 Lv1

 魔力操作 Lv2 / 竜威 Lv1 / 竜息 Lv1

 熱体 Lv1 / 殻硬化 Lv1 / 帯電鱗 Lv1

 雷走 Lv1 / 短放電 Lv1

 竜因子

次の進化まで:0%

――――――――――――――――――――


 うお、速い。


 黒玻璃の壁に腹を寄せた。鱗の下を、細い雷が走る。さっきまで逃げていた青白い火花が、今は鱗の上に一瞬だけ残った。


 残ったハイフレイムサーペントの胴へ、牙を軽く当てる。


 ぴし、と短く跳ねた。


 これだ。


 遠くへ飛ばす感じじゃない。でも、噛む瞬間にそのまま乗る。体当たりにも使えそうだし、巻き付いたまま流したら逃げ足を先に止められそうだ。壁を蹴った時の返りまで、さっきより明らかに軽い。


 めちゃくちゃいい。


 これ、かなり当たりだ。


   ◇ ◇ ◇


 奥から、熱風じゃない冷たい風が来た。


 黒い通路の下、火花のさらに向こうから、はっきり冷気が上がってきていた。熱と雷の層の奥に、真逆の空気が口を開けている。


 熱は取った。雷も取った。次は、あっちだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ