第93話 監査の確認
観測室の記録は、すぐに監査室へ送られる。
判断は終わっても、評価は終わらない。
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ミラは端末に向かっていた。
リュカの判断ログを再生する。
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> 北方、限定介入
> 理由:直近損壊あり、拡大時影響大
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再生を止める。
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「……いい」
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隣の監査官が聞く。
「問題なしですか?」
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「なし」
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「理由がある」
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短い言葉。
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「数値だけじゃない」
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それが重要だった。
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ミラは立ち上がる。
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「現場確認」
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観測室へ向かう。
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扉が開く。
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「監査、入ります」
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エマが振り向く。
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「早いね」
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「判断が良かったので」
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ミラの視線が、リュカに向く。
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「さっきの判断、説明して」
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リュカは少しだけ息を吸う。
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「北方は直近で損壊あり」
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「同規模でも被害拡大のリスクが高い」
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「だから優先」
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言葉にする。
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ミラは頷く。
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「いい」
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「じゃあ質問」
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少し間。
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「それでも西部を選ぶ可能性はあった?」
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リュカは止まる。
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「……ありました」
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「どういう時?」
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「もし西部の余力が低かったら」
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「もしくは、連鎖の揺れ方が違えば」
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ミラは、少しだけ笑う。
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「ちゃんと分かってる」
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エマが横で言う。
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「正解を一つにしてない」
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ミラは頷く。
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「それが大事」
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監査は、正解を決めない。
可能性を確認する。
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リュカは、静かに画面を見る。
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同じ状況でも、選択は変わる。
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それを理解しているか。
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それが問われている。
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ミラは端末を閉じる。
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「問題なし」
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短い評価。
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だが、その重さは軽くない。
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新人たちが少しだけ安堵する。
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リュカは、息を吐く。
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終わった。
だが、終わっていない。
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判断は続く。
監査も続く。
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制度は、こうして維持される。
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外からの視線。
内側の判断。
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どちらも欠けてはいけない。
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ミラは、観測室を出る前に言う。
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「次も見る」
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リュカは頷く。
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見られている。
だから、考える。
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それが、この制度の強さだった。
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