第047話「狩人たち」
人間のキャンプがある棚を避け、南の泥底を這った。昨日とは別の方角だ。できるだけ行動範囲を重ねない。
泥底をしばらく進んだところで、熱感知に見慣れない反応があった。泥の中を移動している。蟹や百足の這い方ではなく、泥の中を泳ぐように動いていた。
泥底から体が飛び出した。
平たい頭。胴の両側に短い鰭。目は退化して小さく、代わりに頭部の側線が発達している。
泥底に適応した魚だ。
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種族:ボグフィッシュ
レベル:5
【スキル】
泥泳ぎ Lv3 / 突進 Lv2 / 粘液放射 Lv1
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泥泳ぎLv3。泥の中を水のように泳げるスキルだろう。この泥底が、こいつにとっては海だ。
ボグフィッシュが泥に潜った。熱感知で追う。泥の中を旋回し、こちらに向かってくる。
――突進だ。
ボグフィッシュが泥を割って飛び出し、俺の胴体へ体当たりしてきた。
俺は鱗硬化で受けた。ボグフィッシュの体当たりは、俺の防御力61を抜けない。ただ、着地の反動で泥が跳ね、一瞬だけ熱感知にノイズが乗った。
ボグフィッシュは着地と同時に泥へ消えた。もう熱感知から消えている。泥泳ぎLv3の速度が、熱感知Lv2の追跡を振り切っている。
振動感知を併用した。泥の中の物体の振動は拾えるが、精度が低い。方向は分かるが距離感が曖昧だ。
2度目の突進は真下から来た。泥底が盛り上がり、ボグフィッシュの頭が俺の腹を突き上げてくる。
俺は急旋回で半身をずらした。粘液が鱗に飛んだが、粘着無効で滑り落ちる。
こいつは泥の中にいる限り有利で、俺は空中に飛び出した瞬間しか仕留められない。向こうは何度でも潜れる。こちらは一度で決めるしかない。
体を泥底に低く伏せた。熱感知と振動感知を両方開放し、泥の中の動きを待つ。
右斜め前の泥面が膨らんだ。ボグフィッシュが飛び出す直前の動きだ。
泥が割れた瞬間、噛みにはいかなかった。体を横に振った。胴体の側面で、飛び出したボグフィッシュを泥面に叩き落とした。
鱗弾きが反応した。鱗の表面が魚の体を弾き、泥面に叩きつける。粘液放射が噴き出したが、粘液は鱗に張りつかずに滑り落ちた。
ボグフィッシュが泥面で跳ねた。もう一度泥に潜ろうとしている。
潜られる前に、俺は頭部を押さえた。頭蓋へ外殻粉砕を乗せる。
――魚の鱗は蟲の殻より薄い。
一撃で頭蓋が砕けた。尾鰭が痙攣して、ボグフィッシュは動かなくなった。
俺はボグフィッシュを食った。
◇ ◇ ◇
食い終わった直後、棚の上から音が聞こえた。
金属がぶつかる音。何かが壁面を叩く音。そして、甲高い鳴き声。蟲の悲鳴だ。
人間が狩りをしている。
棚の裏側に回り込み、泥底から見上げた。熱感知に3つの熱源が映っている。3人とも速く動いていた。
1人が棚の端に立った。細長い棒のようなものを構えている。弓だ。
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種族:エルフ
レベル:11
【スキル】
弓撃 Lv3 / 風矢 Lv1 / 探知 Lv2
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――エルフ。
前世のゲームで何度も見た種族名が、鑑定の枠に浮いている。人間だけではない。この世界には別の種族もいる。
弓撃Lv3。探知Lv2。遠距離から撃ち、索敵もできる。昨日の剣士が前衛で、こいつが後衛。
弓が鳴った。棚の奥で、蟲らしき熱源が倒れる。仕留めたらしい。
もう1人が棚の奥から端に寄ってきた。手を前にかざしている。淡い光が手元から漏れている。
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種族:ヒューマン
レベル:10
【スキル】
回復術 Lv3 / 結界 Lv1 / 光球 Lv1
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回復術Lv3。傷を治せる。結界と光球は補助スキル。
3人の構成が揃った。
前衛の剣士がレベル12。後衛の弓手がレベル11。回復役がレベル10。役割を分けて、連携で狩っている。1人でやるしかない俺とは根本が違う。
しばらく見ていると、蟲が追い込まれ、弓で射抜かれ、剣で止めを刺された。手際がいい。3体の蟲が、あっという間に仕留められていく。
……あいつらも、この層で狩りをしている。
同じ獲物を、同じ場所で、別の高さから狙っている。人間たちが棚の上にいて、俺が泥底で狩っている間はまだ衝突しない。
だが人間たちが泥底に降りてきたら、ぶつかる。エルフの探知Lv2が泥底の俺まで拾うのかも分からない。
拠点方向へ戻った。棚の上から見えない経路を選んで。
途中、振動感知に棚の上の足音が伝わってきた。3つの足音が、南東へ向かっている。
南東。俺がスワンプロードの巡回路を見つけた方角だ。




