第92話 選択の基準
観測室。
三地域同時の揺れが収束してから、数分。
まだ誰も席を離れない。
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リュカは、さっきの判断ログを見ていた。
> 南方:限定介入
> 北方:見送り
> 西部:見送り
結果は、全て収束。
被害ゼロ。
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「……良かった」
小さく呟く。
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ミラが横から言う。
「結果はね」
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リュカは振り向く。
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「判断はどうだった?」
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少し考える。
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「南方が一番不安定だったので」
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「うん」
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「だから優先しました」
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ミラは頷く。
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「それが基準?」
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「はい」
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短い答え。
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ミラは少しだけ視線を落とす。
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「じゃあ、もし全部同じだったら?」
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リュカは言葉に詰まる。
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「……」
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エマが静かに口を開く。
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「それが次」
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観測画面に、新しい揺れが表示される。
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今度は二つ。
北方と西部。
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数値。
ほぼ同じ。
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連鎖:二十五。
余力:中。
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完全に近い均衡。
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「やる?」
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エマの声。
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リュカは頷く。
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「再評価開始」
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データが流れる。
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差はない。
波形も似ている。
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時間が流れる。
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新人たちが静かに見守る。
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リュカは、画面を見つめる。
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どちらも危険。
どちらも大丈夫。
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その時。
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リュカは、少しだけ視線を動かす。
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北方のログ。
過去履歴。
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直近、軽微損壊あり。
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西部。
安定。
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リュカは、口を開く。
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「北方、限定介入」
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「西部、見送り」
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理由を続ける。
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「北方は直近で損壊あり」
「連鎖拡大時の影響が大きい」
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判断。
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数分後。
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北方、収束。
西部、自然収束。
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「被害ゼロ」
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静かな結果。
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ミラが言う。
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「今のは?」
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リュカは答える。
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「過去を見ました」
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「数値以外も?」
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「はい」
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ミラは小さく頷く。
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「それが基準になる」
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エマも続ける。
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「制度は全部を教えてくれない」
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「最後は自分で決める」
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リュカは、静かに画面を見る。
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同じ数値。
同じ危機。
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それでも、選ぶ。
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その理由は、
自分で作るしかない。
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観測室の光が、静かに揺れる。
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判断は続く。
基準も、少しずつ形になっていく。
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