表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱ステータスでヘビに転生した俺は、スキル補食と進化をしながら迷宮を攻略する  作者: 迫力くん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

111/136

第111話「王の声」

 西の森の奥で、腹に響く吠え声が上がった。


 吠え声は長くはない。


 だが、それだけで次が来ると分かった。


 里の空気が止まる。


 槍を持っていた連中が一斉に西を見る。ミラも肩を揺らして、祭壇の前で息を止めた。カイルは剣の柄を握り直し、リーナはもう森へ目を向けている。


 次の瞬間、森のあちこちから遠吠えが返った。


 返ってきた遠吠えは一つじゃない。


 西だけでも三つ、四つ。少し遅れて、もっと奥からも返る。


 さっきみたいに腹を空かせた群れがばらばらに寄ってきた音じゃない。あの声を合図にして、まとめて動き出した音だった。


   ◇ ◇ ◇


 土の震えも変わっていた。


 揺れはまだ遠い。だが数は多い。


 四つ脚がまとめて向きを変え、同じ方角へ揃ってくる時の揺れだ。


 匂いも増えていた。狼、猪、その奥に混じるもっと濃い獣臭が、西の風に押されてこっちへ流れてくる。


 群れが来る。


 しかも、さっきより多い。


 「今の、獣牙のやつか」


 カイルの声は低かった。


 「たぶんな」


 俺が返すと、ミラがすぐこっちを見た。


 「また来るの?」


 「来る。さっきの残りじゃない。まとめて動き出した」


 ミラの顔が強張る。だが逃げはしない。エドルも祭壇の前で目を細めたまま、西の森を見ていた。


   ◇ ◇ ◇


 問題は、どこで受けるかだ。


 柵の前で待つのはまずい。


 さっきは猪が一体だったから止めきれた。だが、数を増やしてもう一度正面から入られたら、今度は柵だけじゃ済まない。家まで巻き込む。


 「カイル」


 「はい」


 返事が速い。


 もう、俺の声を聞いて構える段階は越えたらしい。


 「怪我したやつと子供を奥へ下げろ。西の柵の前に人を固めるな」


 「中で受けないのか」


 「中で受けたら家が潰れる。俺は外に出る」


 カイルは一瞬だけ迷ったが、すぐ頷いた。


 「リーナ、森際の見張り。マルト、怪我人を先に下げる。俺は西の柵の前から人を引かせる」


 言われる前から、リーナはもう西の木々の隙間を見ていた。マルトは顔を青くしながらも、倒れていた男の肩を抱えて奥へ下げ始める。


   ◇ ◇ ◇


 ミラが俺のそばへ来た。


 「アステル」


 「なんだ」


 「無茶しないで、は無理だよね」


 それはそうだ。


 ここで外へ出ない方が無茶だ。


 「止める。森の手前で」


 それだけ返すと、ミラは少しだけ口を結んだあと、小さく頷いた。


 肩はまだ少し強張っている。


 だが、もう目を逸らしてはいない。


   ◇ ◇ ◇


 柵の外へ腹を出す。


 西の森から流れてくる匂いは、さっきよりずっと濃い。振動も途切れない。もう集まり始めている。


 柵の中で待つのはやめる。


 次は森の手前で止める。


 そう決めて、俺は西の道へ体を向けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ