第114話「龍宮へ来い」
レオガルドが身を沈めた。
次の踏み込みで来る。
そう分かった時には、もう遅い。
前脚と牙がまとめて来た。
胸と肩へ竜鱗装甲を寄せる。前脚も合わせた。右の前脚は受けた。だが、避けきれなかった牙が左肩の付け根へ入る。
衝撃が胸から首へ抜ける。
体が浮いた。
西の道の土を削りながら後ろへ飛ばされ、そのまま西門の前で転がる。
口の中に土と血が入る。
左前脚に力が入らない。
まずい。
次をもらったら終わる。
顔を上げた時には、レオガルドがもう門の前まで来ていた。
西門の柱へ前脚が入る。
太い木が折れた。
門が内側へ倒れる。
そのままレオガルドが肩をぶつけると、門のすぐ脇の家の壁が割れ、屋根板が何枚も飛んだ。
横の食糧小屋にも牙が入る。
干した肉と袋が裂けて、中身が土へ散った。
まずい。
この一回でこれだ。
次を里の中で受けたら、門だけじゃ済まない。
立つ。
足がふらつく。
それでも前へ出たが、レオガルドはもう俺だけを見ていなかった。里の奥も見ている。
◇ ◇ ◇
ミラがエドルの前へ出かける。
カイルが慌てて腕を引いた。
その動きに合わせて、レオガルドの鼻先がそっちを向く。
こいつ、ただ暴れに来たんじゃない。
俺とミラの位置を見に来てる。
レオガルドが一歩出る。
その一歩だけで、喉まで冷えた。
ここからもう一度踏み込まれたら、止められない。
その時だった。
里の背中側にある黒い岩肌で、青白い筋が一度だけ走る。
星骸の龍宮の外縁だ。
同時に、カイルが空へ矢を打ち上げた。火の粉を引く矢が高く上がる。
少し遅れて、森の外から角笛が返った。
角笛だけじゃない。鎧が触れる音も混じる。
人間側も本当に来る。
レオガルドは門の残骸を踏んだまま、俺とミラを見比べた。
「次は里ごと裂く」
その一言を残して、レオガルドは身を返す。
狼も猪も、それに続いて西の森へ引いた。
◇ ◇ ◇
西門は潰れた。
家の壁は割れた。
食糧小屋も破れてる。
俺は負けた。
傷は入れた。
けど、それだけだ。
あと一撃で喉を裂かれるところまで行った。
次にまたここで受けたら、里ごと持っていかれる。
もう外で粘るだけじゃ足りない。
その時、足元に転がっていた狼型の牙獣の匂いが鼻へ入る。
さっき倒した分が、まだそこにある。
次が来る前に、少しでもレベルを上げる。
牙獣の首へ噛みつく。血と肉をまとめて飲み込んだあと、横に転がっていた猪の肉も削って流し込む。
『Lvが上がりました』
よし。
上がったのは1レベルだけだ。けど、食った分はちゃんと入った。
食った分がどこまで入ったか確かめるために、改めて自分の状態を開く。
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個体名:アステル
種族:幼竜
Lv:2
HP:308 / MP:196
攻撃力:146 / 防御力:136
素早さ:138 / 知力:130
【スキル】
捕食継承 Lv2 / 毒牙 Lv3 / 締め付け Lv2
竜鱗装甲 Lv1 / 壁走り Lv3 / 振動感知 Lv3
熱感知 Lv2 / 外殻粉砕 Lv2 / 毒液圧縮 Lv1
酸耐性 Lv1 / 粘着無効 Lv1 / 毒霧 Lv1
急旋回 Lv1 / 嗅覚強化 Lv1 / 反響定位 Lv2
念話 Lv1
鑑定 Lv3 / 反響撃 Lv1 / 魔力操作 Lv2
竜威 Lv1 / 竜息 Lv1 / 熱体 Lv1
雷纏 Lv1 / 冷気耐性 Lv2 / 冬眠 Lv1
竜因子 / 蛇王因子
次の進化まで:4%
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うお、伸び方でかい。
1レベル上がっただけなのに、前の延長みたいな増え方じゃない。
けど、レオガルドを正面から止めるにはまだ全然足りない。
守るなら、場所ごと替えるしかない。
俺はミラへ念話を送った。
『ミラ。エドルにも伝えろ。龍宮へ来い。ここにいたら、次で潰れる。』




