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最弱ステータスでヘビに転生した俺は、スキル補食と進化をしながら迷宮を攻略する  作者: 迫力くん


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第051話「岩窟」

 2日間、主の巡回を観察した。


 パターンは変わっていた。以前は3回だった巡回が4回に増え、間隔が短くなっている。だが規則性は戻っていた。冒険者を追い払った直後の不安定さは消え、新しいリズムで回っている。


 4回目の通過から1回目の通過までの空白が最も長い。そこが今の安全時間だ。以前より短いが、南東端まで往復する余裕はある。


 4回目の通過を確認した。振動が遠ざかる。


 拠点を出た。


   ◇ ◇ ◇


 泥底を全速で南東に這った。壁走りに切り替え、棚を駆け上がり、崩れた区間を越え、巡回路を横切った。蟲がいない空白地帯を通過し、通路の入口が見えた。


 泥底が消える境界を越えた。鱗の下から泥の感触が消え、乾いた石の硬い面に変わった。壁走りの吸着は問題ない。だが接地面を使った泥底移動はもうできない。


 下り坂。石の通路を降りていく。壁面の結晶が淡い光を放っている。明るくはないが、暗闇ではない。結晶の光で輪郭が見える。


 空気が乾いている。鱗の表面から水分が抜けていくのが分かる。泥底にいた時は気にならなかったが、この環境では鱗の保湿が課題になる。


 通路が広がった。天井が高い。壁面に結晶が密に並び、光量が増えた。石の床は平坦で、足場は安定している。


 反響定位を使った。音が跳ね返ってくる。石の壁は泥壁と違って音を吸わない。反射が鋭く、精度が高い。この層では反響定位が主力の感覚になる。


 振動感知は効きにくい。石の床は泥底より硬く、振動の伝わり方が異なる。近距離なら拾えるが、遠距離の精度は落ちる。


 熱感知は変わらない。だが周囲の温度が均一で低い。泥底より冷たい。体温を持つものがいれば、浮き上がって見えるだろう。


 岩窟を進んだ。


   ◇ ◇ ◇


 20分ほど進んだところで、反響定位に硬い反応が返ってきた。壁面ではない。通路の真ん中に何かがいる。


 近づいた。結晶の光に照らされて、灰色の塊が見えた。岩のように見えるが、脚がある。6本。体表が石と同じ色で、動かなければ岩と区別がつかない。


 鑑定が起動した。


――――――――――――――――――――

種族:ロッククローラー

Lv:7

【スキル】

 石殻 Lv3 / 反響撃 Lv1 / 岩砕き Lv2

――――――――――――――――――――


 石殻Lv3。殻系スキルの中でも聞いたことがない名前だ。鱗硬化の殻版か、それとも別の能力か。反響撃——音を使う攻撃。岩砕きは物理破壊。


 近づいた。ロッククローラーが動いた。岩だと思っていた塊が、6本の脚で体を持ち上げた。体幅は俺の頭部の4倍。甲殻の表面がざらざらとした石の質感を持っている。


 仕掛けた。頭部に回り込み、毒牙で噛みつこうとした。


 ———通らない。


 牙の先端が甲殻の表面を滑った。石殻Lv3。蟲の殻とは硬さの次元が違う。外殻粉砕を乗せても、牙が食い込まない。砕くどころか、ひびすら入らない。


 距離を取った。ロッククローラーがこちらを向いた。6本の脚が床を掴み、体勢が変わった。


 口部が開いた。何も吐き出さない。代わりに、空気が震えた。


 反響撃。


 音が来た。石の壁に反射し、増幅され、四方から叩きつけてくる。振動感知が暴走した。全方向から振動が殺到し、方向感覚が潰れた。頭の中が揺れている。


 壁走りで壁面に逃げた。音が追ってくる。石の壁が音を跳ね返すたびに、衝撃波が重なって強くなる。泥壁なら吸収されたはずの音が、この層では凶器になる。


 2度目の反響撃が来た。壁面に張りついたまま耐えた。鱗硬化では防げない。音は鱗を通過して、内側を直接揺らす。HPが削れた。わずかだが、確実に。


 離れた。通路の奥へ壁走りで全速退避した。反響撃の範囲から出ると、振動感知が落ち着いた。


 ……噛めない。砕けない。音で削られる。


 通路の壁面に張りついたまま、息を整えた。


 毒牙が通らない。外殻粉砕が効かない。第2層の蟲は殻が硬くても、関節の隙間や腹に回ればどうにかなった。こいつは全面が石殻だ。隙間が見えない。


 締め付けはどうか。石殻の上から絞めても、俺の締め付けLv2で石を潰せるとは思えない。毒霧も、殻の上から染み込む構造ではない。


 第2層で通用していた手札が、まとめて封じられた。


 引き返すか。


 体を反転させかけて、止まった。反響定位に、通路の奥から別の反応が返ってきた。さっきのロッククローラーとは違う。もっと小さい。動きが速い。


 結晶の光の中に、別の影が見えた。小さな甲殻。体長は俺の頭部ほど。壁面を走っている。


 鑑定。


――――――――――――――――――――

種族:シャードビートル

Lv:4

【スキル】

 結晶甲 Lv1 / 突撃 Lv2

――――――――――――――――――――


 結晶甲Lv1。石殻ではなく結晶。スキルレベルが低い。


 シャードビートルが壁面から飛び降り、こちらに突撃してきた。小さいが速い。


 鱗硬化で受けた。衝撃は軽い。防御64に対して、この体当たりは脅威ではない。結晶甲の表面がぶつかった衝撃で小さくひび割れた。石殻Lv3とは違う。結晶甲Lv1なら、外殻粉砕で割れる可能性がある。


 2度目の突撃を待った。シャードビートルが旋回し、再び突進してくる。タイミングを合わせて頭部を叩きつけた。外殻粉砕を乗せる。


 結晶甲が砕けた。甲殻の破片が飛び散り、中身が露出した。露出した柔らかい部分に毒牙を突き込んだ。小さな体にはすぐに毒が回り、3秒で止まった。


 食った。


 通知は来ない。レベルアップも、スキル習得もなし。


 壁面に張りついたまま、二種類の敵を比較した。ロッククローラーLv7は石殻Lv3で完全に防御されている。シャードビートルLv4は結晶甲Lv1で、外殻粉砕で割れた。


 この層の敵は殻が硬い。だがレベルとスキルレベルによって硬さに差がある。低い個体を狩りながら、攻撃手段を磨いていくしかない。


 ロッククローラーの石殻Lv3を砕けるようになるまでに、外殻粉砕を何段階上げる必要があるのか。あるいは、別の攻略法があるのか。


 奥へは進まなかった。今日はここまでで十分だ。第3層の空気と敵と、自分の手札の不足を確認した。


 引き返して、第2層の下り通路を登った。主の巡回路を横切り、拠点に戻った。


 体を丸めて、石殻のことを考えた。この体のスキルの中に、石を砕ける手段がどこかにあるはずだ。


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