表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱ステータスでヘビに転生した俺は、スキル補食と進化をしながら迷宮を攻略する  作者: 迫力くん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

120/124

第120話「入口防衛」

 入口の外で、タスクボアがまた牙を擦った。


 黒玻璃は削れていない。だが、音が広間へ響くたびに避難民の肩が揺れる。


 もう放っておけない。


 入口前の牙獣をまとめて相手にする必要はない。最初に狙うのは、入口正面で体当たりを繰り返しているタスクボアだ。


 猪型の牙獣を潰せば、入口へぶつかる音も減る。肉も多い。経験値も入る。


 敵で、騒音源で、食料。


 一匹三役だ。できれば履歴書に書いてほしくない有能さだが、今夜の俺にはかなりありがたい。


   ◇ ◇ ◇


 俺はカイルに念話を送る。


 『入口の正面から人を下げろ。俺がタスクボアを止める。誰も入口へ近づくな』


 「分かった。入口の正面を空ける。全員、右壁と左壁へ寄れ」


 カイルの声で、人が動いた。


 怪我人と子供は右壁の奥へ寄る。荷物の前にいた若い男たちも、入口の正面から離れた。リーナは火の届かない位置で外の音を聞き、マルトは怪我人の横へ膝をつく。


 ミラが子供の前へ出た。


 「入口を見ないで。こっちを見ていて」


 ミラのおかげで、子供の視線が入口から外れた。


 これから俺は魔物らしく食う。子供の情操教育にはたぶん向いていない。


 俺は入口の縁へ前脚を置き、コアへ意識を向けた。


 入口を少しだけ広げる。


 タスクボアの鼻先と牙だけが入る幅だ。胴体は入らない。肩も引っかかる。


 外のタスクボアが鼻息を荒くした。


 猪型の牙獣は、隙間を見てすぐ突っ込んできた。


   ◇ ◇ ◇


 牙が入口へ入る。


 次にタスクボアの鼻先が入る。


 タスクボアの肩から後ろは入口へ入らない。


 タスクボアの肩が黒玻璃の縁にぶつかり、突進の力が入口の縁で止まった。広い場所で走れば危ない突進も、入口の幅を絞ればただの押し込みになる。


 俺は横へ避けない。


 竜鱗装甲を前脚へ寄せ、タスクボアの牙の根元を上から押さえた。


 タスクボアが首を振る。


 牙が入口の横を払ったが、見張りは3メートル下がっている。誰にも当たらない。


 読めていた動きだ。


 俺は雷纏を前脚へ流し、タスクボアの鼻面を黒玻璃の縁へ叩きつけた。


 電気が鼻先から首へ走る。


 タスクボアの前脚が外の地面を掻いた。だが、胴体が入口へ入らないせいで踏ん張りが効かない。


 タスクボアの喉へ頭を寄せる。


 牙を首の下へ入れる。


 硬皮が邪魔だ。だが、喉の下は肩より薄い。


 毒牙を深く噛ませ、魔力を牙の接触面へ寄せる。


 毒牙が喉の薄い部分へ通った。


 タスクボアが暴れた。


 鼻息が熱い。牙が黒玻璃を叩く。外のファングウルフが一斉に吠える。


 だが、タスクボアの胴体は入口の外に残ったままだ。首を大きく振れない。こちらへ踏み込めない。


 俺は噛みついたまま、雷纏をもう一度流した。


 傷の中で電気が跳ねる。


 タスクボアの脚が崩れた。


 よし。


 入口の幅で、突進を殺せた。


   ◇ ◇ ◇


 タスクボアが倒れると、外のファングウルフが入口へ飛びついた。


 俺は入口を一度狭める。


 ファングウルフの頭は入らない。爪だけが黒玻璃を引っかき、火花みたいな音を立てた。


 次に、入口をファングウルフの頭一つ分だけ開ける。


 先に来たファングウルフが、反射で頭を突っ込んだ。


 こういう時、群れで動く魔物は先頭が急ぎすぎる。後ろのファングウルフに押されて、前の一体だけが入口の縁へ首を乗せた。


 俺は前脚を振り下ろす。


 雷纏を乗せた爪が、ファングウルフの鼻面を打った。


 ファングウルフの頭が下がる。


 そのまま喉へ噛みつき、外へ引かれる前に入口の内側へ引き倒した。


 二体目は、少し慎重だった。


 だから、入口の幅をもう少しだけ広げる。ファングウルフが前脚を入れた瞬間、俺は横から首へ爪を入れた。


 ファングウルフの前脚の爪を、竜鱗装甲を寄せた左肩で受ける。そのまま左肩から雷纏を流し、ファングウルフの前脚を痺れさせた。


 ファングウルフの足がもつれたところで、喉へ毒牙を入れる。


 入口の縁で、ファングウルフを二体仕留めた。


 入口の外にいる牙獣はまだ残っている。だが、入口の前へすぐ飛び込む勢いは消えた。


 左右の岩場でファングウルフが唸る。


 入口正面に倒れたタスクボアの死骸が邪魔になり、外の牙獣はまっすぐ入口へ詰められない。


 入口の幅を使う防衛は機能している。


 入口を全開にしない。相手を一体ずつ入口の縁で止める。タスクボアのような突進役を先に潰せば、避難民まで爪は届かない。


 防衛線としてはかなり使える。


   ◇ ◇ ◇


 俺は入口を牙獣の頭が入らない幅まで狭めた。


 外の牙獣はまだ吠えているが、すぐには入ってこない。


 今のうちに食う。


 タスクボアの首へ牙を入れ、肉を引き裂いた。


 脂が濃い。


 猪肉、普通にうまい。火を通せばもっと人間向けなのかもしれないが、今の俺は生肉でも問題ない。


 肉が腹へどんどん入る。


 腹の中へ熱が広がり、続けてファングウルフの肉も飲み込む。里の人たちが少し引いた気配はあるが、ここは許してほしい。


 俺が食わないと、次にレオガルドが来た時に全員まとめて食われる側になる。


 全員が食われる展開は嫌だ。


 食う側でいたい。できれば、守る側にもいたい。


 通知が来た。


『経験値を獲得しました』


『Lvが上がりました』


 レベルが上がった。表示を見れば、Lv3まで届いているはずだ。


 幼竜の1レベルは、相変わらず伸びが大きい。蛇だった頃なら、進化を一つ挟んだくらい数字が動く。


 さらに通知が続いた。


『竜鱗装甲が硬皮を捕食しました』


『竜鱗装甲がLv2に上昇しました』


 硬皮、ここで入るのか。


 あの猪を先に食った判断は当たりだ。レオガルド相手に必要なのは、正面から殴り合う勇気じゃない。爪と牙を一発でも多く耐える装甲だ。


 確認する。


————————————————————

【ステータス】


個体名:アステル


種族:幼竜


Lv:3


HP:372 / MP:232


攻撃力:172 / 防御力:162


素早さ:160 / 知力:148


【スキル】


 捕食継承 Lv2 / 毒牙 Lv3 / 締め付け Lv2


 竜鱗装甲 Lv2 / 壁走り Lv3 / 振動感知 Lv3


 熱感知 Lv2 / 外殻粉砕 Lv2 / 毒液圧縮 Lv1


 酸耐性 Lv1 / 粘着無効 Lv1 / 毒霧 Lv1


 急旋回 Lv1 / 嗅覚強化 Lv1 / 反響定位 Lv2


 念話 Lv1


 鑑定 Lv3 / 反響撃 Lv1 / 魔力操作 Lv2


 竜威 Lv1 / 竜息 Lv1 / 熱体 Lv1


 雷纏 Lv1 / 冷気耐性 Lv2 / 冬眠 Lv1


 竜因子 / 蛇王因子


次の進化まで:13%

————————————————————


 Lv3。


 HPも防御力も、しっかり跳ねた。竜鱗装甲もLv2になった。今夜の入口防衛だけなら、かなり余裕が増えた。


 進化率は4%から13%。


 タスクボアとファングウルフ二体で9%伸びた。入口前の群れは危険だが、同時に成長用の餌場でもある。


 ただ、レオガルドにはまだ届かない。


 今の伸びで分かる。入口前の牙獣を食えば強くなれる。だが、王を倒すには、ただ雑魚を数体食うだけでは足りない。


 もっと質の高い獲物がいる。


 群れを押すやつ。突進役より硬いやつ。レオガルドの近くにいる、もっと強い個体。


 そいつらを食う。


   ◇ ◇ ◇


 入口の外で、ファングウルフの唸り声が遠ざかった。


 完全に逃げたわけではない。左右の岩場と低い斜面には、まだ足音が残っている。


 だが、入口へすぐ飛び込む勢いはなくなった。


 広間の奥で、子供の泣き声が少しずつ細くなる。ミラが小声でなだめ、エドルが祭壇の石片の前で祈りを続けている。


 カイルが入口の死骸を見て、短く息を吐いた。


 「入口で止められるなら、今夜はもつな」


 『もたせる。外の牙獣は、俺が食える形で減らす』


 「今のお前、守り神というより罠そのものだな」


 『罠で合ってる。今夜は入口に近づいた牙獣から食う』


 カイルは少しだけ笑った。


 入口の外で、またファングウルフが吠える。


 今度は、すぐに突っ込んでこない。


 牙獣たちも分かったらしい。


 この入口は、ただの隙間じゃない。


 俺の牙が届く場所だ。


 避難民を休ませる時間は作れた。


 次は、朝までこの入口を餌場にする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ