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最弱ステータスでヘビに転生した俺は、スキル補食と進化をしながら迷宮を攻略する  作者: 迫力くん


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第074話「帯雷鉱脈」

 熱じゃない。


 昨日までなら、そう言われても半分しか分からなかったと思う。だが今は違う。黒玻璃の回廊で死ぬかどうかを決めるのは、熱量そのものじゃない。踏み込む順番で、先に触れた方が勝つ。


   ◇ ◇ ◇


 それを、体で覚える羽目になった。


 ハイフレイムサーペントが、帯雷鉱脈の縁を走った。


 今なら取れると思った。


 壁走り。熱体。短接触。73話でまとめた型を、そのまま前へ出す。踏み込みの角度も悪くない。距離も足りている。


 ———その瞬間、壁が鳴った。


 青白い線が足元を走る。


 まずい。


 痺れが腹の鱗に突き刺さった。壁走りで使っていた引っかかりが一気に薄れる。滑って体が半回転した。


 落ちる。


 尾を壁の出っ張りへ巻きつけた。止まった。だが遅い。ハイフレイムサーペントはもう俺の横を抜けていた。熱だけが残る。


 首の下を何かが掠めた。浅い。だが冷や汗が出るには十分だった。


 もう一度同じことをやったら危ない。


 速さで勝ちに行ったら、地形に負けた。


 最悪だ。


   ◇ ◇ ◇


 いったん高い棚まで引いた。


 黒い棚の高い位置、白く曇った足場に腹を乗せる。そこは火花が走らない。熱感知も、さっきまでいた壁際より落ち着いていた。


 安全地形がある。あるなら見る。再挑戦はそのあとだ。


   ◇ ◇ ◇


 しばらく見て、ようやく分かった。


 火花には周期がある。細い発火が何度か続き、そのあとに太い放電が来る。さっき俺を滑らせたのは、その太い方だ。


 フレイムサーペントは、その切り替わりを読んで動いていた。細い発火の直後に踏み込み、太い放電の前には安全な棚へ逃げる。


 しかも足場にも当たり外れがある。黒く艶の強い面と青白い筋の近くはよく走る。逆に、白く曇った棚や割れ目から少し離れた段差は発火しにくい。


 全部同じ黒い床じゃない。静かな場所がある。だからあいつらは速い。速いんじゃない。速くなれる場所だけを踏んでいる。


   ◇ ◇ ◇


 もう一つあった。


 痺れは体の中だけじゃない。腹の鱗、壁走りで引っかける縁、牙の根元。接触しているところから先に来て、内側へ抜けるのはそのあとだ。


 なら、逆もできるかもしれない。


 魔力操作を使う。


 今までは反響撃か外殻粉砕に通していた。今回は違う。頭の奥から流した魔力を、腹の鱗へ薄く広げる。


 最初は散った。2回目も途中で切れた。3回目でようやく、鱗の表面に薄い膜みたいな感覚が残った。


 そこで青白い筋へ腹を寄せた。


 ぴり、と来る。


 だが浅い。完全には防げない。けど抜けるのが早い。さっきみたいに壁走りが丸ごと崩れない。


 これだ。


 体内を回すだけじゃ足りなかった。鱗の表面へ流す。


 さらに牙へも寄せてみた。根元から先へ、薄く。噛みつく瞬間、先端の感触が少しだけ鋭くなる。


 通知が来た。


『魔力操作 Lv1 → Lv2』


 うお、来た。


 ナイスタイミング。


 上がった。


 これなら行ける。鱗の表面に魔力を回せるみたいだ。牙の先にも少し寄せられる。痺れの抜けも、さっきより早い気がする。


 十分使える。


   ◇ ◇ ◇


 次は急がなかった。


 帯雷鉱脈の正面ではなく、少し外れた枝棚へ移る。太い放電が通らない位置だ。そこから火花の流れと、フレイムサーペントの踏み切りを同時に見る。


 ハイフレイムサーペントは、まだ鉱脈の中央を回っている。距離もある。今ここで正面からやる相手じゃない。


 先に、外縁を走る通常個体で試す。


 下の段差を1体が走った。ハイフレイムサーペントではない。昨日見たのと同じ、通常のフレイムサーペントだ。


 ちょうどいい。


 太い放電が走る。待つ。


 細い発火に切り替わった。


 そこで先回りした。腹の鱗へ魔力を薄く流す。火花の余熱が触れたが、滑らない。


 フレイムサーペントが踏み切る。


 その横へずれて入る。


 熱体。牙の先へ魔力を寄せる。噛む。


 今度は深く入った。頸の横へ毒牙が滑り込み、外殻粉砕もきれいに通る。すぐ離れる。


 フレイムサーペントが反転した。


 だが遅い。さっきまでみたいな加速がない。発火の筋を外している。


 そこへ反響撃を近距離で一発。


 黒玻璃が鳴る。体勢が崩れる。毒が回る。


 落ちた。


 よし、読めた。


   ◇ ◇ ◇


 食った。


 ぴり、とした後味がまだ舌に残る。


 進化率を確認した。


 96%。十分だ。次で届く。


 まだ進化条件までは届いていない。だがもう遠くない。


 熱体、壁走り、魔力操作。別々だった手札が、ようやく1つの型になってきた。


   ◇ ◇ ◇


 視線を上げた。


 ハイフレイムサーペントは、まだ帯雷鉱脈の中央にいた。


 白青い筋が走るたび、黒い鱗の隙間が淡く光る。さっきの個体より長い。細いのに圧がある。速さだけで押してくる相手じゃない。ここそのものを使ってくる相手だ。


 だがもう、何も分からない相手じゃない。


 太い放電の切り替わりを外し、細い発火の直後に踏み切る。静かな足場を挟んで、鱗へ流した魔力を牙へ寄せる。


 次は届く。この層の答えは、熱じゃない。一瞬先に触れた方が勝つ。


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