第94話 積み重ねの結果
夜は更けていた。
観測室の灯りだけが、静かに点いている。
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三地域同時。
二地域同時。
単独の揺れ。
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そのすべてが、記録されている。
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リュカは、今日のログを見返していた。
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南方の判断。
北方の優先。
西部の見送り。
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どれも、小さな選択。
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だが、その積み重ねで、
今日も被害は出ていない。
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「……すごいな」
小さく呟く。
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エマが隣に来る。
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「何が?」
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「全部、小さい判断なのに」
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「全部合わせると、何も起きてない」
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エマは少しだけ笑う。
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「それが目的だから」
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リュカは画面を見る。
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何も起きていない。
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だが、それは偶然ではない。
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「全部、誰かが選んでる」
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エマは頷く。
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「そう」
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「誰かが迷って、選んでる」
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少しの沈黙。
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リュカは言う。
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「でも、目立たないですね」
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「何も起きてないから」
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エマは静かに答える。
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「それでいい」
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観測画面に、小さな揺れが一つ。
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リュカは自然に動く。
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「再評価開始」
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迷いはある。
だが、止まらない。
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数値を見る。
波形を見る。
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「見送り」
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短い判断。
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波形はそのまま収束する。
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エマが言う。
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「慣れてきたね」
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リュカは少しだけ笑う。
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「少しだけ」
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だが、すぐに表情を戻す。
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「まだ怖いです」
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エマは頷く。
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「それでいい」
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その怖さが、判断を支える。
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観測室の外。
都市は静かだ。
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人々は、何も知らない。
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危機があったことも、
誰かが選んだことも。
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だが、それでいい。
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リュカは画面を見つめる。
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小さな光点。
小さな判断。
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それが積み重なって、
世界は続いている。
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派手な勝利はない。
だが、確かな結果がある。
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それが、この制度の形だった。
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