第97話 引き継がれるもの
中央危機統括局・会議室。
朝の会議が、いつもより静かに始まった。
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セルディオが席に着く。
その隣にカルド。
そして若い職員たち。
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「今日で最後だ」
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セルディオの言葉。
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室内が、わずかに緊張する。
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「正式に退任する」
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短い宣言。
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誰も驚かない。
だが、軽くもない。
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カルドが静かに頷く。
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「長い間、お疲れ様でした」
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形式的な言葉。
だが、そこには確かな重みがある。
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セルディオは、軽く手を振る。
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「制度は完成していない」
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最初の言葉。
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「だが、動いている」
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視線を一人一人に向ける。
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「それで十分だ」
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誰も口を挟まない。
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「完璧を求めるな」
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「止まらないことを優先しろ」
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それは、この制度の核心だった。
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セルディオは立ち上がる。
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「判断は続く」
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「迷いも続く」
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「だから残る」
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少しだけ笑う。
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「それでいい」
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会議室に、静かな空気が広がる。
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セルディオは、最後にカルドを見る。
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「後は任せる」
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カルドは短く答える。
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「引き継ぎます」
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それ以上の言葉はない。
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会議は終わる。
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人々がゆっくりと席を立つ。
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セルディオは、最後に部屋を出る。
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廊下。
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足音が静かに響く。
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ここを何度も歩いた。
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制度が未完成だった頃。
混乱していた頃。
決断が必要だった頃。
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すべて、過去になる。
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窓の外を見る。
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都市は安定している。
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危機はある。
だが、回っている。
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「……十分だ」
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小さく呟く。
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そのまま歩き出す。
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振り返らない。
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役目は終わった。
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だが、制度は続く。
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思想も続く。
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それは、誰か一人のものではない。
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引き継がれたものは、
形を変えて残り続ける。
ここまでご覧いただきありがとうございます。
あと数話で完結となります。
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